3その2

フィールドエッジ
って何?・その2
世界にも認められた、AIへの取り組み

1 フィールドエッジの
可能性

フィールドエッジが救う「現場の手」

フィールドエッジの役割というのは、私たちの人命や生活を水害から守ることにありますが、さらには河川の管理に携わる「現場の手」も助けてもいます。

たとえば台風による河川の氾濫時に、監視事務所の職員が暴風雨の中を川べりまで出かけて状況を目視するというのは非常に危険ですよね。フィールドエッジがあれば、データや画像は監視センターなどの室内から確認できますので、その必要はなくなります。

三菱電機エンジニアリング株式会社 小林基彦

また、今後はAIの成長に伴って「量水板(大きな定規のようなもの)」を川の中に挿しておくことも必要なくなると思います。量水板の工事は水の中の作業ですから、危険を伴います。そういった事故が起きる・起きない以前に、人間が危険にさらされるということ自体に問題があるんです。フィールドエッジはこうした野外の現場でも、多くの人を助けていくはずです。

軽量化、小型化の理由とは

高価な量水板や大がかりな設置工事が必要なくなるということは、それだけ多くの場所に設置できるということでもあります。

ある年の洪水被害は、ふたつの河川AとBがのちに合流する地域のもので、Aの河川には雨が降り、Bには降らず、しかし不運にもBの河川にしか水位を測るための設備がなかったため、合流ポイントで大きな洪水被害が出ることになりました。こうしたことを未然に防ぐためにも、私たちは比較的自由な場所に、必要であれば複数台を設置してもらえるよう、軽量・小型な製品の開発を心がけました。

VS-1300の検知センサはレンズ部分を格納するとミニマルなキューブ型になりますし、より自然に馴染むカラーのカスタマイズも行っています。見た目は静かでも、しっかり仕事はしてくれるんですよ。

CHECK!

フィールドエッジの軽量/小型化は、より多くの場所に設置してもらうため。たくさんの「目」が私たちを守るため。

2 フィールドエッジの
誕生と反響

技術革新のアカデミー賞「2018 R&D100 Awards」を受賞!

フィールドエッジの研究開発は、従来の監視システムに不満を抱いていたお客さまから「河川の世界でもこれこれこういうことができないかな」という相談を受けて始まったものです。今から振り返れば、これはお客さまのニーズと私たちのシーズ、そしてAI技術の急速な発展という3つの要素がしっかりと噛み合うことで完成した、この時代にしか生まれ得なかった製品だと思っています。

私たちの持っていた監視カメラの技術は、駅や空港、野外のものでは道路渋滞状況や河川の様子をリアルタイムで確認できるようなものまでを含め、各所で信頼を得ていましたが、そこにAIの革新が加わることで、ついにはアメリカの「2018 R&D100 Awards」を受賞するまでに至りました。

このアワードは世界の優れた技術100件を選定する「技術革新のアカデミー賞」と言われるもので、研究の成果がこうして実を結ぶのは本当にうれしいことです。AIの導入は、一般的な監視カメラが追求していた「より解像度が上がりました。もっと鮮明になりました」という進歩とは根本的に違うものですし、いよいよ新しい時代がやってきたという実感がありますね。

CHECK!

フィールドエッジは時代の寵児。研究の成果は「技術革新のアカデミー賞」を獲得。世界にも認められた。

3 AI技術のこれから

AIが支える工事現場

AIができることというのは、今後も飛躍的に広がっていくはずです。私たちのチームも、AI技術を用いた開発をフィールドエッジだけに終わらせるつもりはありません。

たとえば建設現場の建機などにAI技術を取り入れることを検討します。今も工事現場ではたくさんの機器を使い作業や検査が行われていますので、そこにAIを取り込むことで、これまで人手に頼っていた部分の効率化を図ることができると思います。工事現場の人材不足や高齢化は深刻な問題ですから、この分野でもAIは人間を助け、社会に貢献するスマートなパートナーになってくれるのではないかと考えています。

これは国土交通省が取り組んでいる、「i-Construction(建設現場などにAI技術を導入することで生産システム全体の生産性の向上を目指す動き)」にも密接な動きですね。

AIの未来はどうなっていくのでしょうか

フィールドエッジのAIのように、用途や手段を絞り込んであげることで素晴らしい働きをしてくれる「特化型AI」というのは、今度もどんどん発展していくでしょうね。私たちは河川や道路という現場から、間接的であれ、人の生活を豊かにすること、幸せにすることの一翼を担っているという自負があります。

SFの世界に登場する、まるで友だちのようなAIができるのはまだ先のことだと思いますが、もしAIがそこまで進化したとしても、人間が本来の目的を失わず、いい「先導者」になることができれば、未来は明るいのではないでしょうか。

今は私たち技術者を含めた人間全員にとっての、勉強の時期なんです。

三菱電機エンジニアリング株式会社 小林基彦

CHECK!

今後ますます身近になっていくAI。人間がいい「教師」になることができれば、未来は明るい。