Round-trip Letters
カヒミ・カリィ × Hello,AI Lab
【 Vol.12 From Hello,AI Lab 】
心と体とAI
それは、文通のようなメッセージ。以前からAIの可能性に注目していたアーティスト、カヒミ・カリィさんと、三菱電機の研究者集団「Hello,AI Lab」が、AIについて語り合いながら、発見や気づきをやり取りするコラムです。
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回答者
Hello,AI Labの研究員
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特徴
アラフォー、女性、現在子育ての真っ只中、お世話好き、ちょっとおせっかい、幼少期より科学技術に興味あり。少々ピアノを嗜む。
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注意
研究所の意見を代表しつつ、若干の私見をはさみます。
未来に向けて
希望となるAIに
カヒミ・カリィさま
カヒミさん、お返事ありがとうございます!
カヒミさんの憧れる方にご年配の方が多いということ、その中でも、おばあさまが特別の存在であったこと、そしてその理由の中で「人生を最後まで大切に過ごそうという美しい姿勢が感じられること」というお話、とても素敵だと思いました。
何歳になっても美しく生きたいという姿勢は素晴らしいですよね。
ただ、想いがあっても身体的なハンディーキャップがあって叶わないという方もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。AIは、そういった方たちにとって希望となる可能性が大きいと思っています。たとえばVol.10で紹介した、脳に埋め込んだチップが外部のAIと通信することで、考えるだけで電子機器を操作する技術。この技術は日進月歩で進化していて、先日は手足が麻痺した60代の男性が同年代の人がスマホを使うのと遜色ないスピードで文字入力をしたということがニュースになっていました。
人生を最後まで大切に過ごしたい、でもそのためには壁を乗り越えないといけない、そんな人たちに、AIはきっと助けとなってくれることでしょう。
豊かさとAI
研究の動機、支えとなるAI
それでは、いただいたご質問にお答えしていきますね。
【質問1】
AIに興味を持つことは音楽よりも特別な感じがしますか?私にとっては、ミュージシャンになるという選択をするほうが、AIの研究に進むよりも特別な感じがします!
というのも、私はそもそも「AIの研究がしたい!」と思ってこの業界に入ったというよりも、その時その時の自分の興味に忠実に従った結果、気づけばここにいたというような気がしていて、自分では特別な感じを持っていないからです。
私はもともとロボットが好きだったのですが、小学生の頃、車いすってすごく便利だなと思いました。それがきっかけで、「ロボット×障がい者支援」の研究ができる大学に進学しました。そして大学で研究を進めるうちに、環境や人をセンシングする技術って大事だと思ったり、自動運転のセンシングに興味を持ったりしているうちに、ディープラーニングが大きく脚光を浴びはじめ、勉強するようになりました。新しい技術がホットになってくると、その技術で自分が抱えている課題を解決しうるのか、技術者として興味が膨らみます。気がつけば、AIの世界にどっぷり浸かっていました。
【質問2】
これから世界でAIが活用されることで、人間以外の生物(動植物や菌類など)にどんな影響があると思われますか?
AIの活用が進むことで、資源の利用が効率的になっていきます。たとえば、AIセンサーを使って省エネに対応する家電や、AIの適用でフードロスを削減しようとするコンビニをはじめとしたさまざまな業界の取り組みなど…それらはきっと、持続可能な社会の実現に貢献していくことと思います。私達研究者も、そういった貢献を目指して日々研究開発に向き合っています。
こうした取り組みにより、生態系の破壊が抑えられ、人間以外の生物(動植物や菌類など)が生きていくための環境が維持されていくのではないか、と思っています。
【質問3】
AIは生活を便利にしてくれたり、身体的な活動を助けてくれたりしますが、私達の精神的な部分の支えになることもできますか?たとえばカウンセリングなど、私達のメンタルを扱うことはとても繊細ですが、逆に感情的にならないAIだからこそ得意な部分もあるのではないかと気になりました。
まずAIは、私達の精神的な部分でも大きな支えになっていくと思います。
一般的な話ですが、医療はAI導入が大きく期待されている分野のひとつで、精神疾患に対しても研究は進められています。心の病は目に見えづらく、データを用いた客観的な診察が難しいと言われていますが、たとえば患者の話し方の特徴(話すスピード、回答までにかかる時間、使われた単語とその回数、指示語の回数など)を分析して、どんな病気なのか、重症度はどれくらいか、といったこと診断するという研究が進められているようです。
目に見えない心を扱う事例では、自閉スペクトラム症児の対応にロボットを活用するといった研究もあります。自閉症児は他者への関心を持ちにくく、変化に対して不安や抵抗を示す傾向があります。早期の療育で行動が改善されるという事例がたくさんありますが、実際には療育を受けられる環境が整っていないことが多いと言われています。そこで、一人ひとりの感情の推測や、支援者が接するときの手助けをするため、AIが搭載されたロボットでの対応が検討されています。
もっと身近な例でいうと、AIを使ったカウンセリングが受けられるというスマホアプリが既にあります。どこまで正確なのかよく分からない部分もありますが、私は個人的に興味があって試したことがあります。カウンセリングがとても身近になり、この分野でもAI技術の可能性を感じました。
今後さらに、AIを使ったカウンセリング関連の機能は充実していくことでしょう。だからといって、人のカウンセリングが不要になるかというと、そうではないと思っています。AIカウンセリングがもっと広まった未来では、人によるカウンセリングの価値が今よりもっと上がっているかもしれませんね。
AIの感じ方について
生活・滞在先での感じ方
いかがでしたか?
これからも、豊かな世界や毎日のために、AIが進化し活用されていくことを願っています。
それではあらためて、パリ、ニューヨークといった海外での生活が長いカヒミさんに質問です!
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【 質問1つ目 】
パリのどんなところに惹かれ、またニューヨークのどんなところに惹かれて、そこでの生活を決められたのですか?
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【 質問2つ目 】
パリでお住まいのときに感じていらっしゃった、科学技術やAIに対する考え方と、ニューヨークでお住まいの今の感じ方に、違いはありますか?また、共通点だと感じることはありますか?
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【 質問3つ目 】
カヒミさんは家事や料理をするのがお好きな方とも伺いましたが、日常の家事・育児の中で、ここはどんなにAIが進展しても、AIの力を借りないで自分でやりたい!と思うことはありますか?(たとえば、AIがどれだけ自動化されても、収納は芸術に通じるからご自身でやりたいとか、海外でも出汁はかつおから取りたいとか…)
※本文中における会社名、商標名は、各社の商標または登録商標です。
AIを研究しようと思われたきっかけを教えていただけますか?インタビューなどでミュージシャンになった理由を聞かれる事があるんですが、AIという新しい分野に興味を持たれることは音楽よりも特別な感じがして、とても興味深いです。