2014年8月26日
宇宙船から見える「オドロキの画像10」
突然ですが、8月30日(土)21時からNHKBSで放映される「宇宙遺産100」という番組の収録に先日、参加した。国立天文台副台長の渡部潤一先生とご一緒のDSPACEコンビ(!?)。さらに爆笑問題の太田光さんと中川翔子さんという宇宙に詳しく、喋りのプロでもある方々とご一緒でガチガチに緊張。しかし、世界中の10の宇宙機関などから厳選された100枚の画像はどれも涙が出るほど美しかった。そしてそれらの画像一枚一枚の裏にある、人間たちの壮絶な努力と想いの深さに驚嘆した。
詳しくは番組をぜひご覧頂くとして、「有人宇宙」に関する画像について、番組では一機関10枚という制約があったので、ぜひ私も選んでみたいと思った次第。「美しい画像」、というよりは「オドロキの画像」という観点で選んでみました!
① 宇宙から見る星々
宇宙ステーションから撮影した地球の画像はよく目にする。しかし、星空の画像は意外に目にしていないのではないだろうか?宇宙から見る星々は大気を通さないために瞬かない。また三次元的に広がり圧巻だという。しかし、高度約400kmを飛行する国際宇宙ステーション(ISS)は秒速約7.7kmもの高速で飛行するため、手振れなしで暗い夜空の星を撮影するのは非常に難しいのだ。しかし、挑戦した宇宙飛行士がいた。第六次長期滞在クルーとしてISSに長期滞在したNASAドナルド・ベティ飛行士。彼は宇宙でコーヒーをストローでなくカップから飲みたいと宇宙仕様のカップを手作りしてしまうような、「モノづくり博士」でもあり、宇宙滞在中は様々な実験、観測などにチャレンジしている。そして見事天の川の撮影にも成功。そして、最近は高感度のカメラが使われるようになり、宇宙飛行士たちが宇宙船と星々を一緒に撮影した画像をツイッターで投稿している。
左:ISSからドナルド・ベティ飛行士が撮影した天の川。
右:NASAのリード・ワイズマン飛行士が2014年8月にツイッターに投稿したISSと星と地球。(提供:NASA)
② 大気圏に突入していく宇宙船
そして、最近の画像で驚くべきは宇宙から地上に帰還していく宇宙船の様子を克明に撮影できることだ。下の画像はこの8月17日にISSを離れ大気圏に再突入した米民間宇宙船シグナス。大気圏でバラバラになっていく様子がわかる。また帰還だけでなく地上からの打ち上げの様子も撮影されている。
8月17日、大気圏に再突入するシグナス宇宙船。(提供:NASA)
③ 「その時だけ」の姿をとらえる
宇宙飛行士が地球をいくら見ても飽きないのは、雲や光の状況が刻一刻と変わり、同じ場所でもまったく異なる表情を見せるから。またユニークな地形もある。たとえばロシア人飛行士が「カエルの湖」と呼ぶ地形(真ん中の画像)。撮影したアレクサンダー・ゲルスト飛行士は「これどこかわかる?」とフォロワーに呼びかけているのも面白い。宇宙から見える地形は時にまるでアートのようだ。
左:突っ切ったり上から見下ろしたり、オーロラは常に宇宙飛行士を虜にする。写真は2014年8月上旬撮影。環状に地球をとりまいている。
中:まるでカエル?宇宙から見ることでユニークな形がわかる。
右:カルマン渦と呼ばれる雲の渦とメキシコのグアダルーペ島。(提供:NASA)
雲間に見える富士山は、2003年2月、着陸直前に空中分解したスペースシャトル・コロンビア号の宇宙飛行士たちが飛行中に撮影したもの。「富士山が撮れたよ」と、宇宙から毛利衛氏にメールで送ってきたそうで、そうしたエピソードを聞くと一層、画像の美しさと彼らの想いが心に染みる。
2003年1月26日、スペースシャトル・コロンビア号の宇宙飛行士が撮影した富士山。(提供:NASA)
④ 見えてしまうもの「もっとも悲しい画像」
地上で隠そうと思っても見えてしまう光景もある。たとえば7月、ISSにいるドイツ人のアレクサンダー・ゲルスト飛行士が「もっとも悲しい画像」とツイートし、またたく間に世界中に拡散されたのが、戦闘シーン。ロケット弾が飛び交い、爆発する様が夜の宇宙に浮かび上がっていた。
2014年7月23日、ロケット弾が飛び交うイスラエル・ガザ地区。(提供:NASA)
⑤ 宇宙空間に舞う
そして、個人的に大好きなのが宇宙遊泳の写真。カッコいい写真がありすぎるのだが2枚だけチョイス。一つは1997年11月。日本人で初めて船外活動を行った土井隆雄宇宙飛行士。写真では右側に暗く映っている。人工衛星を手づかみするという難易度の高い仕事を急きょ行うことになり、約90分間、宇宙を見つめて衛星接近を待った。おそらくこんなに長く、船外でひたすら宇宙を見続けた宇宙飛行士はいないだろう。土井飛行士は飛行後、「宇宙は私たちを呼んでいる」と名言を残したが、きっとこの体験から出ているはずだ。そして2枚目は命綱なしの宇宙遊泳。こんな体験をぜひしてみたいものだ。
左:1997年11月、スペースシャトルの貨物室で人工衛星を捕まえようとする土井飛行士(右側)。
右:1994年9月16日、新しくISS用に開発された移動装置をつけ、命綱なしで船外活動を行うマーク・リー飛行士。(提供:NASA)
⑥ おまけ 宇宙に暮らすこと、地球と向き合うこと
最後におまけの写真を2枚。今、ISSから地球の写真を撮影するのはキューポラという展望室。一度入ったら抜けられないブラックホールとも呼ばれている。山崎直子飛行士は「宇宙に行ったら地球は見下ろすものと思っていたが、頭上にあったのが驚きだった」と話していたがそんな感覚がわかる1枚。そして、最後は野口飛行士お勧めの一枚。1994年から95年にかけて437日、つまり1年以上の宇宙長期滞在を行ったロシア人飛行士が宇宙ステーション・ミールから外を見ている写真だ。ちょっとさびしそうにも見える。火星に行くとき、宇宙飛行士はこんな風に宇宙を見るのだろうか。
左:国際宇宙ステーションの展望室キューポラから地球を見上げるNASAカレン・ナイバーグ宇宙飛行士。
右:1994年1月から437日間の連続宇宙滞在を達成したロシアのワレリー・ポリャコフ飛行士。(提供:NASA)
ここには紹介しきれなかったが、「地上のこんなところまで見えるの?」と驚くような写真も多々。見ているうちに「これは宇宙に行かざるを得ない!」と思うはず。現在、ISSに滞在している第40次クルーは写真のセンス抜群で毎日のようにツイッターにアップしているので、ぜひチェックしてみてくださいね!