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星空の散歩道

国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe国立天文台 副台長 渡部潤一 Junichi Watanabe

 Vol.138

年明けの部分日食を眺めよう

来年は、日食が二度見られる珍しい年である。まずは新年早々の1月6日の部分日食。日の出から二時間ほどの早朝、まだ南東の空に低い太陽が欠けはじめる。食の開始時刻は場所によって異なるが、早いところで8時40分、遅いところでは9時になる。食の終了時刻は、早いところでは10時過ぎ、遅いところでは12時前になる。当然ながら時間が長いほど、大きく欠ける。今回の部分日食では、月が太陽の北側に偏って通過するので、北海道や東北などの北の地域の方がかける割合が大きい。最大の食の時には、稚内では食分が0.57となり、太陽の半分ほどが欠けて見えるが、南に行くほど食分の数値は小さくなり、石垣島ではわずかに0.065となる。継続時間も食分に応じて長くなるので、稚内では3時間ほど続くのだが、石垣島では1時間ちょっとである。それでも、まるでネズミがかじったようにまん丸の太陽の一部が欠けて見えるのは、なかなか見られない。真冬の早朝ということもあって、太陽の地平線からの高度もそれほど高くならない。食の最大の頃でも全国で30度には達しない。これだけ低いと地上の風景を入れて撮影を試みる人も出てくるかもしれない。関東地方は、この季節は晴れに恵まれる確率も高いため、スカイツリーと欠けた太陽などという写真が新聞を飾りそうである。いずれにしろ、日曜日の朝という観察しやすい機会なので、ぜひ皆さんにも全国で観察して欲しい。ちなみに日本で部分日食が見られるのは2016年3月9日以来、3年ぶりとなる。

2019年1月6日の部分日食(東京での見え方)(提供:国立天文台)

ただ、実際の観察には、注意が必要である。まず絶対に太陽を直視しないで欲しい。太陽を直接、肉眼で見てしまうと網膜を傷つけてしまうからである。太陽の光を弱める専用の日食グラスなどを用いることが大事である。2012年の金環日食の時に大量に出回った日食グラスが、どっかに眠っているお宅もあるに違いない。さぁ、これから年末の大掃除と新年早々の部分日食に備えて日食グラスを探し出してみよう。もちろん、日食グラスが無くても観察する方法は他にもある。ひとつはピンホール法。小さな穴から太陽光を小さな穴に通して、その光を離れたところに写し出すと、ピンホールカメラの原理で欠けた太陽像が写し出される。たくさん穴を空けるとそれだけの太陽像が並ぶので面白い。麦わら帽子や木の葉でも同じ効果が得られるので、ぜひ試してみたい。また、曇ってしまったら、インターネット中継などを眺めてみるとよいだろう。晴れている地域から届く映像を楽しめるに違いない。

2010年1月15日の部分日食(提供:国立天文台)

2019年のもうひとつの部分日食は年末の12月26日に起こる。インドネシアなどの東南アジアの一部では金環日食になるのだが、日本では部分日食である。これも全国で眺められるのだが、今度は月が太陽の南側を通過するために、南に行くほど大きく欠ける。また起こる時刻が夕方遅くとなるために、一部の地域では欠けた太陽のまま日没となる。これはこれで面白い天体ショーとなるのだが、また年末に近づいたら詳しく紹介することとしよう。