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南の島で星を見よう!~石垣島の星文化を探して~ 日本最南端の天文台がある石垣島。なぜここに天文台が?南の島の星空の魅力は?この夏DSPACE取材班は、石垣島天文台をはじめ、石垣島と星との関わりをご紹介します!

石垣島天文台のユニークさ

南の島であるがゆえの観測成果!?

天体観望会でにぎわった石垣島天文台。ここにある光学赤外線望遠鏡「むりかぶし望遠鏡」は、105㎝と小ぶりながら(だからこそ!?)期待を上回る成果をあげている。この夏も「親子彗星」を観測し、新聞などで大きく取り上げられている。だが、建設された時は、南の島で湿度が高くてほとんど観測できないだろうと言われていた。実際に天体を撮影すると、ペガスス座の球状星団は星の一つ一つの色までわかるし、ばら星雲の花びらの構造までわかる。「まるで宇宙で観測するハッブル望遠鏡の画像のようだと驚かれます」と副所長の宮地竹史さんは笑う。

石垣島天文台の観測対象はユニークだ。「まずは突発天体。例えば宇宙の100億光年彼方で起こる爆発現象『ガンマ線バースト』を観測しています。NASAの衛星が24時間、宇宙を監視していて、ガンマ線バーストを検出すると世界中に発信。一斉に望遠鏡を向けます。その観測ネットワークに参加していて、検出信号が届くとサイレンがなるようにしてあるんです」そう話すのは研究員の花山秀和さんだ。2009年6月から、石垣島天文台の専属研究員として島に住む。仕事は夕方からなので、昼はシュノーケリングなど石垣島の海を楽しみ夜は観測、と充実した日々を送っている。

石垣島天文台で。副所長の宮地竹史さん(左)と研究員の花山秀和さん。この夜の天体観望会申し込みの電話が次々とかかっていた。

花山さんが続ける。「それから太陽系の彗星や小惑星、木星や土星などの惑星。太陽系小天体研究グループの観測はここが中心と言っていいほど活躍しています」。実際に冒頭の「親子彗星」を初め、たとえば2010年12月に現れた、彗星のような尾を持つ不思議な小惑星シャイラの観測にも成功している。「太陽系天体は突然現れすぐに消える。瞬時にとらないとダメ。その点、石垣島天文台は機動性が高い。世界一いい写真が撮れたのではないか」。渡部潤一先生も絶賛する。

石垣島は6月のハーリー(海神祭)が終わると梅雨が明けて晴天が続き、本州が梅雨時でも観測できる。また夜明けの時間も遅い。そんな気象条件の違いを活かし小惑星や超新星撮影のヒットを連発している。もちろん一般向けに天体の魅力を伝える公開画像にも力を入れている。

VERA石垣島観測局とは?

そして石垣島には、もう一つ望遠鏡がある。直径20mのパラボラアンテナのような電波望遠鏡だ。国立天文台のVERA石垣島観測局として2002年に作られた。VERAは銀河系の立体地図を作るプロジェクトで石垣島を含めた国内4カ所の電波望遠鏡を組合わせた観測を行っている。

石垣島で電波望遠鏡計画時から携わる電波天文学の専門家が宮地副所長で、説明に熱が入る。「宇宙の果てまで137億年というけど実はものすごい誤差がある。正確に物を計るには正確な物差しが必要ですよね。我々は地球の公転軌道という正確な物差しを使って、まだ誰も見たことがない銀河系の一つ一つの星の位置と動きを測って、銀河系を立体的に見ようとしています」

メンテナンス中の開口直径20mの電波望遠鏡。大きさに圧倒!

VERA望遠鏡の最大の特徴は、二つの焦点を持つこと。これまでの一つの焦点を使った観測では、どうしても大気の揺らぎの影響を受けた。二つの焦点で目的の天体と、それに隣接する位置にあるはるか遠くの天体の二つを同時に観測し、大気の揺らぎを打消すことで天体の精密な観測が可能になったという。『世界で二番手がいない、唯一の技術です』と宮地さんは胸をはる。現在、銀河系内の百個の星を観測しているが、今後1000個以上の星を観測するという、10年以上かかるビッグプロジェクトが石垣島で進行中だ。

自治体・市民の協力で実現!

この石垣島天文台にはもう一つ大きな特徴がある。それは天文台の運営に石垣市や八重山星の会など自治体、市民が積極的に参加していることだ。石垣島に望遠鏡が欲しいという市民の熱意が高く、高校生が中心となって署名運動も行われて市議会で造成予算などが認められたという設立の経緯もあり、天文台の開所式には高校生もテープカットに参加したそうだ。

特徴的なのは毎年夏に3日間行われる高校生のための研究体験学習「美ら星研究体験隊」。実際に研究者の体験をしてもらおうと、電波望遠鏡やむりかぶし望遠鏡を使って、観測計画を立て、観測、データ解析を行う。過去に3つの電波星と小惑星を発見。発見の成果は日本天文学会ジュニアセッションで発表も行っている。「最初は星が見られると面白半分でやってきた生徒たちが、だんだん真剣になり英語の論文を必死に読み、数学の計算をし始めて学校の勉強の大事さに気づく。引率の先生も驚くほど変化していきます」(宮地さん)

むりかぶしとは地元でもっとも親しまれる「すばる」の呼び名。地元に愛され、星の魅力を多くの観光客に伝える石垣島天文台の役割は大きい。 

photo Snap

  • 天文台に到着したのは、まさに真夏の炎天下!白い建物が夏の日差しに輝いていました。

  • 入り口には、ちゃんとシーサーが鎮座しています。沖縄らしいですね。

  • 入り口付近です。いよいよ天文台の中へ!

  • むりかぶし望遠鏡と宮地さん。

  • むりかぶし望遠鏡の足の部分にはミンサー織りの柄がデザインされていて、地元の高校生が直接ペイントしたそうです。

  • 石垣島天文台の施設内には観測成果が、天体ギャラリーさながらにズラーっと並んでいます。

  • 右上のオレンジのランプが、サイレンと共に光ると花山さんは天文台に缶詰状態になるそうです。

  • VERAのパンフレット。プロジェクトの内容をわかりやすく説明しています。天の川銀河の地図作りなんてワクワクしますよね!

  • ちょっと休憩。