星空を散歩するように、身近に楽しんでもらいたい。
ついに100回目を迎えた連載コラム『星空の散歩道』。特別企画第1弾は、「渡部先生が選ぶ思い出に残るコラムベスト3は?」「原稿執筆はいつどんなところで?」などの質問に答えていただきました。
印象に残っている3つのコラムは?
- —2015年10月でコラム「星空の散歩道」が連載100回となりましたね。おめでとうございます!まずは、これまでのコラムで特に思い出に残っているコラムについて、お聞かせいただけますか?
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渡部:
そうですね。古い順からお答えすると 第38回「ついに見えた系外惑星」(2009年1月掲載)は天文学の進歩を感じさせるニュースでしたね。
- —そのすぐ後、2009年末には、すばる望遠鏡でも系外惑星が直接撮像されましたよね?
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渡部:
当然だと思いましたね。すばる望遠鏡は当時すでにハッブル宇宙望遠鏡の解像度を超えていましたので。
- —系外惑星が次々と発見され地球によく似た惑星も見つかっていますが、こんな状況を想像されていましたか?
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渡部:
想像してはいましたが、観測機材や精度の進歩がかなり早かったと思います。
- —次に印象に残っているのは、どのコラムでしょうか?
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渡部:
第72回「12月10日の皆既月食を眺めよう」(2011年11月掲載)です。全国的に天候に恵まれました。日食の場合は世間の注目も高く、いつも忙しくて落ち着いて鑑賞するのは難しいのですが、この時の月食は自分自身もゆったりと眺めることができた、思い出の皆既月食です。欠けていく月を眺めながら、こんな幻想的な風景は地球からしか見られないだろうなと思いました。実際に太陽系では地球以外では起こりませんので。
- —確かに皆既日食のときは新聞やテレビでひっぱりだこですものね。その中でも思い出の皆既日食はいつ、どこで見た日食でしょうか?
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渡部:
2009年の小笠原沖。2011年のイースター島。2012年のケアンズ皆既日食ですかね。
- —2009年の小笠原沖は、船からテレビ中継なさっていましたね。いつも伝える側になりご自身が楽しむことができないと思いますが、それでも伝える側に立ち続ける理由や想いを教えて頂けますか?
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渡部:
伝えることは、自分が社会に果たす役割のひとつと思っています。社会から何を受け取るかでは無く、社会に何ができるかを常に考えることが重要ですから。
- —社会に何ができるか・・私たちも考えたいと思います。では、3つめの思い出のコラムはなんでしょうか?
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渡部:
第78回「崩壊したアイソン彗星」(2013年12月掲載)です。予測に反してアイソン彗星が崩壊した事件は、天文学に多くの謎がまだ残っていることを感じさせましたね。
- —本当にアイソン彗星には翻弄されましたね(笑) 先生が天文学者を目指したきっかけも、彗星が予想と違っていたことでしたよね。改めて彗星の魅力を教えていただけますか?ご覧になった中で思い出深い彗星も教えてください。
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渡部:
彗星は姿形も十人十色で個性が強く、ゆえにやってこないとわからない、予想できないところが魅力ですね。 1986年のハレー彗星。1976年のウェスト彗星。1996年百武彗星。1997年ヘール・ボップ彗星が思い出深いです。
車中で、飛行機内で、原稿執筆の苦労
- —忙しい先生がいつ、どうやって記事を書かれているのか気になっているのですが、まずはタイトル「星空の散歩道」に込められた想いを教えてください。
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渡部:
いくつかの候補の中で、星空をもっとも身近に感じられるタイトルにしたと思います。星空を散歩のように楽しんでもらうこと、なるべく一般の方々でも眺められる天文現象を紹介しようと思ったことが、このタイトルに決めた理由です。
- —「一般の方々が楽しめるように」という想いが込められていたんですね。でも実際に毎月テーマを決める際にはご苦労なさることもあるのではないですか?
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渡部:
ちょうどよい時期の天文現象がなかったり、あってもベテランでないとなかなか見られない現象だったり、と毎回苦労します。しかし、星は星の数ほどあるので(笑)、そんなときは星座や恒星など特定の天体の紹介をしたり、ニュース性のある話題にしたりしています。
- —お忙しいところ、いつも締め切りを守って頂きありがとうございます。海外から原稿を送って頂いたこともありましたね。移動中にご執筆なさることも多いのでしょうか?
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渡部:
移動中の執筆は多いですね。新幹線の車中、飛行機の中などは集中できますが、資料が手元にないために、細かい数値の確認ができないことも多く、「XXX」のまま送ったこともありましたねぇ。
- —そうでした(笑)。ちなみに1回の原稿はだいたい何時間ぐらいで書き上げられるのでしょうか?
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渡部:
約1時間。見直しに10分。数値確認に10分。
- —早いですね!特にあの原稿は苦しかったなぁという回はありましたか?
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渡部:
毎回苦しいのですが、今回のように海外出張中にメールが来て数日で返事をよこせ、というのが大変苦しいです。
- —申し訳ありません(大汗)!そしていつもご協力ありがとうございます。ついつい仕事の早い先生に甘えてしまいますが、気を付けますので引き続きどうぞよろしくお願いします!
宇宙に関心をもつこと、天文学者を目指す方へ
- —ところで、宇宙に関心を持つとはどういうことだとお考えですか?
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渡部:
人によって「宇宙」の概念は異なります。科学者が未知への関心をもつのと同様に、人それぞれ「宇宙」にたとえば到達しえないもの、あるいは永遠不変のものとして関心を持ちうるのではないかと思います。おそらく後者のほうが多く、そのため心理描写に星や宇宙が描かれることが多いのでしょう。
- —後進の育成について先生がお考えになっていることはありますか?
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渡部:
科学技術立国として理工系の仕事に携わる人材は大切です。宇宙や天文を入り口として理工系の面白さにふれ、理解してくれる人が増えれば、こんな良いことはないと思います。
- —たとえば天文学に興味をもっても、天文学者を生業にするということは大変だと聞きます。天文学者を目指す方たちにアドバイスをお願いできますか?
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渡部:
天文学者になるのは難しくないのですが、生業にするのは極めて困難です。物理数学英語が達者で、生活がぎりぎりで苦しくてもやっていくという強い意志のある方だけにお薦めします。
これからの『星空の散歩道』について
- —今後話題になりそうな天文現象や、先生が注目していることがありますか?
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渡部:
2035年に日本で起こる皆既日食、そして2061年夏に76年ぶりにやってくるハレー彗星は必見でしょう。
- —2061年!先生はその時、100歳ぐらいでは? どこでご覧になりたいですか?
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渡部:
日本で見ます。
- —盛り上がるでしょうね。ぜひDSPACEで特集記事を組みましょう。では世界で起こる皆既日食で楽しみにしておられるのは?
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渡部:
2016年3月のインドネシア皆既日食や2017年8月の北米皆既日食はすでに見に行く予定をしていますよ。
- —皆既日食が続きますね。では今後DSPACEでやってみたい企画はありますか?
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渡部:
読者からのフィードバックができるような企画、あるいはオフラインでの講演会や懇談会があればいいかな、と思います。
- —それは面白そうですね。ぜひ実現したいです。最後に、「星空の散歩道」100回目を迎えたご感想と読者に向けてのメッセージをお願いします。
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渡部:
よく続いたなぁ、というのが正直なところです。継続は力、なんでしょうね。読者の皆さんには是非ご要望や感想を頂けると幸いです。今後もぜひ楽しんで読んで頂ければ幸いです。よろしくお願いします。
- —こちらこそよろしくお願いします。お忙しい中、ありがとうございました!
- 国立天文台 副台長
渡部 潤一 Junichi Watanabe - 1960年 福島県会津若松市生まれ。
1983年 東京大学理学部天文学科卒。
東京大学より理学博士、国立天文台・光学赤外線天文学研究係・助手を経て現在、自然科学研究機構国立天文台 副台長、教授。専門は太陽系の中の小さな天体(彗星、小惑星、流星など)の観測研究。
ガリレオがひらいた宇宙のとびら(旬報社)、新しい太陽系(新潮社)、面白いほど宇宙がわかる15の言の葉(小学館101新書)
画像提供:NASA, ESA, and P. Kalas (University of California, Berkeley),NASA, NOAO, ESA, the Hubble Helix Nebula Team, M.Meixner (STScI), and T.A. Rector (NRAO)., NASA/MSFC/Aaron Kingery, NASA/Tim Pyle,国立天文台, NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute, ESA/NASA/SOHO/SDO/GSFC, 2002 R. Gendler, Photo by R. Gendler, StellaNavigator/AstroArts Inc.
※ 「宙ガール」は、株式会社ビクセンの登録商標です。