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星空の散歩道

2011年11月22日 vol.72

12月10日の皆既月食を眺めよう

 昨年末、12月21日に皆既月食があった(参照:vol.61/「夕方の皆既月食を眺めよう」)が、今年の6月16日の皆既月食(参照:vol.66/「6月の日食と月食」)と共に、なかなか天候に恵まれず、見られなかった方も多いだろう。前者では、たとえ晴れに恵まれても、月が東の地平線から昇ってくる頃には、すでに現象が始まっていた。そのため、夕方の早い時間から眺められるメリットはあったが、始まりから終わりまでを眺めるのは不可能だった。また、後者は梅雨時だったこと、それに月食の起きる時間が明け方で、欠けたまま沈んでいったので、これまた全経過を観察するのは無理だった。晴れていたとしても、平日の明け方のたいへん見にくい時間帯だったせいもあり、実際に眺めた人は少ないだろう。

 さあ、リベンジである。今年も年末の12月10日に皆既月食があるからだ。しかも、今回は二つの点で極めて条件がよい。

 その一つが、皆既月食の全過程が全国で見られることである。部分食の始まりが21時45分、皆既月食は23時6分から始まり、食の最大が23時32分、皆既の終わりが23時58分、そして部分食の終わりが11日の01時18分と、日本全国で始まりから終わりまで見ることができる。しかも、食の最大時頃に月がちょうど天頂近くにやってきている。ほぼ頭の真上で起きる月食となるのである。月が、どのように欠けていき、そして皆既月食となった後、どんなふうに再び輝きを取り戻していくか、その経過を観察できるのである。(ただ、あまりに真上過ぎて、首が痛くなってしまう可能性はあるが。。。。。) 

 条件のよい二つ目の点は、月食の起こる12月10日が土曜日であるということだ。天体観察にはベストの曜日に起きる皆既月食となる。始まる時間帯が深夜にかかってしまうものの、翌日が日曜日なので、夜更かししやすい人が多いに違いない。特に小中学生などは、翌日の学校行事がなければ、安心して観察できるはずである。改めて説明する事もないかも知れないが、月食は太陽-地球-月が直線に並び、月が地球の影に入り込み、満月の一部または全部が欠けたように見える現象である。月全体が影にすっぽりと入り込むと全体が暗くなる皆既月食になる。月が地球の影をかすめる場合には、月の一部が欠ける部分月食となるが、今回は前者の皆既月食となる。

皆既月食の仕組みと本影・半影。(提供:国立天文台)

皆既月食の仕組みと本影・半影。(提供:国立天文台)

 皆既月食でも、月には太陽の光がわずかに届く。本来であれば真っ暗になるはずの、皆既月食中の月は、実際にはぼんやりとした赤銅色に輝く事が多い。これは地球の高層大気を通って屈折した光が、地球の影に入り込み、月に届いてしまうからである。その光のうち、青色の成分は地球大気に散乱されて無くなってしまう。残った赤色の光だけが皆既月食中の月を照らし出す。ちょうど夕日が赤くなるのと同じ原理である。どの程度、赤くなるかは、地球の大気の成層圏に漂う火山灰の量などによって、異なってくる。今回のような条件の良い皆既月食でぜひ注目して欲しいのは半影食である。地球の影には、本影と半影とがある。本影というのは、地球が太陽全体を隠している影の部分で、先ほど説明した大気で屈折した赤い光以外は、太陽光が届かない領域である。本影は、地球の直径を底辺に持つ円錐状となっている。一方、半影は地球が太陽の一部だけを隠している影である。したがって、半影の中にいると、太陽は部分日食のように見える。つまり、隠されていない太陽の光球面から太陽光が直接届いてしまうので、半影の中では照らされている月の部分はそれほど暗くならない。したがって、肉眼でも半影だけだと気がつかないことが多い。それでも本影に近づけば近づくほど半影も暗くなる。本影が月にかかり、部分月食が始まる直前の月をよく眺めると、欠けていく予定の月の縁がわずかに暗く見えることがある。これは半影のうちでも最も本影に近い部分が、そこを覆っているからである。

 今回の皆既月食では、半影食が始まるのが20時32分で、部分食の始まりまで1時間13分の間は半影食が続く。また、部分月食が終わってから、半影食はやはり同じ程度は続くことになる。せっかく条件がいい皆既月食なので、ぜひ半影食から眺めてみて、その満月の輝きの変化に注目してみてはどうだろうか。

 なお、国立天文台では、今回も「皆既月食を観察しよう」というキャンペーンを展開するので、ぜひ参加してみよう。