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011.1.22種子島 こうのとり2号機打ち上げレポート 2011年1月22日、H-IIB2号機ロケットが、こうのとり2号機を載せて種子島から宇宙へと飛び立ちました。絶好の打ち上げ日和となったこの日を迎えるまでに、種子島現地取材に赴いたDSPACE取材班にも様々なドラマが!

ロケット広報官インタビューの巻

「不安?完全にないです」

 今回の打ち上げは予定日前日に延期が決定されたが、延期が決まったとき、ロケット担当者はどんな気持ちなのだろうか。ロケット担当のスポークスマン(広報担当)、砂川英生さんに延期決定の翌日20日、お話しを伺った。

- 打ち上げ延期が決まりましたが、現場の雰囲気はいかがですか?

砂川:トラブルがあったりするとその対応でピリピリしたりしますが、作業はある程度順調に進んでいるので、今日はお休みを頂いて「ほっと一息」といったところです。ロケット班や射場の整備作業をしている人たちは1~2ヶ月ずっと作業を続けて、休みが少なかったですからね。気合いを入れ直して明日からの作業に備えます。

- 初号機は完璧な成功でした。2号機に不安はないですか?

砂川:完全にないですね(きっぱり!)

取材班一同:へー!!

H-IIBロケット2号機スポークスマンの砂川英生さん。第2段のLE-5Bエンジンを担当した。現在はJAXA宇宙輸送ミッション本部で新型ロケットエンジンLE-Xの研究を行っている。
H-IIBロケット2号機スポークスマンの砂川英生さん。第2段のLE-5Bエンジンを担当した。現在はJAXA宇宙輸送ミッション本部で新型ロケットエンジンLE-Xの研究を行っている。

砂川:金星探査機「あかつき」が金星軌道投入に失敗した原因として、逆止弁が疑われていますが、H-IIBロケットでも逆止弁を多く積んでいるので、再度点検したり、特別点検を実施して、万全の体制をとってきました。

- ところで、ロケット打ち上げの見どころや注目点ってなんでしょう。

砂川:生で見ると、身体に響いてくる音がしますよね。夜の打ち上げでは光も見どころです。ぼくが最初に見たのは、H-IIAロケット7号機でしたが薄暗い中での打ち上げで感動して「これは泣きそうになるな」と。最近は慣れて涙は流さないですけどね(笑)

- 特に砂川さんの思い入れの強いところってありますか?

砂川:僕の担当は第二段エンジン(LE-5B)なので、着火の瞬間が気になります。

- やっぱり不安ですか?

砂川:100%のものって世の中にないですよね。人がやっていることだし。第一段エンジンはリフトオフの前に点火するので点火しなかったら打ち上げを止められる。でも第二段エンジンは(打ち上げ後なので)点火しなかったら取り返しがつかない。そう思うとドキドキします。でもどの部品も無駄なものはないんですよ。固体ロケットも他の部品もすべてがうまく働かないと「こうのとり」は運べないんです。

- 砂川さんは新型エンジン「LE-X」のご担当だとか。次世代ロケットはどんな段階ですか?

砂川:今は国際情勢や今後の衛星の需要をふまえて、どういうロケットがいいのか検討しています。一つ言えるのは「有人ロケットをふまえて」いるところです。固体燃料を使うかどうか、LE-Xエンジンを3基並べるか4基かそれ以上か。エンジンの研究開発中なので、どのくらいの性能が出るか成果をふまえて、形を決めていくことになると思います。

- エンジンをいくつも束ねる「クラスターロケット」は難しいのですか?

砂川:配管が複数になったり、着火や立ち上がりのタイミングを合わせたりなどが難しいですね。でもH-IIBロケットでLE-7Aエンジンを2基並べる技術を獲得できたと考えています。

- 着火のタイミングってどのくらいずれても大丈夫なんですか?

砂川:基本的には同時ですが、なかなかびしっとはいかないですよね。ちょっとした誤差が出てきます。打ち上げ前に田代試験場であえて着火タイミングをずらして燃やしてみてエンジンに影響があるかないかを確認しましたが、多少ずれても大丈夫です。

2つのLE-7Aエンジンの着火タイミングをずらして行った燃焼試験の様子(提供:JAXA)
2つのLE-7Aエンジンの着火タイミングをずらして行った燃焼試験の様子(提供:JAXA)

- 打ち上げ成功したら「打ち上げの打ち上げ」ですね!

砂川:そうですねー。居酒屋とかね。私が種子島で働いていた数年前は通称「2ロケ前」(第2ロケット組み立て棟前)、つまりセンターの敷地内でやってましたよ。今でもやってますね。

 今回は第二段の制御落下実験も実施した。通常は燃焼が終わった第二段ロケットは自然落下させていた。それでも居住地に落ちるなどのリスクはほとんどないのだが、より安全に処置するために狙った場所に制御して落とすという実験だ。燃料を残しておき逆噴射させるなど難しい技術要素があり、世界的にも実施している国は少ない。結果的に22日の打ち上げも完璧な成功。制御落下実験も実施。日本のロケット技術はスゴイのだ。

photo Snap

  • H-IIB2号機の打ち上げ成功の自信の表れか。表情にも余裕が感じられる砂川さん。

    H-IIB2号機の打ち上げ成功の自信の表れか。表情にも余裕が感じられる砂川さん。

  • 種子島宇宙センター内には、実物大のH-IIAロケットが訪れる人を圧倒します!

    種子島宇宙センター内には、実物大のH-IIAロケットが訪れる人を圧倒します!

  • プレスセンター屋上。ここで打ち上げを観覧します。

    プレスセンター屋上。ここで打ち上げを観覧します。

  • プレスセンター内にあるH-IIBロケットの模型。

    プレスセンター内にあるH-IIBロケットの模型。

  • こちらにずらっと並んでいるのは、H-IIAロケットの模型。

    こちらにずらっと並んでいるのは、H-IIAロケットの模型。

  • 研究が進められている新型エンジンLE-X(提供:JAXA)

    研究が進められている新型エンジンLE-X(提供:JAXA)