品質不適切行為に関する
調査状況

当社における品質不適切行為に関する原因究明及び再発防止等について
(総括)

2022年10月20日
三菱電機株式会社

三菱電機株式会社は、昨年6月に当社の長崎製作所における鉄道車両用空調装置等の不適切検査が判明して以降、社長を室長とする緊急対策室と外部専門家で構成する調査委員会(委員長:西村あさひ法律事務所 木目田 裕、2021年7月2日公表)を設置し、同委員会による品質不適切行為の徹底的な事実調査と真因究明に協力するとともに、昨年7月の社長交代を経て、新しい経営体制の下、昨年10月に再発防止策を含む3つの改革(品質風土、組織風土、ガバナンス)を策定し、調査活動と並行して抜本的な改革活動に全社を挙げて取り組んでまいりました。

また、昨年10月に取締役会からの委託機関として、外部専門家で構成するガバナンスレビュー委員会(委員長:山口利昭法律事務所 山口 利昭、2021年10月20日公表)を設置し、同委員会による執行役・取締役の経営上の責任及びガバナンス体制・内部統制システム全般の検証を進めてまいりました。

この度、調査委員会による当社22製作所等の全ての調査が終了し、同委員会から品質不適切行為の調査結果に関する調査報告書(第4報・最終報告)を本日付で受領するとともに、ガバナンスレビュー委員会からガバナンス体制・内部統制システム全般の検証及び提言並びに役員の経営上の責任の追加検証及び評価の報告書を受領しました。これらを踏まえた当社としての総括、3つの改革の進捗状況及び今後の取り組みについて下記のとおりお知らせいたします。

昨年6月の鉄道車両用空調装置等の不適切検査が判明して以降、約1年4カ月にわたり、お客様や関係者の皆様をはじめ、多くの皆様に多大なるご心配とご迷惑をお掛けしていることを、あらためて深くお詫び申し上げます。

当社は、これまで明らかになった品質不適切行為の全容及び両委員会からの指摘、提言を真摯に受け止め、グループを挙げて再発防止にあたるとともに、信頼回復に向けた3つの改革を深化・発展させながら、引き続き、新しい三菱電機の創生に向けた変革に全力で取り組んでまいります。

特に経営層は、経営の本気度が現場に十分に伝わるよう、これまでのコミュニケーションのあり方を抜本的に見直し、現場の課題の解消に責任を持って関与するとともに、不適切行為の発生自体を未然に防ぐ全社的な仕組みを着実に構築し、品質不適切行為を根絶させるという強い決意を持って、改革に取り組んでまいります。

1. 調査委員会による調査結果

昨年7月2日に社外弁護士を委員長として設置した調査委員会は、当社国内全従業員に対するアンケート調査等で得られた内容について客観的データ等の突合による整合性確認、当該拠点関係者や役員に対するフォレンジック調査及び関係者へのヒアリング調査を実施してまいりました。

本日受領した調査報告書(第4報・最終報告)までに、調査委員会では従業員によるアンケート(対象者55,302名、回答率93%)に加え、調査委員会への個別の情報提供やヒアリングによる新たな申告から、合計2,362件の要調査事項を抽出し、国内製造22拠点、全ての調査を終了しました。第1報から第4報・最終報告までに報告を受けた事案の合計は197件です。

また、調査報告書(第4報・最終報告)には5月25日に受領・公表した調査報告書(第3報)以降に判明した案件等が記載されております。その概要は、表1に示すとおりです。

表1:新たに報告を受けた品質不適切行為の概要
事業本部名 不適切行為の概要
①社会システム事業本部
  • 1.伊丹製作所:10件
  • 2.長崎製作所:3件
  • 3.コミュニケーション・ネットワーク製作所:2件
    • 電気用品の「型式の区分」の変更届遅延
    • 顧客仕様と異なる環境条件
②電力・産業システム事業本部
  • 1.電力システム製作所:1件
    • タービン発電機における試験成績書の一部不適切な記載
  • 2.系統変電システム製作所:4件
    • 外鉄形変圧器における出荷試験の一部不適切な行為
    • 変圧器付属品における試験の一部不適切な行為

    他2件

③ビルシステム事業本部
  • 1.稲沢製作所:2件
    • ビル設備用コントローラーにおける電安法の一部不適合

    他1件

④電子システム事業本部
  • 1.通信機製作所:2件
⑤リビング・デジタルメディア事業本部
  • 1.中津川製作所:3件
    • 産業用送風機における試験成績書への一部不適切な記載
    • 換気扇における試験成績書への一部不適切な記載

    他1件

⑥FAシステム事業本部
  • 1.名古屋製作所:1件
⑦自動車機器事業本部
  • 1.姫路製作所:33件
    • 圧力センサーにおける試験の一部不適切な行為
    • カム角センサーにおける試験の一部不適切な行為
    • 燃料温度圧力センサーにおける試験の一部不適切な行為

    他30件

  • 2.三田製作所:9件
    • カーナビゲーション製品等における試験の一部不適切な行為
    • EGRバルブにおける試験の一部不適切な行為
    • デッキにおける試験の一部不適切な行為

    他6件

今回指摘された上記品質不適切案件について、法令・規格違反のものに関しては既に関係機関へ説明し、是正を実施しております。お客様との契約に関わるものについては、順次、お客様に説明のうえ対応策を相談させて頂いております。また全ての案件について再発防止策を進めております。

なお、前回までに報告を受けた案件については、個別にお客様にご説明するとともに全社で進めております3つの改革の方針に則り、再発防止策を進めております。

2. 総括

これまでの調査委員会の調査報告に基づき、当社内でも品質不適切行為の類型と背景についてあらためて分析を進め、昨年10月に始動した3つの改革において強化すべき内容を再点検いたしました。

これらの分析の結果、3つの改革の方向性に大きな変更は必要ないものの、特に、未然防止に向けたエンジニアリングプロセスの変革、双方向コミュニケーションの風土醸成、予防重視のガバナンス・内部統制システムの構築に重点をおき、着実に再発防止策を推進してまいります。

  • (1)調査委員会調査報告書に記載された事案の総括
    調査委員会による当社全22製作所等の調査から判明した事案197件は、以下のように類型化されました。
    • 故意による不適切行為:合計112件。うち62件で管理職が関与。顧客との契約逸脱が大半を占めており、また特定の事業本部にて顕著に見られています。
    • 過失による不適切行為:合計85件。うち10件が法令違反の可能性があるもの。法令や規格に対する知識不足等を背景とした手順確認不足で、多くの製作所にて共通的に見られたものです。
  • (2)事案の類型化
    調査委員会調査をもとに、品質改革推進本部のメンバーが各拠点現場を見て、声を聞き実態を調査した結果、以下の類型に分けられることがわかりました。
    • 故意による不適切行為
      故意による不適切行為は特定の事業本部で多く見られ、大きくは以下の二つに類型化されました。
      • 1)納期や試験設備の問題で試験・検査プロセスの一部に契約の履行が困難な項目があり、契約内容とは異なる試験・検査を行った類型
        (例:契約は全数検査を行うとなっていたが検査設備能力がなかったケースでは、工程能力が高く製品のばらつきが小さいので、顧客に断らずに抜き取り検査に変更していた。)
      • 2)企画・構想段階や設計変更における技術的な検証が不十分で、設計に起因する製品ばらつきにより顧客要求を満足できなかったが、実質的な製品品質に影響はないと考え、虚偽の報告を行った類型
      これらの不適切行為は、その多くは、実質的な製品品質には問題がないという正当化の下、顧客への技術的説明なしに行われており、“顧客との契約を重視する”ことの意識の希薄さ、“製品品質さえ良ければ問題ない”というプロセス軽視の考え方が根底にあったと考えます。一方で、量産後に問題に気づき、顧客に設計変更を提案したが、認められなかった事例も見つかっており、顧客に対して技術的に説明を尽くす組織としてのリーダーシップが弱いこともわかりました。
    • 過失による不適切行為
      多くの製作所にて共通的に見られたものですが、その背景として法令や規格に対する知識不足と思い込みによる手順確認不足が考えられます。
  • (3)原因分析
    上に述べた不適切行為の類型をもとに、下記①②③のとおり、発生の原因分析を行いました。こうした原因を取り除くには、拠点・部署の自律的な努力・創意工夫に委ねるだけでなく、当社経営層が主体的かつ率先して、各拠点・各部署の現場が抱える様々な課題や悩みを丁寧に拾い上げ、この解決に向けてともに考え行動することが不可欠だと認識しております。
    • 品質不適切行為が発生した拠点・部署では、不適切行為を引き起こす以下のような直接的な原因があったと考えられます。
      • 1)開発設計・品質管理に関わる人員規模や技術・技能レベル、試験評価環境の整備状況、個々のプロジェクトの進捗管理のあり方など、課題の見える化が不十分で、拠点長や本部判断による必要十分な4M(Man, Machine, Material, Method)投資が行われなかった。この結果、例えば、試験環境の整備不足から、試験が1回で終了せず、何度もやり直しが発生した。結果的に納期遅れや試験結果の検証が不十分な状態で性能の見極めを余儀なくされたケースが発生した。
      • 2)設計者の必要リソース見積りが甘く、高負荷が続いていた。また設計者をサポートするデザインレビュアーが不足する製作所もあった。一方で、設計業務を効率化する、デジタルツール導入や仕組みの整備も不十分であった。この結果、新規性や難易度の高い開発に多くの時間と人的リソースが割かれ、従来機種設計や既存技術適用に対する検証・レビューが質・量ともに不足しがちとなった。
      • 3)開発設計現場が法規や規格、契約に対する深い知識・理解を得る機会や仕組みが不足しており、また、顧客に品質管理の基本原則に則り、データに基づく技術説明を尽くすというプロセスが根付いていなかった。この結果、例えば契約後に、顧客と試験仕様の変更了解を得たが、それを反映した試験仕様書を顧客に提出していないなど、必要な手続きを踏まないケースが発生した。
    • 不適切行為が発生し、場合によってはこれが継続する事態を招く背景には、言えなかった/言わせなかったという組織風土の問題があると考えております。①に記載した設計・品質管理現場の課題が、多くのケースで部長や拠点長クラスに認識されていませんでした。調査委員会及びガバナンスレビュー委員会からも、多数の現場で不適切行為が行われていたにもかかわらず、その実態を適切に把握することができず、対処が遅れ事態が放置されたとの指摘を受けました。普段から拠点長が現場の課題を把握し解決に向けてともに知恵を出し、必要に応じて本部にもエスカレーションするという、健全な双方向のコミュニケーションが実践されなかったことが、結果として長期にわたる多くの品質不適切行為につながったと考えられます。また、一部のケースでは、拠点長自身が、不適切行為の事実を知りながら、本部への報告や相談を怠っており、拠点長と本部スタッフや執行役とのコミュニケーションにも大きな課題があると認識しています。
    • 品質事案にとどまらず、既存の点検や監査といった内部統制システムやガバナンスシステムについて予兆予防重視や社外視点の反映という点に、一層の改善の余地があると考えます。②で述べたコミュニケーション不全の問題により現場の担当者や管理職が追い込まれ問題を抱え込む前に、現場の予兆や不調を検知しアラームを出し、その改善を促すような、効果的な予防重視の内部統制システムが十分整備されていませんでした。

3. 再発防止策を含む3つの改革の進捗・今後の取り組み

当社は、2. 総括(3)で述べた原因分析に基づき、現場の実務層と拠点長や本部マネジメント層とのコミュニケーションのあり方を抜本的に見直し、設計・品質管理の現場の課題の解消に経営層が責任を持って関与し、不適切行為の発生自体を未然に防ぐ全社的な仕組みを構築していくことが、会社再生のために必要不可欠であるとあらためて認識して、品質風土・組織風土・ガバナンスの3つの改革について、以下の具体策を重点的に展開することを約束します。

  • (1)品質風土改革 ~エンジニアリングプロセスの変革~
    • 設計や品質管理のリソースと負荷の見える化に基づく人材の増強や作業効率化、管理スパンの適正化など、現場マネジメントを確実に実行できる環境の整備
    • レビュアーの配置拡充やレビュー実効性の向上など開発設計のフロントローディングの推進
    • データに基づく品質管理と手続きの実行、経営層による顧客との会話
    上記①~③の取り組みを通じて、顧客に対しては、技術的に正しい説明を尽くす組織能力を再構築するとともに、経営層自ら顧客と対話・交渉することで現場の負担を軽減し、「そもそも現場が品質不適切行為を起こす必要のない仕組み」を構築します。
  • (2)組織風土改革 ~双方向コミュニケーションの確立~
    • 経営層自らの変革を図るべく、幹部へのコーチングや現場と目線を合わせたタウンミーティング、執行役による社内SNSを通じた情報発信などの継続的な実行
    • 事業所や部門を跨るローテーションや1on1ミーティング、「心理的安全性/雑談・相談ガイドライン」の発行など、部門内外で人が繋がり、組織の自走化に資するコミュニケーション活性化策の積極的な展開
    • 職場の諸課題に対しては、報告を待つのでなく、管理者側から積極的に傾聴、把握し組織的解決に繋げるような行動変容の徹底
    上記①~③の取り組みを通じて、双方向コミュニケーションを確立し、“上にモノが言える”、“課題解決に向けて皆で知恵を出し合える”風土を醸成します。
  • (3)ガバナンス改革 ~予防重視のコンプライアンスシステムの構築~
    • この1年で実現した取締役会構成の見直しを踏まえて、特に社外取締役との重要情報の共有を徹底する仕組みを構築し、取締役会の経営モニタリング機能をさらに強化
    • 全社的な横ぐし機能を強化し、予兆把握と予防を重視した内部統制システムを構築、全社リスク制御機能を強化
    • 社外取締役過半となった取締役会によるステークホルダー視点を重視したモニタリングによる3つの改革を持続的に加速・改善
    上記①~③の取り組みを通じて、より効率的で実効性の高い予兆把握と予防重視のガバナンス体制を構築します。

なお、調査委員会及びガバナンスレビュー委員会からの各提言に対しても、こうした視点で品質風土・組織風土・ガバナンス改革の3つの改革を強化加速することで、対応することとしております(図1)。

図1:調査委員会提言/ガバナンスレビュー委員会提言と会社戦略

上に述べた重点項目を踏まえた3つの改革について、以下に詳細内容を記します。

  • (1)品質風土改革 ~エンジニアリングプロセスの変革~
    昨年10月に品質改革推進本部が策定した施策の進捗状況と今後の取り組みは表2のとおりです。推進中の活動に加えて、2. 総括(3)で述べた原因分析に基づき、「そもそも現場が品質不適切行為を起こす必要のない仕組み」を構築すべく、表3の重点項目を実行し、エンジニアリング力の強化とモノ造りのプロセス変革にフォーカスして推進してまいります。
表2:品質風土改革の進捗
(2021年10月に策定した方策の進捗)
項目 2022年10月現在の進捗・今後の取り組み
①牽制機能の再構築
  • 1)指揮命令系統の分離・独立
    品質改革推進本部は、2022年度から224名体制とし、同本部に所属する品質保証監理部を全製作所に新設、出荷権限等を付与し運用を開始(2022年9月までに920件の新製品ステップ移行審査や278件の出荷判断を実施)
  • 2)品質保証機能の強化
    法令・規格・顧客仕様と製品の同一性を重点にした品質監査を開始し2022年度上期に10拠点実施。2023年3月までに分工場を含む全28拠点に対して品質監査を実行予定
②技術力・リソース課題への対策
  • 1)法令・公的規格遵守の管理強化、遵守徹底
    外部機関を活用した、法令規格改廃情報と規格文書の閲覧サービスを2022年6月から導入
  • 2)IT化、デジタル化による品質強化
    顧客要求仕様や検査データをデジタル管理するための具体的ツールを選定し評価中。2022年10月から順次導入
    法令・規格・顧客仕様の遵守、品質保証プロセスのうち強化すべきインフラを洗い出し、2022年度までに約250億円の投資を決定、2023年度上期までの2年間で300億円以上の投資を計画
  • 3)工場健康診断の実施
    品質問題の下に潜むヒヤリハットを見える化するため、製造現場の健康診断を開始。2022年9月までに分工場を含めた対象27拠点中23拠点の診断を完了。各製作所の強み弱みの把握、良い事例の水平展開を実施中
  • 4)品質保証人材育成
    製造拠点の品質保証・品質管理部門について、保有スキルの調査を実施し、スキルの見える化を完了。強化計画に基づき2022年7月より活動開始
③品質コンプライアンス意識の再醸成
  • 1)人事ローテーションの活性化
    品質保証部門の人事ローテーションについて、製造拠点の垣根を越えた候補を選出完了し、2023年4月実行予定
  • 2)品質コンプライアンス意識の浸透
    7月2日を「全社品質の日」と制定し、社長・事業本部長メッセージの発信などを実施済
表3:品質風土改革の追加方策
(品質不適切行為を起こす必要のない仕組み)
項目 追加方策の具体的取り組み
①モノ造りマネジメントの正常化
  • 1)必要リソース見積り方法の仕組み化、設計者、設計課長、試験員の増員
  • 2)工場健康診断を通じた、モノ造りの4M環境見える化と整備
  • 3)新製品プロジェクト進捗の見える化と品質改革推進本部による統括
  • 4)全社的な法規エキスパートチームの組成(品質改革推進本部内)
②設計のフロントローディング推進(設計検証、変更点検証の充実)
  • 1)設計デザインレビュー(DR)のやり方を見直し、社外エキスパートによるQuickDR手法の導入(Quick DR:変更点/変化点に着目し、短期間で効率的に問題を発見し解決するプロセス)
  • 2)設計者を育てるDRシニアエキスパート制度の導入
  • 3)コーポレートによる設計横ぐし機能の強化(設計標準化等のKPIを事業本部と共有し、責任と権限を明確化)
③データに基づく品質管理と手続きの実行
  • 1)統計的品質管理手法(SQC)を活用した設計検討と量産での試験、検査方法の決定
  • 2)試験仕様書の客先への提出ルール整備、試験仕様の合意状況のモニタリング強化(新製品ステップ移行判断KPIとする)
  • (2)組織風土改革 ~双方向コミュニケーションの確立~
    組織風土改革においては、双方向コミュニケーションの風土醸成に光を当て、以下を重点的に進めてまいります。
    • 経営層自らの変革として、コーチングの実施、部門間・組織間の壁を越えるための役員や拠点長を含む上級管理職間でのワークショップによる議論活性化、現場社員と目線を合わせて本音で語り合うタウンミーティング、社内SNSを活用した従業員との対話などを実施中です。
    • 管理職の行動変容を促す取り組みとして、コーチングの管理職層への拡大や積極的傾聴による1on1ミーティング等を推進していきます。
    • 全員参加でのコミュニケーション活性化として、「挨拶・感謝・さん付け」の奨励や「心理的安全性/相談・雑談ガイドライン」の発行、「学び」を通じた部門を越えたコミュニティを形成する施策、事業所や部門を跨る人材流動の促進など、様々な施策が既にスタートしております。

これらの活動は、昨年10月に発足した全社変革プロジェクト「チーム創生」が本年3月に策定した組織風土改革の指針「骨太の方針」に基づき、人事制度刷新の取り組みと融合させながら、推進してまいります。本年5月より、各事業本部の変革プロジェクトが、全社192名体制で活動を開始しており、また、「骨太の方針」の従業員向け説明・意見交換会の実施は計198回に達しました。これまで、三菱電機を中心として活動していた組織風土改革をグループ全体に広げており、関係会社でも各社の実情に応じた活動を開始しています。表4に組織風土改革の進捗と今後の取り組みを示します。

表4:組織風土改革の進捗と今後の取り組み
項目 2022年10月現在の進捗・今後の取り組み
劣化している風土を改善する施策
①前向きで双方向なコミュニケーションを活性化し、グループ全体に広げる
  • 挨拶、感謝、「さん」付けの推奨、「心理的安全性ガイドライン」、「雑相(雑談・相談)ガイドライン」の展開
  • 役員へ実施したコーチングの管理職層への拡大加速
  • 1on1ミーティングのトライアル導入(2022年10月)
②形骸化した過度な業務を改め、本質的な業務に注力する
  • トップ主導による業務削減を取り組み中
  • 業務DX推進中
  • 会議ガイドラインの全社展開(2022年10月)
③お互いを信頼し、広く・分かり易く情報を共有する
  • 従業員へのダイレクトコミュニケーションを意図した、社内SNS活用拡大、社内イントラネット刷新等を実施
  • 人事制度の開示範囲(評価基準・プロセス等)拡大(2022年12月)
新しい風土を築く施策
④役割・権限・責任を適切に付与することで、人・組織の自走を促す
  • ミドルマネージャーの管理スパン、権限内容の見直し(2022年10月から順次展開)
  • 人財マネジメントをより重視した管理職任免の徹底(2022年10月)
⑤部門を越えて繋がりあうことで、三菱電機グループの強みを認識し、活かす
  • 事業所・職種間ローテーションの推進(2,264件/2022年4月~9月)
  • 役員や拠点長を含む上級管理職が全社視点で問題解決する為のワークショップ(役員全員 計4回、役員・本社上級管理職 計5回、拠点長 計2回)による議論活性化
⑥お互いに学びあい、自発的に成長しあえる機会を増やす
  • 学びを通じたコミュニティ「Melcollege」の創設(2022年10月)
  • 本人意志による異動を促進する制度改定(2022年10月)
  • 従業員のキャリア自律を支援する「キャリアコンサルティング室」設置(2022年10月)
  • 人事処遇制度改定に向けた社内委員会設置(2022年6月)
上記以外に各事業本部等で検討・実施している施策例
  • 講演会、意見交換会などの開催
  • 職場レイアウトのフリーアドレス化
  • 「ありがとうカード」活動
  • 関係会社における「変革プロジェクト」設置
  • (3)ガバナンス改革 ~予防重視のコンプライアンスシステムの構築~
    ガバナンス改革は、信頼回復を実現し企業価値の向上を目指す上で、経営がコミットすべき最重要課題であると認識します。この認識の下、調査委員会による品質事案の総括及びガバナンスレビュー委員会の提言を踏まえ、「外部の視点を入れながら、不正が起こらない・起こさせないガバナンス/内部統制の仕組み」を実現します。具体的には、以下の3つの取り組みを実行してまいります。
    • 経営監督機能強化に向けた取締役会改革
      当社は、2021年度及び2022年度において、第三者機関(株式会社ボードアドバイザーズ)による取締役会実効性評価を行い、以下の評価を受けました。

      <第三者機関による評価結果>

      • 昨年の取締役会実効性の検証にて指摘された諸課題の解決に努めており、取締役会の実効性に関しては、以下のとおり一定の改善が確認できた。
        「独立社外取締役を取締役の過半数とし、取締役会の監督機能を強化」
        「製造業の経営経験者2名を新たに選任し、取締役会の構成を改善」
        「新議長の適切なアジェンダ設定と議事進行により、取締役会の議論は充実」
        「資料の事前送付や情報提供など、取締役会の運営には一定の改善」
      • 今後、更なる実効性向上のためには、以下の4つの課題への対応が期待される。
        「モニタリングの高度化」
        「取締役会議案と議論の充実」
        「取締役会事務局機能の更なる強化」
        「指名委員会の機能強化」

      当社取締役会はこうした評価結果、及びガバナンスレビュー委員会の提言を踏まえ、重点テーマの設定をはじめとした「取締役会運営の改善」に重点的に取り組み、社外視点での経営モニタリング機能をさらに強化していきます。

    • 全社横ぐし機能強化と予兆予防重視の内部統制システムの構築
      • CROが、品質、労務、情報漏洩、法令違反などの全社リスク制御機能を統括するとともに、品質事案への対処を教訓に、既存の内部統制システムを、予防機能を重視し、より簡素で実効的なものにいたします。
      • 具体的には、リスクアセスメントによる重点テーマの設定、点検活動や教育による不知を無くす仕組みの強化、工場健康診断やエンゲージメント調査などを活用した予兆把握と重点事業所を集中的に支援する仕組みの構築、通報制度や相談制度、アンケート調査などを活用したより言いやすい仕組みの確立、デジタル化などによる不正が出来ない仕組みの導入など、多様な手段を組み合わせて、「コンプライアンス・プログラム」を策定し、執行役、従業員が各々の立場で当該プログラムを確実に実行していきます。
    • ステークホルダー視点を重視した取締役会による3つの改革のモニタリング
      • 今後は、昨年7月に品質事案発生を受けて設置した社長直轄の「緊急対策室」の機能を継承し、CSO/CROなどの関係執行役が社長直轄の「3つの改革推進室」を組成、品質風土・組織風土・ガバナンスの3つの改革を着実に進めていくとともに、社外取締役過半の取締役会が毎月この進捗状況をモニタリング、監督していきます。
      • また、3つの改革の進捗状況を、株主や投資家、従業員や顧客・取引先といったステークホルダーに適切に情報開示を行うとともに、IR(投資家との対話)やSR(株主との対話)、統合報告書などの機会を最大限に活用し、対話を行ってまいります。
      • こうした過程を確立することで、説明責任を果たしながら、ステークホルダーからの指摘を受け止め、3つの改革を持続的に加速・改善していきます。
表5:ガバナンス改革の進捗と今後の取り組み
項目 2022年10月現在の進捗・今後の取り組み
①経営監督機能の強化 ~取締役会改革~

取締役会議長及び法定3委員会委員長の社外化、製造業経営経験者2名の招聘、独立社外取締役過半化といった取締役会の構成見直しを踏まえて、今後は、モニタリングボードとしての取締役会の機能を一層強化するために、以下の運営の更なる改善に重点的に取り組む。

  • 1)取締役会の重点アジェンダの設定
    • 取締役会のアジェンダを見直し、当社のありたい姿、組織風土改革の取り組みなど、取締役会として議論すべき重要議題を決定し、2022年7月(取締役選任後)より適用開始
    • 特に今後は、品質不適切行為の再発防止策を含む3つの改革の推進状況の確認を取締役会の定例議題として毎月設定
  • 2)法定三委員会の重点強化テーマの設定
    • 指名委員会:独立社外取締役のサクセッションの主導、社長後継者計画の監督
    • 報酬委員会:導入済の新たな執行役報酬体系の運用・定着
    • 監査委員会:取締役・執行部門との情報連携の強化による各施策のモニタリング
  • 3)取締役会事務局機能の強化
    • 専任スタッフ増員及びコーポレート関連部門からの兼務者の増員(現在までに2名増)
    • 取締役会事務局と監査委員会事務局との連携強化によるモニタリングの効率化を含む実効性向上
    • 社外取締役への情報提供の改善に向けた執行役との定期意見交換会の開催、会社現場視察の充実
  • 4)第三者機関による取締役会評価の継続
    • 取締役会の「構成」「運営」の実効性評価を継続し、モニタリングボード機能の持続的な改善を追求
②本社コーポレート部門の全社横ぐし機能の強化、内部統制システムの改善
  • 1)本社コーポレート部門の全社横ぐし機能の強化
    • コーポレート部門の社内横断的な取り組みの強化
      コーポレート部門が事業本部に対し牽制機能を発揮するとともに、当該牽制機能の確実な発揮に向けCRO、リスクマネジメント統括室、法務・コンプライアンス部が各コーポレート部門を牽引し、予兆予防重視の内部統制システム構築に係る全社戦略を構築・実施
  • 2)予兆予防重視の内部統制システム構築
    • リスク分析による重点化
      リスク分析により対象テーマと予兆分析による対象事業所を明確化(リスクの見える化)
    • 不知を無くす仕組みの強化
      自己点検活動の棚卸、リスク対応監査の導入を進めることで、無知や過失による不正の根絶を目指すとともに、過剰な業務の削減や簡素化を促進
    • 不正ができない仕組みの拡大
      業務のDX化を進める中で、不正ができない仕組みを拡大
    • より言いやすい仕組みの構築
      組織風土改革との連動、倫理・遵法行動規範の周知による行動変容、内部通報制度の強化、機動的なアンケートの実施等により「より言いやすい」風土と仕組みを構築
  • 3)コンプライアンス・プログラムの策定
    • こうした予防重視の内部統制システムの運用を「コンプライアンス・プログラム」として策定し、これをグループ会社を含む共通のフレームワークとして導入するとともに、全執行役、従業員がその職責に応じて不正の未然防止に向けた主体的行動を展開することを促す(2022年度中に原案を策定、2023年度から試行)
③ステークホルダー視点を重視した取締役会による全社改革のモニタリングの実施
  • 緊急対策室の機能を継承し、CSO/CROなどの関係執行役が社長直轄の「3つの改革推進室」を組成、品質風土・組織風土・ガバナンスの3つの改革を着実に進めていくとともに、社外取締役過半の取締役会が重要議題として進捗状況をモニタリング、監督
  • 3つの改革の進捗状況については、株主や投資家、従業員や顧客・取引先といったステークホルダーへの適切な情報開示とともに、IRやSR、統合報告書などの機会を最大限に活用し、対話を実行
  • 上記過程を確立することで、説明責任を果たしながら、ステークホルダーからの指摘を受け止め、3つの改革を持続的に加速・改善

4. 役員の経営上の責任及び処分

当社は、2021年10月20日「ガバナンスレビュー委員会の設置について」にて公表のとおり当社の内部統制システム・ガバナンス体制全般の検証と、品質不適切行為に関する執行役・取締役の経営上の責任の明確化を目的に、当社と取引関係のない外部専門家から構成する「ガバナンスレビュー委員会」を設置し、調査を進めてまいりました。本日付にて、品質不適切行為に関する執行役・取締役の経営上の責任に関する追加検証及び評価の報告書を同委員会より受領しました。当社は同委員会の報告書の内容を極めて厳粛に受け止め、関係する役員の処分を本日開催の取締役会及び報酬委員会にて決議いたしました。詳細は本日公表「当社における品質不適切行為に関する役員の処分について」を参照ください。

5. 今後について

昨年7月より実施した外部専門家で構成する調査委員会によるアンケートを起点とした当社製造拠点の品質不適切行為調査は今回受領した報告書にて完了しましたが、3つの改革の取り組みは引き続き経営上の最重点課題として継続推進し、その進捗状況については、取締役会がモニタリングするとともに、当社ホームページを通じて社内外に開示してまいります。

また、関係会社に対しても、CQOが、今回調査で得られた教訓と知見に基づき、実態の把握を行うべく、品質診断を各社ごとに開始しております。今後は、この診断結果に基づき、各社の特性に応じて、品質不正の未然防止機能に光を当てた改善に取り組み、良好事例を横展開することで、三菱電機グループ全体で品質不正を生まない仕組みの確立に向けた活動を主体的に継続していきます。

約1年4カ月にわたる調査委員会による調査の過程では、あらゆるステークホルダーの皆様に多大なるご心配とご迷惑をお掛けしていることをあらためて心よりお詫び申し上げます。

今回の品質不適切事案を深い教訓として、確かな品質で社会に貢献するという基本姿勢をあらためて心に刻み、全グループを挙げて再発防止を徹底してまいります。特に経営層は、経営の本気度が現場に十分に伝わるよう、これまでのコミュニケーションのあり方を抜本的に見直し、現場の課題の解消に責任を持って関与するとともに、不適切行為の発生自体を未然に防ぐ全社的な仕組みを着実に構築していきます。

皆様からの信頼を回復し、当社への期待に応えるべく、経営層と従業員が一丸となって、新しい三菱電機の創生に向けた変革に、引き続き全力で取り組んでまいります。

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