技術紹介

より速い応答と、より速い遮断で
鉄道システムを安全に保護。

より速い応答と、より速い遮断で鉄道システムを安全に保護。

直流高速度遮断器は、検出用電磁石が短絡電流を検出すると接点を開いて遮断動作を開始します。接点の間にはアーク(強い発光を伴って発生する高温の放電)が発生し、短絡電流はアークを介して流れます。アークを消さなければ短絡電流を遮断することはできません。

直流高速度遮断器は、接点の間に発生したアークを、アークを消すグリッドまで移動させて短絡電流を遮断します。またアークを消す時間も重要です。短絡電流は時間とともに大きくなるため、すみやかに遮断しなければさまざまな機器に影響をあたえかねません。JIS E 2501-2 種類 H2では、遮断容量100kAに対しては短絡電流が55kAに上がる前に遮断するよう定められており、これを実現した装置はこれまでありませんでした。当社ではすみやかな遮断を実現するため、2つのアプローチを試みました。ひとつは短絡電流を検出する検出用電磁石をより速く応答させること、もうひとつは接点間のアークをより速く駆動させることです。

高速遮断を可能にした2つの新技術。

本技術の遮断波形

「U字型導体」の2つの磁界ループで、検出用電磁石の応答時間を3ms未満に短縮。

まず、短絡電流の高速検出を可能にしたのが検出用電磁石に採用した「U字型導体」と軽量化された「可動鉄心」です。検出用電磁石は、導体に流れる短絡電流の磁界を利用し、出力軸を動作することで接点を開く指令を出します。短絡電流が発生すると検出用電磁石の鉄心と可動鉄心の間に平常時よりも強い磁力が発生し、鉄心と可動鉄心の間に吸引力が発生します。その吸引力によって可動鉄心が動くことで、可動鉄心と一体となった出力軸が動作します。従来の「I字型導体」では導体を中心に発生する磁界ループはひとつだけです。しかし「U字型導体」では2つのループをつくりだすことができ、「I字型導体」に比べ2倍に相当する強い磁界の発生により出力軸を高速に駆動できます。

また、可動鉄心については、軽量化を追求するとともに磁力を効率的に利用できるよう設計されています。「U字型導体」の2つの磁界ループと軽く素早く動作する「可動鉄心」、この当社独自の技術が応答時間3ms未満の高速化を可能にしました。

検出用電磁石

断面図(前面)

接点材料や形状の改良などで、アーク発生から遮断までの時間を10ms未満に高速化。

次にアークをより速く駆動させる技術です。それが「接点構成」の最適化です。接点で発生したアークは、アークランナーと呼ばれるガイドにそって、アークを消すための装置であるグリッドへ移動します。アークをより短時間で消すためにはグリッドまで移動する時間を短縮する必要があります。

接点構成

今回、接点に突起形状を採用しています。アークは電磁力を受けることで駆動力が発生します。突起形状の接点を採用することで電磁力を高めることが可能になり、アーク駆動速度の向上に成功しました。さらに駆動性能に優れた接点材料を採用しました。これらに加えアークランナーやグリッドの構造に工夫を加えることで、アークの発生から遮断までの時間が10ms未満という、飛躍的な高速化が可能になりました。

アークランナーやグリッドの構造を改良。