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お米に関する講座

ごはんをよく噛む健康法 その2「咀嚼(そしゃく)の運動効果編」

ごはんをよく噛んで食べる。すると咀嚼(そしゃく)にまつわる筋肉が使われて、運動効果がアップ……というと、「少し大げさでは?」と思われるかもしれませんが実は私たちが想像する以上に咀嚼の運動効果は大きいのだとか。日本健康食育協会代表理事で管理栄養士の柏原ゆきよさんに聞きました。

――「よく噛む」ことが健康に効果がありそうなイメージはありますが、実際どこの筋肉がどんなふうに使われ、どういう効果が期待できるのでしょうか。

柏原さん まず、咀嚼に関係する筋肉を使うことによるカロリー消費と基礎代謝の向上ですよね。噛み切る、すりつぶすといった、咀嚼に直接関係する筋肉には、側頭筋・咬筋・外側翼突筋・内側翼突筋の4種類があります。

側頭筋
こめかみから耳の上にかけての側頭部に扇形に広がる筋肉。下アゴを引き上げる働きがある。

咬筋
下アゴの外側、奥歯を覆うように位置する筋肉。歯を食いしばるときに、上下の顎を噛み合わせる働きがある。

外側翼突筋
頬骨の下辺り、上アゴと下アゴの付け根の前方あたりに位置する。下アゴの全ての運動をサポートする筋肉で、顎関節をコントロールする。

内側翼突筋
下アゴの深部にある。外側からは触ることが難しい筋肉だが、下アゴを左右に側方させて食べ物をすりつぶすことも。

柏原さん 咀嚼には、主にこの4つの筋肉が協力して働いています。この他に顔には表面近くに表情筋という、喜怒哀楽を表情に転換させる筋肉があり、これも咀嚼筋に関わる位置にあります。昨今はとりわけ、食べながら話すことがよしとされませんが、できるだけ表情で気持ちを伝えるよう、豊かな表情で話すよう意識するだけでも、相手への届き方が変わりますし、その分筋肉やカロリーも余計に使うことができると思います(笑)。

――よく噛むと口内で消化されやすいような流動食化してしまって、かえって胃腸での消化活動が少なくなってしまいそうにも思えるのですが、そうではないんですね。

柏原さん 胃腸などの消化管は口から一本の管でつながっています。咀嚼をすると一本の管がしっかり動くようになる。咀嚼というアクションが脳に「消化管を動かせ」という信号を送り、しかも消化物の状態もよくなるので排泄までの流れもスムーズになります。もちろんゆっくりよく噛んで食べると消化管の血流も有意に高くなり、エネルギーの消費量も増えます。エネルギー消費の観点からも、よく噛んで悪いことはひとつもありません。

――よく噛むことは本当に大切なんですね。あとは行動への落とし込みですが、普段咀嚼回数の少ない、速食いの人がよく噛んで食べることを生活習慣にまで落とし込むのはなかなか大変そうです。

柏原さん だからこそ、硬めのごはんなんです。私個人としては「粒立ちのいいごはん」という言い方がおいしそうで好みですが、とにかく噛みごたえのしっかりあるものを意識的に摂取していく。噛み込む目安もできますし、よく噛んだほうがおいしさがわかるので自然と習慣になりやすくなっていきます。

――「おいしい」と感じることも大切なんですね。

柏原さん とても大切です。なんとなく目の前にあるものを無意識に食べると、体から脳、脳から体という司令系統が十分に働かなくなったりもしますし、おいしそうなものは大切に味わって食べようという気持ちになります。炊飯器から立ち上る甘い湯気の香りをクンクンと嗅いだり、おこげの香ばしい匂いを感じたりすると、「おいしそう」と高揚感が湧きますよね。そこに「よく噛もう」という意識を上乗せする。意識だけでも長続きしませんし、「おいしそう」だけでもつい食べすぎたりしてしまいます。

実は粒立ちのいいごはんは咀嚼運動を増やすのに、最適な食べ物なんです。和食、洋食問わず、ほとんどの食べ物は食べ物自体に調味料の味がついていますよね。つまり噛み続けると味がなくなっていく。ところが、白いごはんは逆。最初から味つけをしていないから、自然とよく噛むようになり、噛み続けると甘みが強くなっていく。他に代えがききません。

――私たちが普段の生活で、気をつけたほうがいいことはあるでしょうか。

柏原さん 丼ものなど、一皿物の料理はできるだけ避けるようにしてください。同じボリュームでも「牛丼」と「ごはん+牛皿」、「海鮮丼」と「刺身定食」ならごはんが別盛りとなっている後者を選んでください。おうちでのカレーも別の皿に盛りつけて、できればカレーをおかずとして別々に食べると理想的。習慣にならないうちでも一口分ずつかけたりして、とにかく「一皿」にしないことを考えてください。最初からごはんの上に具や汁がかかっているものより、別々になっているものの方が「ごはん粒を噛む」という意識がしっかり立てられます。最初から味がパッケージになっている、一皿物は口中調味がおろそかになりがち。味のついていないごはんの味を意識するだけで、咀嚼は変わり、体は変わっていくのです。

柏原ゆきよさん

1973年生まれ。管理栄養士。一般社団法人日本健康食育協会代表理事。女優、モデル、経営者、アスリートなど延べ10万人以上の食生活をサポートした。「食べて飲んでおなかからやせる」(かんき出版)、「お腹からやせる食べ方」(三笠書房)など著書多数。

三菱IHジャー炊飯器<本炭釜 紬> 噛んで味わうおいしいごはん。

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