三菱ジャー炊飯器

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お米に関する講座

スペシャル対談~米のプロ×炊飯器のプロが考える これからの「本当においしいごはん」

宮城県登米地区で続けているオリジナルブレンド米栽培プロジェクトでは米農家、木村忠義さんの指導のもと、「本炭釜 KAMADO」の開発者、金井孝博が田んぼで奮闘してきました。モノ作りだけでなく米作りまで経験した金井が、米作りのプロ木村さん、五ツ星お米マイスター佐藤貴之さんとともに、これからの「本当においしいごはん」について本音で語り合います。

現在は、「契約水田お米栽培プロジェクトとして、「東北194号」を栽培しています。

炊飯器だけでなく、お米まで作ろうと思ったきっかけや
ブレンド米を作るにあたってこだわったことは何ですか?

金井

私は皆さんに、おいしいごはんを食べていただきたいと願って日々、炊飯器を研究しているわけですが、おいしいごはんを追求した時に、やっぱりおいしいお米について考えないわけにはいきません。

おいしいお米があってこそ、炊飯器の良さも生きてきます。また逆に寿司屋でどんなにネタが一流でも、包丁切れが悪ければ味を生かしきれないように、米だけがおいしくてもダメなんです。ですから炊飯器屋として、ネタを知る、おいしい米作りを知ることで、それを炊飯器作りに生かせるのではと考えたのです。

佐藤

プロの寿司職人に好まれるササニシキ。オリジナルブレンド米に含まれる品種のひとつですが、粘りの強い米とは違ってさっぱりとした口当たりで冷めてもおいしく飽きないお米なんです。この品種は火力の弱い炊飯器では炊飯が難しいのですが、「本炭釜 KAMADO」ならササニシキの持ち味を存分に楽しめるということがわかって本当に驚きました。だからこそ、米を扱う仕事をしている私としては、ササニシキをブレンド米の品種の一つとして提案しました。

木村

ササニシキはもともとうちの地区発祥の米です。“ササ(ササニシキ)”は、冷夏に弱い、難しい米といわれて次第に作られなくなってしまいましたが、実はそんなことないんです。肥料を少なくして気をつければ、十分に収穫できます。難しいという人たちは、作り方を知らなかったんじゃないかと思うくらいです。

佐藤

その地域の気候に合った品種というのもありますよね。いまはどこへ行っても同じ品種が作られているという状況がありますが、地域の良さが、おいしい米に活かされるという当たり前のことも、もう一度見直したいと思い提案しました。

実際に米作りに参加して、気づいたことはありますか?

金井

想像していた以上に、米作りは大変な作業でした。翌日は身体が痛くて動けなくなるほど(笑)。こうやって米が作られていると思うと、いい炊飯器を作らなければという使命感をいっそう感じるようになりました。また、収穫のタイミングや肥料の塩梅など、我々には計り知れない木村さんの勘みたいなものが、うまく働いておいしい米が作られているということにも驚きました。

木村

そうですね、田んぼでは毎日変化を見て作業していますから。気候の変化、稲の成長など自然が相手ですから、待ってはくれません。状況に合わせて今じゃなきゃダメ、というタイミングを見極めて管理しています。

金井

その見極める目は、データとして蓄積されてきたものが経験としてあるんでしょうけれど、それ以上に状況に応じて判断、予測する勘はすごいなと思いました。

木村

農業は“気配り”が一番大事ですから。いかに効果的に、無駄なく管理できるか。例えば草刈りにしても、上手に草を残せばカメ虫対策になり防虫剤が減らせるとか、水管理の時期を考えてやれば雑草が減るとか、従来のデータにない情報も勘で身に付けてきました。そこを間違えて損をするのは自分だから、そりゃ真剣ですよ。

おいしい米作り、炊飯器作りで大事なことは?

佐藤

うちの会社では全国の米を扱っていますが、おいしい米作りに欠かせないのは、まずは人。米農家の力量が、米の善し悪しにも現れていると実感します。

木村

うちにも米作りの技術を教えて欲しいと、他県から視察にくることがしばしばありますが、やっぱり自分で観察しながら判断していかないとダメな部分があります。また、おいしいだけでもダメで、きちんと採算がとれなければ継続できません。継続しておいしい米を作るためには、やっぱりちゃんと見極められる人を育てることが大事だと思います。

金井

それって、実は炊飯器にも言えることなんです。わかりやすい例でいうと、オーディオが、人の感性に訴える素晴らしい音の再現を成し遂げるように、炊飯器にも理性で説明しきれない技術力というのがあります。真空管やスピーカーのケーブルの素材の違いで音が変わるオーディオみたいに、炊飯器もちょっとしたことで、味が変わります。これを成し遂げるためには、よく観察する、よく考えることが大事で、技術者ひとり一人の感性が重要となってくるんです。

これからの米、炊飯器に求めるものは何ですか?

佐藤

いま、米の品種が多様化し、どれが本当においしいのかわからなかったり、品種の力が薄れておいしさにバラつきがあったりするなかで、もう一度、シンプルな米の味を復活させてもいいのではないかと思っています。情報に頼り過ぎずに「おいしい」と思えるお米があってもいいのではないかと。

木村

でもいい釜がないとおいしいごはんが食べられないでしょう。こっちでは家族も多いから、米一升をガス釜で炊きます。少量を炊く時には電気釜を使いますが、知り合いの婆さんが安い電気釜を使っていたので、これじゃダメだと教えてあげたことがあります。

金井

ごはんをおいしくするのは火力。その点では、やっぱり電気釜よりもガス釜のほうがおいしいんです。私たちが「本炭釜 KAMADO」で目指したのは、かまど炊きのごはんですが、本炭釜の利点はまさにそれ。釜そのものが発熱体となって、効率よく高火力を伝えることなんです。

木村

そうですよね。うちでも「本炭釜 KAMADO」でごはんを炊いていますが、あれはおいしい!

金井

そうですか、米を作っている人に「おいしい」と言われる炊飯器を作ることは、私の目標だったんです。嬉しいなぁ。

佐藤

私も使っていますが、あれはおいしい。でも欲を言えば、家族で朝昼2回分が炊ける容量があるといいなと思いますね。6〜8合くらい。そうすると使いやすい。都会では米の消費量が減っているそうだけど、こっちでは1升釜でごはんを炊くことも多いですから。

金井

地域やライフスタイルによって、求められるものは違うんですよね。今回、米作りに参加して気づいたのは、米作りは地域の暮らしに根付いた文化であるということでした。おいしいごはんを食べるということについて、私たちは単に理屈やモノだけじゃなく、その先にある人の感性やライフスタイル、地域など、広い視野をもって考えていかなければと気づかされました。

木村

また来年もいい米を作りましょう。

金井

よろしくお願いします。

プロフィール

宮城県登米地区の米農家

木村忠義 氏

五ツ星お米マイスター

佐藤貴之 氏

三菱電機ホーム機器

ジャー炊飯器開発チーム

金井孝博