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星空の散歩道

2011年3月24日 vol.64

見頃を迎える土星に白斑出現

カッシーニ探査機が撮影した土星の白斑 (提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

カッシーニ探査機が撮影した土星の白斑 (提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

 皆さんは天体望遠鏡で土星を眺めたことがあるだろうか。美しい環を持つ土星の姿は、観望会でも最も人気がある天体である。ゆらめく大気の向こうに、絶妙のバランスの大きさを持つ環に、誰しもが感動するはずである。

土星は木星に次ぐ、太陽系第2の大きさを持つ惑星で、本体の外見は木星に似ている。赤道半径は6万kmだが、環は半径の2倍以上の約14万km、希薄な部分まで含めれば約48万kmにまで広がっている。環は細いリングの集合体で、所々に密度が薄い隙間がある。実際に環をつくっているのは細かい岩や氷の塊で、お互いにはつながっているわけではない。その起源は、かつて土星の周り をまわっていた衛星か、あるいは彗星か小惑星などの天体と思われている。土星の強い重力(潮汐力)による破壊か、あるいは衝突破壊によってばらばらになった破片が、お互いに衝突を繰り返しつつ、次第にこのような美しい形になっていったのだろう。

 土星の環は太陽に対して27度ほど傾いたまま約30年かけて一周する。そのため、地球は約15年毎に環を真横から見る事になる。この時、土星の環は地球 からはほとんど見えなくなる。というのも環は非常に薄く、せいぜい数百m以下だからだ。土星まで13億kmも離れているので、数百mの厚さというのは限りなく無限小に近い。例えれば、東京都心から100kmほど離れた富士山頂の 0.1mmの紙よりも薄いことになる。

 この「環の消失」は2009年に起こった。環が地球から見て、ほぼ水平になり、串団子のような間の抜けた土星の姿となった。それはそれで面白かったし、ほぼ15年ごとにしか見られないめずらしい姿だったが、やはり土星はしっかりと環が見える方がよい。今年は、あれから2年を経ており、環がかなり開いて、土星らしくみえている。

 この土星が、この春に見頃を迎える。土星は、いまおとめ座にあって、4月5日が衝、つまり太陽とほぼ反対の方向に位置する。つまり、ほぼ日没と共に東から上り、日の出と共に西に沈むので、一晩中観察できるのである。

 春の夜空に土星を探してみよう。まずは、北東の方角、七つの星が柄杓の形を描く、北斗七星からはじめてみよう。ここから、春の夜空のランドマークである 「春の大曲線」に沿って、うしかい座のオレンジ色の一等星アークトゥルスを辿る。ここから、その曲線をのばすと、おとめ座の純白の一等星スピカへ辿ることができる。(参照:vol.16/「春の夜空を彩るアーチ:春の大曲線」

 さて、この曲線をスピカへのばすときに、どっちかな、と思う星が輝いているのに気づくはずだ。スピカよりも北側(上側)で、やや黄色みがかっていて、余りキラキラと瞬かない落ち着いた輝きの星。これこそが土星である。

 天体望遠鏡をお持ちの方は、適切な口径と倍率で、その環を持つ美しい姿を眺めて欲しい。もし、望遠鏡をお持ちでない方は、近くの自治体などが運営する科学館やプラネタリウム、公開天文台などでも見せてくれることがあるので、日時を聞いて、訪ねると良いだろう。

 面白いことに、木星に続いて、土星でも希有な現象が起きている。昨年の末に、土星本体に巨大な白斑が出現したのだ。土星の雲も木星とほとんど同じでアンモニアなのだが、望遠鏡で見る限り、木星よりも変化に乏しく、あまり明瞭ではない。しかし、30年から29年ごとに、数千kmにも及ぶ巨大な白斑が出現することがある。今回も白斑が出現し、そこから白い雲が縞模様に沿って東西方向に伸びている最中なのである。まるで、土星が白帯を締めつつあるようだ。ただ、この白帯は、写真にはくっきり写るが、非常に淡いため、小型の天体望遠鏡では、なかなか眺めることは難しい。

 ついでだが、2010年7月16日のvol.56でお知らせした、縞が消えた木星のその後。すでに消えてしまった縞が回復しつつある。西の空に沈んでしまった木星も、5月の連休明けには明け方の東の空にのぼってくる。その頃には、元通り、りっぱな黒帯を2本締めた本来の木星の姿になっているのかもしれない。宇宙は刻々と変化しているのである。(参照:vol.56/「木星に異変 縞が消えた」