胎内星まつり、今と昔
~沼澤茂美さんインタビュー
『胎内星まつり』代表の沼澤茂美さんにお話を伺いました。沼澤さんは、天文・宇宙のイラストや天体写真の撮影を手がけていて、著書も多数。1984年に日本プラネタリウムラボラトリー(略称:JPL)を設立。地元である新潟県を中心に天文の普及のため広くご活躍されています。
200人から2万人へ
- 1984年から始まったという星まつりですが、当時と比べて変わったところはありますか?
沼澤:大きく変わりましたよ!当時は天文ガイドという雑誌社に協力いただき、星仲間の集まりで始めて、第1回は約200人が集まりました。雑誌の購読者は天文ファンのみですから、テントはひとつぐらいで、この広い場所で寝転がって夜通し星をみていましたね。次の年も天文ファンが中心でしたが、それまでやっていた福島でのイベントがなくなって流れ込んできたこともあり、2000人くらい集まりました。
- 胎内星まつりのTシャツを着て取材に応じる沼澤さん。
- いきなり2000人ですか?スゴいですね。星祭り自体はいつ頃から日本で開催されていたのでしょうか。
沼澤:一般的な星まつりは、藤井(天文写真家の藤井旭氏)さん達が始めたのが最初ではないでしょうか。胎内星まつりが始まる10年前ぐらいです。福島県浄土平で開催され、私たちもお手伝いをしながら『いつか自分たちでも』と話していました。天文ファンに特化したイベントは海外でも歴史のある星祭りなど多くみられますが、これだけ一般の人に窓口を広げたのは、世界でもあまり例がないですね。
- 第1回めとは比べられないほどのテント数。風景もだいぶ変わったことでしょう。
沼澤:正確に数えたことはないですが、三日間の延べ人数で、だいたい2万人ぐらいです。今日は天気も良いので大勢集まると思います。メインエリアは歩けないほどの人でごったがえすと思いますよ。
会場の周辺部分にも、たくさんのテントが張られています。本来は全国植樹祭の会場で普段はテントを張れない場所も、この期間だけテントが張れるんですよ。毎年500張り以上のテントが確認できますので、かなりの人数になるかと思います。
ハレー彗星が転機
- いつ頃から今のような規模になったんでしょうか?
沼澤:ハレー彗星が接近した頃、天文の話題が広く取り上げられるようになると、天文ファンだけでなく一般の方々も訪れるようになりました。ところが公共の駐車場などで、コアな天文ファンが星を撮影しているところに一般車が入ってくると、にらみ合いなったりしたんです。当時は人工の光が反乱して星が見えにくくなった時期でもあり、天文ファンもナーバスになっていたんでしょうね。でもこのままではきちんとした理解が一般に広がらない、と星まつりの門戸を広げて一般の方々にも目を向けるようにしたんです。オークションやコンサートを取り入れたりしたのもこの頃です。賛否両論はありましたが、5000人ぐらいの参加者になった時に、市のイベントとして予算をとってくれるようになりました。いくつもの転機を経て、参加しやすくなっていったと思いますね。このスタイルは続けていくつもりです。
- それでも胎内には他の星祭りに比べるとコアな天文ファンが多いと聞きますが。
沼澤:そうですね、面白いことに1kmくらい先にテントを張って遠くから参加している方々もいるんですよ。離れていても参加しているという認識があるんでしょうね。そういう意味では、いろんな方が独自のスタイルで楽しんでいるんじゃないでしょうか。27年間やっていると、最初青年だった人が結婚して子どもができると子連れで参加して、最近は孫もできてと。月日を感じますね。
未来に受け継がれていくもの
- 最近また天文ブームがきているような気がしますが、天文に携わる側として何か実感するようなことはありますか?
沼澤:『星はただで楽しめる』ということにみなさんが気づいたんじゃないでしょうか。ペルセウス座流星群などは、その場所に行けば何もなくても見ることができますから。それからデジタルカメラの普及も大きいですね。天体写真を撮るのに優れているんですよ。天体写真の撮影にはかなりのノウハウが必要だったのですが、デジタルカメラの登場で撮影の敷居がだいぶ下がりましたからね。
天文の盛り上がりには一過性のものがあって、2009年の日食や日本人宇宙飛行士の活躍などで一般の話題になったことで注目されたことも大きいでしょうね。
話題にならないと評価されないというのもちょっと淋しい気もしますが、子どもたちにはぜひ星祭りに参加して、天文の本当のおもしろさを知ってもらいたい。基礎学問を極めるような人が出てきてほしいと思います。
- Dスペェスケと一緒に写真に納まってくれた沼澤さん。
取材中もご挨拶にみえる方が後を絶たず、沼澤さんのお人柄が窺えました。さすが胎内星まつりを27年間引っぱってきた方です。そして、なんと胎内星まつりは三日間星が見えなかったことはないそうです。今日も降水確率は0%!DSPACEの夏の取材はこれまで天気に恵まれなかったことが多かったのですが、今回はバッチリ星を見ることができました!
胎内星まつり受付付近。多くのスタッフやボランティアの方々が裏で支えてくれています。
続々とセッティングされる望遠鏡。
日も暮れてメインステージパネルには、『胎内星まつり』の文字が!
恒例の小ゑん師匠の星空寄席。
開会セレモニーが終わって記念撮影です。