三菱ジャー炊飯器

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活動レポート

2019年度契約水田お米栽培プロジェクト

稲の成長記録レポート

三菱電機が宮城県登米地区の契約水田で実施している、「お米栽培プロジェクト」。今年はササニシキ、ひとめぼれ、東北194号の3銘柄を栽培。
今年の「お米栽培プロジェクト」。登米の米作り名人の木村さんと、五ツ星お米マイスターの佐藤さんといったお米のプロと「本炭釜 KAMADO」チームは、10月10日に稲刈りを行いました。
ところが翌日には各所に甚大な被害をもたらした台風19号がやってくる――。台風前、例年通りに刈って天日干しができたのは5枚ある田んぼの1枚だけ。果たしてどうなる?
2019年の締めくくりは「脱穀・ブレンド」編です!

今年は何人かのルーキーも参加して田植えから収穫まで、お米づくりの名人農家や、五ツ星米マイスターの方とともにお米づくりにまつわるすべての工程を体験、レポートしていきます。

契約水田お米栽培プロジェクトとは

成長記録Vol.3 脱穀・ブレンド

米農家

木村忠義さん

北上川の流れる宮城県登米地区で、代々米農家を営むお米づくり名人。土壌や品種、天候もにらんだきめ細やかなお米づくりの技術に定評がある。悪天候が続いた今年も「収量は少ないけど、穫れた米はいい」と質には自信満々。一般流通前の試験品種の栽培実績も多数。

五ツ星お米マイスター

佐藤貴之さん

米どころ、宮城県における五ツ星お米マイスターのトップランナー。お米の品種、炊飯特性、ブレンド、精米など、お米にまつわる幅広い知識を持つ。本炭釜 KAMADOの「銘柄芳潤炊き」など炊飯器の炊き分け炊飯モードの開発にも携わる。

三菱電機

本炭釜 KAMADOチーム

三菱電機のフラッグシップ炊飯器「本炭釜 KAMADO」にまつわる社内横断チーム。田んぼ歴10年以上のベテランから稲刈りが初めての者もいたが、今年の刈り入れは台風の直撃に遭ってしまい、不完全燃焼に終わる。「来年こそは!」と熱意を燃やしている。

冷夏、猛暑、台風を越えて手にしたお米

台風19号が目前に迫る10月10日に人が入れそうな田んぼだけ稲を刈り、棒がけにして天日干しをしました。

木村

今回の台風はきつかったねえ。先に刈って天日干しをした棒がけも何本か倒れたし、台風直後は残り4枚の田んぼの水が抜けず、コンバインも入ることができないくらい水浸しが続いたね。結局、11月3日に残りを刈ることになって、さすがに遅かったから、その分は機械で乾燥するしかなったね。

11月中旬になっても水分の抜けきらない水田。棒を打った穴にはまだ水が溜まっていました。
雨天が続くなかでの天日干しをした田んぼに、例年より約1か月遅い刈り入れ。稲穂は、そして米は無事だったのでしょうか。

佐藤

そもそも収穫期の籾米の水分量は25%くらい。保存のために最終的には約15%まで乾燥させるんですが、今年は台風の時点で17%程度まで乾燥していたのでほとんど問題ありません。雨天下での天日乾燥となると、通常よりも時間はかかりますが……。ただそれより、問題は夏の気候でした。

田植えの頃はともかく、その後気温が上がってほしい7月いっぱいまで冷夏だったかと思いきや、8月になった途端、日本を強烈な猛暑が覆いました。そして9月には本州に続々と台風が来襲。これほど大きな気候変動が、稲作にとっていいことのはずがありません。

佐藤

まず春の田植えの後、気温が上がらないと、稲の生育や実入りが悪くなります。ところが今年はその後の8月にいきなり猛暑が来てしまいました。実がしっかり育つ時間のないまま、過剰な好天にさらされると、稲は稲穂を守ろうと籾殻が硬くなってしまう。それでも籾の内側で米は大きくなっていきますが、体の大きな小学生のようなものでお米の組成としては未成熟なままになってしまう。

木村

単に大きさや形の合わない未熟粒なら選別機でハネやすいんだけど、シラタ(白濁した未熟粒)はサイズだけでは判断がつかない。一粒一粒どの程度まで味が乗っているかわからないから選別も難しいんだよね。

もっとも収量こそ少ないものの、収穫されたお米の出来自体は上々なのだとか。

佐藤

天候や施肥、乾燥条件など米の味を決定する要素は無数にありますが、収量こそ少ないものの、今年の仕上がりは非常にいいですね。コンバインで刈って、機械で乾燥させたササニシキと東北194号も食味は実にいい。

木村

実は去年、乾燥機を全部、遠赤外線タイプのものに新調してね。それもよかったのかな。少し前までの乾燥機は粒の外側は15%まで乾いても、翌日には17%に戻ったりする。最近の機械は内側まで均等に乾くようになっていて、天日とほぼ遜色ないところまで来ています。

量は少なくとも味は上々! あとは、佐藤さんのブレンド次第! というわけで、数台の「本炭釜 KAMADO」が待つ、佐藤さんの職場へと向かいます。

道すがらお米づくりの難しさについて、佐藤さんからいろいろと話を伺いました。

曰く「お米づくりは難しい。今年のような天候だと不作というイメージになるけど、収量が少なかっただけで、デキたお米の質が高いということもある」、「施肥を多くすれば収量は上がるけど、品種によっては収量を増やすと味が落ちる品種もある」、「農家も仕事ですから、質だけでなく収穫量ももちろん大切。どうバランスを取っていくかが難しい」などなど……。

またひとつお米づくりの大変さを知り、日常の食卓に上るごはんをますます大切にしていかねば――。そんな思いを新たにしたところで、佐藤さんの職場に到着しました。

今年のお米は天日乾燥の「ひとめぼれ」と、機械乾燥の「ササニシキ」「東北194号」の3種類。実はあまり知られていませんが、五ツ星お米マイスターは「お米の特長を活かした精米技法やブレンド技術」のエキスパートでもあるのです。

佐藤

この3種でのブレンドとなると、まずひとめぼれで粘りと甘さの土台を作ります。そこにササニシキで香り、東北194号で全体の風味を調えます。この3種類だと、粘りと甘さはひとめぼれが強いんですが、面白いことに上手にブレンドするとひとめぼれの甘さが強く、ササニシキの香りが際立ち、東北194号が味の奥行きを作り出してくれる。
たまに想像を超える味わいになることもあって、ブレンドってすごく面白いんです。

生米をかじり、炊いたごはんを試食しながら、3種のお米をブレンドしていく佐藤さん。微調整を繰り返して「うん。これだな!」と何度もうなずいています。
どうやら今年の黄金比にたどり着いたようです。どんなブレンドになったのでしょう。

佐藤

細かい比率は企業秘密ですが(笑)、やはり作柄によって食味は変わる。今年は気候のせいもあって、全般にお米がしっかりしているので、ひとめぼれを少し多めにして粘りと甘みを強調しました。去年はもう少しお米がやわらかかったので、東北194号を主体に味を組み立てたんですが、やはり毎年作柄によって味わいは変わりますね。

ここまでくれば、あとは「本炭釜 KAMADO」におまかせ。ブレンド米なので「銘柄芳潤炊き」を使わず、今回は佐藤さんもお気に入りの「うま早」モードを選択。

佐藤

この「うま早」モードはすごくよくできていますよね。しゃっきりした仕上がりが好きな僕は一番好きかも。

スイッチを入れて約30分で炊きあがり。フタを開けると香ばしいお米の香りが立ち上る。この香りをかぐだけで、食べる前からもうお代わりをしたくなる。

さていよいよテイスティング。

思わず口いっぱいにほおばってしまった佐藤さんも「いやあ、これはうまいなあ。ブレンドもうまいけど(笑)、やっぱり木村さん指導のもと育てたお米はおいしい!」とご満悦。

盛られたごはんがおいしく、ありがたく感じられる。そんな当たり前のことを再確認できたお米塾2019は、またとない貴重な機会となりました。

来年の春まで、田んぼはしばしお休みです。