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星空の散歩道

2014年1月21日 vol.79

金星が明けの明星に

内合直後の金星:2009年4月2日 11時40分(JST)、50cm社会教育用公開望遠鏡(国立天文台三鷹)で撮影(提供:国立天文台)

内合直後の金星:2009年4月2日11時40分(JST)、50cm社会教育用公開望遠鏡(国立天文台三鷹)で撮影(提供:国立天文台)

 昨年から今年初め頃まで、ずっと夕方の南西の空に輝いていた宵の明星・金星の姿が見えなくなった。一番星は、お正月にどんどん地平線に近づいていき、11日に内合を迎えて、それ以降は明け方の東の空に明けの明星として姿を現している。

 以前にも紹介した(vol.36/宵の明星:金星と木星の接近を眺めよう)ように、金星は地球の内側を公転している内惑星なので、地球から見ると太陽の東西を一定距離の範囲で行き来している。太陽から最も離れる時を「最大離角」と呼び、太陽と重なる方向に来た時を「合」という。金星の公転スピードは地球よりも早いので、金星が地球に近づく時に地球を追い抜くことになる。その時、金星は地球に最も近づき、太陽ー金星ー地球と並ぶことになる。金星が太陽と地球の間にあるので、この時の合を「内合」と呼ぶ。今月11日は内合であった。内合を経て、金星は宵の明星から明けの明星へと姿を変えることになる。

 ちなみに、合はもう一種類ある。明けの明星となった金星が、どんどん地球から遠ざかっていき、今度は太陽の裏側に回りこんで、再び明けの明星から宵の明星に変わるときだ。この時には、金星ー太陽ー地球と並び、金星は地球から見て太陽の向こう側にある。そのため、この時の合を「外合」と呼んでいる。

 内合の時には金星は地球に近く、外合の時には遠い。そのため、金星が明るく輝くのは内合前後となる。もちろん、内合の前後数日は金星は太陽に近くてなかなか見えないだけでなく、地球から眺めても太陽に照らされた面がほとんど見えない。月で言えば、いわば新月の状態に近くなる。しかし、なにしろ地球に近いので、天体望遠鏡で覗くと、三日月のような形で輝いていても、その明るさは太陽や月を除くとマイナス4等を越えて、全天一である。まわりに人工的な灯りがないような場所だと、金星の輝きで影ができるのがわかるはずだ。

 そして、内合の一ヶ月後、2月15日には金星は最も明るくなる、最大光輝を迎える。内合後は地球から遠ざかっていくのだが、逆に地球から見て太陽に照らされた面積が増え、天体望遠鏡で眺めると三日月より少し太った形に見える頃が最も明るくなるのである。その明るさはマイナス4.6等。1月末から2月にかけて、次第に高度を上げながら輝きを増していく金星を眺めることができる。その圧倒的な明るさを誇る明けの明星が、朝焼けの空に輝く姿はなんといっても美しい。特に1月29日の明け方には月齢27ほどの細い有明の月が金星に接近して、美しい星景色となるだろう。

 金星が最大光輝になると、影ができるどころか、透明度のよい青空であれば、昼でも肉眼で金星を見つけることができる。私自身も宵の明星としての最大光輝の頃に、青空に輝く金星を見つけたことがある。夜に眺める輝きと異なり、昼の青い空をバックにほのかに白く金星の、いささか頼りない輝きを眺めるのも、また天文現象の醍醐味である。

 2月には金星は午前9時から10時頃に、真南の空にやってきて南中を迎える。高度はさして高くないのだが、冬の透明度のよい空なら注意深く眺めてみると、見つけられるかも知れない。もし見えなかったら双眼鏡を使う手もある。(ただし、傍にはあの太陽があるので、肉眼でも双眼鏡でも太陽を直視しないようにしよう。)