FA業界コラム
世界が抱える数々の課題を日本の “ものづくり” がサイバー空間との連携で解決する安井公治氏
2023年8月公開【全3回】
第3回 スマート化への、その一歩をご支援したい
――三菱電機では、3Dプリンタ、デジタルツイン対応CNC(数値制御装置)など新たなソリューションの提供を始めています。変化の時代に対応する三菱電機の取り組みについて教えてください。
安井 三菱電機は、スマート化の動きを早い段階から検知していました。ドイツのインダストリー4.0が話題になる10年以上前から「e-F@ctory」のコンセプトを提唱しています。また、リーマンショック以降は、スマートグリッド、3Dプリンタ、第4次産業革命ブーム、最近では量子コンピューティング・量子通信に至るまで産官学の動きを追い、詳細に把握してきています。前述のように、科学技術の社会実装に関わる国家プロジェクトにも参画しており、お客様のスマート化とお困りごと解消に、一貫して取り組み続けてきています。
スマート化への基本的対応は、日本の強みである、ものづくり現場、すなわち現実のフィジカル空間の強化を図ることだと考えています。加工機やCNCなど、現実のモノの部分で競争力を確保することが必須であり、その強化を忘れることなく、最新機能を備えたフィジカルソリューションを提供しています。その上で、フィジカル面での強みを生かすためのデジタル化対応、すなわちサイバー空間との連携と活用に必要なソリューションの提供を進めています。
「e-F@ctory」を展開開始した20年ほど前は、まだ多くの技術が実現しておらず、コスト面でも課題がありましたが、近い将来にデジタルで世の中が変わるという未来像は、確信を持って示し続けてきました。そしていま、その大きな流れが現実のものになっています。三菱電機では、さまざまな製品を、お客様のお困りごとを解消したいとの思いで提供してきました。従って、それぞれの製品が独自の強さを有し、お客様の課題解決に貢献しているとの自負があります。加えてSIPプログラムなどへの参加で、大学・研究機関との連携も深めており、お客様のお困りごとに、より高度な対応が可能となっていくものと思います。
現在は、急速に変化し成長する市場に対応しなければならず、市場動向に関する情報収集が必須です。とはいえ、あらゆる情報に、自社のみでアプローチするのは難しい面もあるかと思いますので、当社からの発信もぜひご活用いただければと思います。
また、市場の最前線では、緊急に解決すべき課題も発生しているかと思います。それらを解決する技術は日本の製造業の皆様が保有している例が多く、これまでよりも迅速、かつ効率的に解決策を商品化し、提供する必要性も出てきています。その実現に向け、ぜひとも三菱電機の最新製造装置をはじめとする、各種ソリューションの活用をご検討いただければと思います。
――最後に、ともに未来を創り上げていくパートナーでもあるユーザー企業様に向けてメッセージをお願いします。
安井 市場からの要求に対して必要なリソースを統合するため、製造業が持つ技術と、成長する市場をつなぐ仕組みとしての「エコシステム」が求められています。エコシステムとは共存共栄、つまりWIN-WINを実現しながら相互依存する仕組みだと考えています。特に、今後はサステナブルで協働していく社会づくりも重要課題であり、「エコシステム」に、いかに多くの人を巻き込んでいくかがテーマです。私自身もSIPプログラムに参加した結果、半導体産業を対象とした九州大学の拠点をはじめ、複数のエコシステム拠点整備に携わっています。お客様には、そうした仕組みの活用もご検討いただければと思います。
夜はすでに明け、スマート化へ向けての活動は、コロナ禍の影響もあって加速し、さらにその後の社会情勢を受けて確実なものとなりました。繰り返しになりますが、当社は早くから未来を見通して準備を進めてきており、グローバル投資が最も盛んな市場で、お客様が勝ち続けることに貢献してまいりたいと考えています。この機に最新ソリューションの採用を進め、スマート化に向けて加速して進められることをお勧めします。