海外レポート

才能あふれるエンジニアたちの競演
「三菱電機杯 全国大学生電気・自動化コンテスト」観戦記
2023年10月公開
第2回 才能あふれる若きエンジニアたちの奮闘 ― システムアプリケーション部門

システムアプリケーション部門決勝の課題は、限られた時間内で指定の加工システムを組み上げること。ハードウェアデザインの強化、ソフトウェアプログラミングやインストールとデバッグ、管理セキュリティ能力はもちろん、その他のビジネスに必要なスキルがあるかを審査員に厳しく採点される。3人一組の学生を教授が監修するチーム編成で、この難題に25チームが挑戦した。

明かされた追加情報、消える笑顔
2023年7月28日決勝戦の朝、整然と区切られたスペースに、工具や機械がところ狭しと並べられた会場の中で、制限時間3時間の競技が始まった。加工サンプルとして与えられた不定形の定規を製造する加工機を、三菱電機のFA製品で組み上げる課題に学生たちは一斉に取り掛かる。サンプルと寸分違わない定規を再現できるかが勝負だ。さらに今回のコンテストから、ハードウェア(機器)の製作に加えて、デジタルツイン※を再現するソフトウェア・インターフェースの開発も課題に入り、難易度はさらに上がっていた。
実際の加工を、3Dシミュレーション上で同期して再現する技術。



与えられた時間は3時間。製作に没頭する学生たち。
2023年5月に始まった予選ではコンテスト運営側が指定する加工サンプルを製造する加工機・システムを作るにはどうしたら良いかに関して論文を作成して応募。その中から、決勝に進むチームが選考された。ただし、実際にこの決勝戦の場で与えられる加工サンプルの情報、くり抜く円形や印字情報の詳細は前日まで大会本部から開示されないため(応募者談では情報の約20%が不足)、翌日の決勝戦で、不足している情報を追加・更新した加工システムを3時間以内に製作し、加工機を組み立てなければならない。難しい課題を突きつけられた学生たちは、大会前の陽気な笑顔からは全く想像できなかった真剣な表情で取り組んでいた。
当然のことながら、制限時間内で完成させるためには、普段から三菱電機のFA製品を習熟していなければならない。コンテスト終了後、さっそくいくつかのチームに声をかけて確認してみたところ「三菱電機の名前を冠したラボが大学にあり、授業で使っているので(問題なかった)」という答えが返ってきた。2つのチームに詳しく話をきいてみる。
インタビュー:遼寧機電職業技術学院チーム(エントリーNo. 82)
──どのようなところが難しかったですか?
加工機の円台を回して形状どおりにカッティングするための、計算やプログラミングが難しかったです。
デジタルツイン用のソフトウェアを使うのは初めてだったので、理解するのに時間がかかりました。3時間というコンテストの競技時間は短かったです。

──3人が知り合ったきっかけは?
専門はみな同じでもそれぞれクラスが違うのですが、このコンテストに興味があったので関係のあるセミナーやクラスに参加していました。先生から情報をもらって、チームを作ろうとメンバーを探した結果、このメンバーでチームを作ることができました。3人がそれぞれ組み立てや接続担当、プログラミング担当、HMIのデザイン担当などを分担しました。
インタビュー:遼寧機電職業技術学院チーム(エントリーNo. 63)

──ソフトウェア・3Dシミュレーターを作成する課題は難しくなかったですか?
今回初めて、こういうソフトウェアを使うので、ネットで調べたり、知り合いのエンジニアに質問したりして、努力して臨みました。
手前の黄色いボックスがカッティングする加工機
──数あるロボットコンテストの中で、三菱電機杯を選んだ理由は?
たくさんロボットコンテストはありますが、学校で三菱電機製品について教えてくれていて、普段から三菱電機の製品を使っていることが三菱電機杯を選んだ理由です。私たちの学校は、ひとつのフロアすべてがロボットアームやPLCなど、三菱電機の製品の実験室(ラボ)になっています。Siemensの製品は少ないですね。
──このコンテストに参加して良かったですか?
初めての参加で緊張しましたが、なかなか来ることのできない、南の蘇州に来ることができて良かったです。コンテストが終わったら、観光して帰りたいと思います。
──来年も出場したいですか?
ぜひ出場したいです。

与えられたサンプルと寸分の狂いもない仕上がりの定規
──3人が知り合ったきっかけは?
みな同じクラスです。機械やプログラミングなどそれぞれの得意分野を担当することにしました。
──勝つ自信はありますか?
あります。
──もし優勝したらその賞金は何に使いますか?
お祝いしたいです。初めて南の蘇州に来たので、お土産を買って帰りたいです。
──エントリーNo.82のチームは同じ学校名ですね。
みな知り合いです。同じ大学2年生です。
中国の産学連携事情
話をしてくれた加工精度の高い2つのチームは同じ学校だった。学校側は「三菱電機杯 全国大学生電気・自動化コンテスト」をどのように位置付けているのだろうか。彼らのウェブサイトに学校の支援体制が公開されていた。
(抜粋)本校は長い間、「競技を通じて指導を促進し、競技を通じて学習を促進し、競技を通じて改革を促進し、競技と教育を統合する」という理念を堅持し、道徳の育成を第一の目標として国家発展のニーズに密接に応えてきました。
彼らのような勤勉でまっすぐな人材が、今後も「三菱電機杯 全国大学生電気・自動化コンテスト」に参加し、即戦力のエンジニアとして蘇州市の製造業や三菱電機自動化に採用され発展に貢献していくとしたら、MECAにとっても、学校にとってもこれ以上ない成功といえるだろう。
1等賞を受賞した遼寧機電職業技術学院

「システムアプリケーション部門」にて1等賞を受賞。
7月28日、第16回「三菱電機杯 全国大学生電気・自動化コンテスト」の決勝戦が、蘇州太湖国際会議センターで、開催されました。全国60以上の大学、100近くのチームの中から、本校の自動制御学科学生からなる2つのチームが、見事1等賞を受賞しました。
(遼寧機電職業技術学院のウェブサイトから流用)
https://www.lnmec.net.cn/info/1045/6181.htm
第3回では、ハイレベルなアイデアの応募が多数あった、クリエイティブデザイン部門の様子をお伝えします。
- 序章 コンテスト観戦記
- 第1回 産学政連携で進める、若きエンジニアたちのコンテスト
- 第3回 Road to the Best Prize 企業特別賞に輝いたのはどの作品なのか ― クリエイティブデザイン部門
- 第4回 エンジニアインタビュー ― 三菱電機自動化(中国)有限公司 FAシステムエンジニア