第3回 才能あふれるエンジニアたちの競演「三菱電機杯 全国大学生電気・自動化コンテスト」観戦記 | The Art of Manufacturing | 三菱電機FA
Factory Automation

海外レポート

才能あふれるエンジニアたちの競演
「三菱電機杯 全国大学生電気・自動化コンテスト」観戦記

2023年10月公開

第3回 Road to the Best Prize 企業特別賞に輝いたのはどの作品なのか
― クリエイティブデザイン部門

多種多様、世代を映したクリエイティブ作品たち

この部門では、新技術の応用、グリーン智能製造、低炭素、エネルギー制御に重点をおき、インテリジェント製造システム、省エネアプリケーション、スマート農業、スマートライフなどをテーマにした革新的なアイデアの提出が課題となり、難度が高い。過去のコンテストで発表された作品のいくつかは、実際に特許取得後市場に出ているものもあるそうで、作品の質が今回のMECAの価値を決める重要な部門といえるだろう。

展示会場には、どこか見覚えのある作品や思わず笑みがこぼれる作品、社会課題の解決に正面から取り組んだ作品、日常使えるような作品や斬新なアイデアを盛り込んだ作品など、多様な作品が並んだ。選ばれた61作品から、若きエンジニアたちの発想に触れることができて楽しい。

数ある作品の中でも、展示会場を見てまわる審査員たちが関心を持っていたのは、同じ浙江大学2チームの作品だった。

「智光逐影」浙江大学チーム(エントリーNo.8)

顔認証登録を行うと、カメラを搭載したAGVが被写体の動きを追随しながら適切なアングルで撮影を続ける。人気のTikTokカメラ用追随アプリケーションとして製作された「智光逐影」の前で、多くの審査員たちの足が止まっていた。動画撮影を想定してこのアプリケーンのデモンストレーションが行なわれていた。

「中国ではデジタルの仕事が70%を占めており、なかでもライブ配信は重要な位置を占めています。しかし、すべての人がプロのカメラマンに依頼できるわけではありません。私たちの友だちの中にもライブ配信をしている人がいて、撮影に困っている話を聞いたので、このようなソリューションを開発しました。」

リーダーの説明はとても明快だった。誰もがプロ並みの映像をぶれなく撮影できるソフトウェアを、クラウド上の共通プラットフォームで提供する点で、エコシステムでもあるという。
思わず買ってしまいそうだ。斬新さは感じられなかったものの、現代的な着想で与えられたテーマをカバーしており、作品の完成度がすばらしい。

作品の詳細(応募時の論文)はこちらPDF

「青花」浙江大学チーム(エントリーNo.57)

一方で、技術力の高さに関係者が注目した作品が「青花」だった。三菱電機FAの産業用ロボットが絵筆を巧みに操り、白磁の皿に数種類の色で下絵を描いていく。絵皿が自動で次々と仕上がっていく様子に目を奪われた。下絵は微妙なカスレ、濃淡が表現できており、仕上がりの質の高さに驚いた。ロボットが描いたようにはとても見えない。

チームリーダーのお父さんは、この青花磁器の職人だという。職人が減少するなか、この伝統工芸を現代の技術で再現し後世に伝承したいという想いで、このチームはロボットの描画システムを発案したそうだ。

細かな筆圧の調整だけでも簡単でないことは想像がつく。途方もない時間をかけてシステムを完成させたに違いない。

青花とは、白磁に絵文様を描き、透明な釉薬(ゆうやく・うわぐすり)をかけてから1300℃前後の高温で焼き上げた磁器。この釉下彩(ゆうかさい)の技法を用いると、透明釉の下に多彩な色で描かれた絵文様が釉薬の下で発色するため、柔らかい印象の仕上がりになる。紀元前700年の誕生から現在に至るまでに技術は洗練され、より美しい絵文様が描かれるようになっている。

作品の詳細(応募時の論文)はこちらPDF

浙江大学の2チームの作品はレベルが高い。どちらかが企業特別賞を受賞するのではないかと感じた。

結果発表

大会2日目、7月29日。緊張に包まれると思われた受賞式会場は、スクリーンに映し出されたユーモアあふれる審査員の寸評で、笑いに包まれていた。決勝に進出したチーム全員に賞が与えられるのがMECAの特徴なのだが、3等賞のチームへの審査員の評価はおもしろかった。中国語は少ししかわからないが、笑いが絶えない演出はとてもよかった。

3等賞 赤/システムアプリケーション部門、青/クリエイティブデザイン部門

次々と受賞したチームが壇上にあがり、式は進んでいく。

注目の企業特別賞は「智光逐影」を製作した浙江大学チーム(エントリーNo.8)が受賞し、チームリーダーの劉さんは全学生を代表して、受賞式の最後にスピーチを行った。

全参加チームに贈られた、クリスタルの賞品

採用意向証書を手にする企業特別賞に輝いた浙江大学チーム(エントリーNo.8)

時代に即した(動画配信、TikTokなど)アイデアで、商品化したときに需要がある、そして商品化したあとも新たな商品やサービス創出につながる可能性をひめているという選考理由で、「青花」のチーム(エントリーNo.57)を抑えて彼らが最高の栄誉に輝いた。しかし、おそらく僅差で次点の1等賞だった「青花」のチームにも、特別に三菱電機自動化(中国)から「採用意向証書(採用内定)」が贈られ、浙江大学の2チームはそろって証書を手にすることができた。この証書があれば、大学2年生の彼らは卒業後、すぐに三菱電機に入社できるという。

浙江大学チーム(エントリーNo.8)

浙江大学チーム(エントリーNo.57)

エールの交換

受賞式後、浙江大学チームのリーダー2人に、お互いをライバルとして意識していたか聞いてみた。
「青花のチームは、ライバルだけれども、同じ実験室(ラボ)で一緒に作品をつくっていました。私たちの「ビジネス」の作品と違い、彼らの作品は「美」の作品。異なる二つの作品がどちらも素晴らしい評価を得られて、大変うれしく思っています。」
寡黙な青花のチームのリーダーもうなずいていた。最後に、2チーム全員で記念撮影を行い、会場を後にした。

美の作品「青花」

中国の産学連携事情

浙江大学チームを率いた教授は「三菱電機自動化(中国)とはパートナーとして協力関係を築いています。三菱電機の製品も学校でたくさん購入していますし、今後も、パートナーシップをさらに強化していくつもりです。このあと、製品の購入について三菱電機自動化(中国)の方と会議をする予定です。」と語っていた。

最後に

5月の地方予選開始から3か月間、長きにわたったコンテストが終わった。多くの有名大学、地方政府の積極的な参加と支援を得て、これほどの大規模なコンテストを無事に成功させた、三菱電機自動化(中国)の市場部チームには心から敬意を表したい。

会場を後にする際、「2等賞に終わって残念だった」という大学2年生に話を聞いた。

「来年も絶対MECAに挑戦します!」

彼らが創る未来はきっと明るい。
今大会のスローガンのように。智青春 創未来

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