海外レポート

才能あふれるエンジニアたちの競演
「三菱電機杯 全国大学生電気・自動化コンテスト」観戦記
2023年10月公開
第1回 産学政連携で進める、若きエンジニアたちのコンテスト
蘇州市の太湖国際会議センターでは、真新しいおそろいのTシャツに身を包んだ400人もの大学生たちが記念撮影に臨んでいた。

彼らは、全国4つのエリアの予選に参加した延べ800チームから、決勝の舞台にたどり着いた84チームの学生たちだ。その中には蘇州を初めて訪れた学生も多く、彼らは口々にコンテスト終了後の観光を楽しみたいと陽気に語っていた。これから2日間、審査員にアイデアをプレゼンテーションしたり、限られた時間内で加工機を完成させたりと緊張する場面が続くにもかかわらず、その顔には屈託のない笑顔があふれていた。仲間たちと短い学生生活のひと時を心から楽しもうとしているようにも見える。
「賞を取る自信は?」という問いには「もちろん!」と力強く答えてくれた。


MECAへのサポートを通じて人材募集、地域活性化につなげる蘇州市
会場の前でコンテストの開始を待つ彼らの後方には、リクルートブースが設置されていた。17年目を迎えるMECAの歴史の中で初めての試みだそうだ。ブースにはコンテスト共催の三菱電機自動化(中国)有限公司をはじめ、中国国内の三菱電機関連会社、蘇州市の製造業を紹介するパネルが並び、若きエンジニアたちが見入っていた。


別会場では中国の著名な大学教授や企業関係者によるフォーラムが開催されており、コンテストが持つ産学連携での人材育成、人材募集の側面が伝わってきた。




フォーラムの様子
会場である蘇州市と三菱電機との結びつきは深く、三菱電機のPLCなどを製造している三菱電機自動化機器製造(常熟)有限公司(MEAMC)、e-F@ctory 展示コーナーのある常熟グリーン智能製造技術イノベーションセンターがある。MEAMCは多くの有能な人材を雇用し、中国6番目のGDPを誇る蘇州市の経済を支えている。
司会の三菱電機自動化(中国)市場部劉(リュウ)さんから紹介されて受賞式の壇上に立った、蘇州市呉中区の李副区長は、学生たちに蘇州市の魅力をアピールした。
「ここは、『「三国志」に記されている孫権が建国した呉国』のあった場所で、2500年以上の歴史があります。現在は産業発展が著しく、なかでもロボット製造・智能製造企業が700社以上を数えるハイテク都市です。美しい南エリアや歴史だけでなく、産業発展している蘇州市を全国にプロモーションすることができました。

司会は三菱電機自動化(中国)市場部の劉さん

蘇州市呉中区人民政府・李副区長
三菱電機の経営方針と呉中区のまちづくりのコンセプトには通じるものがあるので、これからもパートナーとして連携していきたいと思います。
最後に、みなさんに期待を込めたお願いです。これからイノベーションを起こす人、創業する人たちをサポートしていくので、呉中区にぜひ来てほしいと思います。」
2007年から続く三菱電機杯
三菱電機杯(通称MECA※)は、中国自動化協会が主催、三菱電機自動化(中国)と大学が共催して2007年に始まり、以後の企業主催の学生向けコンテストの先駆けとなった。コンテストの開催目的は、産業イノベーション協力を促進するとともに、大学における起業家教育の改革を進め、若者の創造力を高める肥沃な土壌をつくり、(政府主導で進める)智能製造イノベーションの活力を高めることにあるという。中国の多くの有名大学の積極的な支援により、すでに大会開催は15回を数え成功裏に収めている。参加大学数は600以上、延べ12,000人以上の教授と学生が参加している。MECAは中国工業界に大きな影響力を持ち高い学術レベルを維持する、重要な技術競技イベントと位置付けられている。
MECA:Mission, Experience, Communication, Achievementの頭文字から。
コンテストを支えた、多数のボランティアや審査員たち
コンテストは、主催・共催者に加えて、審査委員、そして、大学生・青年団加入委員会からの多くのボランティアに支えられ、運営されている。会場のいたるところで、楽しそうに談笑しながら動き回る、黒や白の半袖Tシャツの上に白の袖なしのシャツを身に着けたボランティアの姿を見ることができた。コンテストの審査員を務める教授たちも、決勝戦前日から別室でクリエイティブデザイン部門のプレゼンテーションを受け、初日は会場でシステムアプリケーション部門の競技の行方に目を光らせ、また作品の評価を続け、最後の表彰式に参加していたので、休む暇もなかったように思う。

多数のボランティアの若者たちが参加

プレゼンテーションを受ける審査員

コンテストを運営した三菱電機自動化(中国)市場部メンバーたち
これらのボランティアや関係者たちを、わずか10数名の三菱電機自動化(中国)の市場部チームが指揮し自ら動いてコンテストは成り立っている。
そして、色鮮やかなMECAのデザインは、会場に向かう道路、入口の看板や巨大なオブジェ、会場内のあらゆる場所で輝き光を放ち、華やかなコンテストの雰囲気を演出していた。




コンテストを支える多くの関係者、人材募集を行っている大会協賛企業は、これからの中国の製造業をけん引していくであろう大会参加者である学生たちに期待している。
第2回では、システムアプリケーション部門、クリエイティブデザイン部門のそれぞれで課題に挑戦した学生たちと受賞した作品を紹介します。
- 序章 コンテスト観戦記
- 第2回 才能あふれる若きエンジニアたちの奮闘 ― システムアプリケーション部門
- 第3回 Road to the Best Prize 企業特別賞に輝いたのはどの作品なのか ― クリエイティブデザイン部門
- 第4回 エンジニアインタビュー ― 三菱電機自動化(中国)有限公司 FAシステムエンジニア