
『グリーンブック』
試写会に行ってきたのは…
編集部員G(女性)
最近映画観賞にハマっております。2週連続週末に映画館へ足を運びました。いずれの作品も邦画でしたので、久々の洋画に心が躍っています。
編集部員O(女性)
自宅から徒歩15分以内の場所に新しく映画館ができました。嬉しくて、仕事後に、週末に、と頻繁に足を運んで映画鑑賞を楽しんでいます。
G今回の試写会レポートは、3月1日(金)より公開の『グリーンブック』です。アカデミー賞では全5部門でノミネートされ、作品賞のほか脚本賞、助演男優賞を受賞した話題作です。
O監督は、「メリーに首ったけ」などコメディ映画の名手、ファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリー、トニー役は『はじまりへの旅』などのヴィゴ・モーテンセン、ドクター・シャーリー役は『ムーンライト』での演技が記憶に新しいマハーシャラ・アリです。
Gトニー・リップ(本名トニー・バレロンガ)の実の息子であるニック・バレロンガが製作・脚本を手がけ、父の生き方そのものを変えたという旅で育まれたドクター・シャーリーとの友情の物語をベースに本作品を作られました。
1962年、ニューヨークのナイトクラブで用心棒として働くイタリア系のトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、粗野で無教養だが腕っぷしは強く、周囲から頼りにされていた。そんな中、トニーは「神の域の技巧」を持ち、ケネディ大統領のためにホワイトハウスで演奏したこともある天才ピアニスト、ドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)のコンサートツアーの用心棒兼、運転手として雇われる。まだまだ人種差別が根強く残る時代になぜか、黒人にとって制約と危険の多い南部を目指すシャーリー。何もかも正反対な2人が、黒人用旅行ガイド<グリーンブック>を頼りに出発する。

Gタイトルの「グリーンブック」とは、当時出版されていた、黒人を受け入れてくれるビジネスやサービス機関のリストが記載された旅行ガイドブックのことだったんですね。
O映画の舞台となる1962年のアメリカはまだ南部各州で人種差別的内容を含む法律がありました。たとえば、黒人の一般公共施設の利用を禁止制限したり、夜間の外出を禁止したり‥。人種差別が合法で、なおかつ州によって法の適用が違うから当時黒人が安全に旅行するために、グリーンブックのようなガイドブックは大変重宝だったようです。
G1960年代のアメリカではマーティン・ルーサー・キング・ジュニアを中心に、公民権運動が活発だった時代という認識があります。教科書でそのような運動を起こしたという事実は習ったのですが、この映画を観て、グリーンブックの存在や非白人の受けた仕打ちを知り、胸をしめつけられました。
Oそんな時代背景で、黒人のカリスマ天才ジャズピアニストがあえて人種差別が根強く残る南部でのコンサートツアーを計画するなんて、とんでもなく危険なことですよね。もし自分だったら怖くてできないと思います。
Gその旅の用心棒兼ドライバーとしてイタリア系白人のトニーが雇われ、そこから二人の旅が始まるわけですが、とにかくこの2人が出自も性格もまったく違うから一体どうなることかと思いました。
O一種のバディ・ムービーと言えるかもしれないですね。バディ・ムービーって、一見凸凹に見える2人が衝突を繰り返しつつ、次第に互いの持ち味を認めて無敵のバディ(相棒)になるところに面白さがあるけれど、今回の2人はあまりにも壮大なズレが‥。
G前半、旅が始まった頃のトニーはあくまで用心棒兼ドライバーとして雇われたのにドクター・シャーリーの荷物をトランクに入れることもせず、「俺の仕事はとにかくトラブルを避け、運転するだけ。黒人の身の回りの世話はしない。」というスタンスでしたね。

O…といっても、それがことさらトニーが嫌な感じの人として描かれているのではなく、ちょっと保守的な家で育ったごく普通の人が特に意識せずそういう差別をしている…という感じでした。
G一方のドクター・シャーリーも、トニーの一見、品に欠ける振る舞いや言葉遣いを注意しますよね。それはシャーリーが繊細な孤高のアーティストという設定ゆえかと思ってしましたが、それだけではありませんでした。
Oなぜドクター・シャーリーが堅苦しいくらい慎重で品を重んじ、ルールを守っていたのか、その理由はぜひ皆さんにも映画を観て感じとって欲しいです。品格溢れるシャーリーのスーツの着こなしもとても素敵なのでお見逃しなく。
G南部への旅が進むにつれ、差別の度合いも濃くなり、色々なトラブルが起きたり、衝突したりするようになりますが、そのたびに、逆に互いの理解は深まっていきます。
O同時にこの旅は2人それぞれの内面にも変化をひきおこしたのではないでしょうか。トニーが今まで知らなかったアメリカの美しい風景を見て感動するシーンは、自分の慣れ親しんだコミュニティ以外にもっと広い世界があることを知り、トニー自身の内面の世界感が変わっていくことを暗示しているように感じました。

G南部の綿花畑で車がエンストしたシーンではドクター・シャーリー自身のアイデンティティに関する悩みが見る人に伝わってきましたよね。
Oそう、黒人と白人の差別の問題だけにとどまらず、人種を越えたアイデンティティや尊厳の問題についても語られていたように思います。
G大きなテーマですが、笑いも軽やかにまじえつつ、心を揺さぶるシーンを丁寧に積み重ねて描いているので、自然と受け止められる感じでしたよね。
Oちなみに私のお気に入りの笑えるシーンはフライドチキンを巡る2人の会話とトニーがピザを折りたたんで食べるシーンです。映画館でも笑いがおこっていました。
G私もユーモラスなトニーとドクターのやり取りには抱腹絶倒でした。トニーと家族の家族愛にもぐっときましたよね。
O全編を通してかかる60年代のジャズや黒人音楽とロックも素晴らしいし、ドクターが黒人向けの酒場で奏でるショパンにも心が熱くなります。
G旅はどのような最後を迎えるのか、ぜひ皆さんもこの2人のおじさんたちの旅の行方を映画館でご覧ください。きっと観終わったあとは爽やかな気持ちで映画館を出ることができると思います!
次回もお楽しみに!
2019.03.05