発酵食で身も心もポカポカに発酵食で身も心もポカポカに

古来より日本人の食卓に欠かせない存在となっている発酵食。
近年は、健康や美容に関心が高い人々からも注目を集めています。一体どんな魅力が秘められているのでしょうか。
ご家庭でも気軽にチャレンジできるレシピも併せてご紹介します。

発酵食は、冬にこそもってこい! 発酵食は、冬にこそもってこい!

「発酵食」とは、乳酸菌や麹菌、酵母菌といった微生物を加えて、食材に含まれる糖やたんぱく質などを分解させた食品のこと。おなじみの納豆、ヨーグルト、チーズをはじめ、和食に欠かせないしょうゆやみそなどさまざまな種類があります。食品を発酵させると、主に3つのメリットがあります。まず、微生物の作用によって、もとの食材にはない旨味や香りが引き出されること。次に、ビタミンやアミノ酸といった栄養成分が生成され、栄養価が高まること。そのうえ、食材の腐敗を抑え、長期保存も可能になります。ちなみに、最も古い発酵食はコーカサス地方で見つかった約8000年前のワインなのだそう。このことからも、冷蔵や冷凍技術がない時代から発酵食は人々に親しまれてきたことがわかります。

発酵食を摂ると、身体にはどんな効能があるのでしょうか?発酵食にたくさん含まれる善玉菌は、悪玉菌の増殖を抑えて腸内のバランスを整えます。腸には体内のおよそ6割もの免疫細胞が集中しており、有害な菌や異物をブロックする重要な器官です。腸の健康を保つことは免疫力アップにつながります。冬は空気が乾燥しやすく、感染症も増えやすい季節ですが、発酵食はその対策にもうってつけです。

発酵食は、肌トラブルの解消にも役立ちます。食生活の乱れなどによって腸の働きが衰えると、悪玉菌が増えて便秘がちに。すると体内に有害物質が滞って、シワやカサつきといった肌荒れにつながります。日頃から発酵食で腸内を整え、便秘を改善してツヤのある美肌をキープしましょう。

そのほかにも、発酵食には消化を助ける酵素が豊富に含まれていることがわかっています。栄養がきちんと吸収されると新陳代謝が活発になり、血行が促進されて身体が温まるので、冬こそ積極的に発酵食を採り入れていきたいものです。

そこで、今回は発酵食を使ったレシピをフードコーディネーターのナカムラチズコ先生に考案していただきました。

「塩麹ミネストローネ」で野菜の旨味をたっぷり味わおう。 「塩麹ミネストローネ」で野菜の旨味をたっぷり味わおう。

最初にご紹介するのは、発酵食のなかでも人気の高い塩麹を使ったレシピです。主な材料は、ご家庭で常備してある野菜とベーコン、塩麹だけ。ブイヨンを入れなくても素材の旨味がしっかりと味わえます。時間を置いてもおいしくいただけるので、夕御飯にたっぷり作り、翌朝にも温めてお召し上がりください。

【材料4人分】

  • ベーコン(スライス)…80g
  • ジャガイモ…大1個(約200g)
  • キャベツ…2枚(約100g)
  • ニンジン…1/2本(約100g)
  • タマネギ…1/2個(約100g)
  • セロリ…1/2本(約50g)
  • ニンニク…1片
  • オリーブオイル…大さじ2
  • 水…2・1/2カップ
  • トマトジュース(無塩)…1・1/2カップ
  • 調味料
    • 塩麹…大さじ2
    • 塩、コショウ…少々

作り方

下ごしらえをする

ベーコンは1cm幅に切る。ジャガイモは1.5cm角に切って水にさらし、水気を切る。キャベツは2cm角、ニンジンとタマネギは1cm角に切る。
セロリは筋を取り除き、縦半分に切ってから1cm幅に切る。ニンニクは半分に切って芯を取り除き、軽くつぶす。

炒める

鍋にオリーブオイルを熱し、ベーコン、ニンニクを加えて軽く色がつくまで炒める。タマネギを加えたら透き通るまで炒め、残りの野菜も加えてしんなりとするまで炒める。

煮る

水とトマトジュースを加えて火を強め、煮立ったら塩麹を加えてフタをし、弱めの中火で20分ほど煮込む。塩、コショウで味を調える。

ワンポイントアドバイス

しんなりするまで野菜を炒めると、煮込んだ際にしっかりと野菜の旨味を引き出せます。

ベーコンが少量でも、塩麹を使用することでしっかり旨味が出ます。

お好みでパセリのみじん切りや粉チーズを振ってもおいしく召し上がれます。

心までほっこりする「鮭と根菜の酒粕味噌煮」 心までほっこりする「鮭と根菜の酒粕味噌煮」

続いて、酒粕を使ったレシピをご紹介します。酒粕のまろやかな食感と、ほんのりとした甘みが味わえる素朴な煮物です。酒粕に味噌を組み合わせることで、味に深みが増し、同時に魚のクセも和らげます。「酒粕はちょっと苦手……」という方でも食べやすい一品です。

【材料4人分】

  • 塩鮭(甘口)…3切れ(約270g)
  • 大根…6cm(約200g)
  • ニンジン…1/2本(約100g)
  • ジャガイモ(メークイン)…大1個(約200g)
  • 調味料
    • だし汁…2カップ
    • 砂糖…大さじ1
    • 酒粕…60g
    • 味噌…大さじ2
    • しょうゆ…小さじ1/4

作り方

下ごしらえをする

鮭は3~4等分に切り、サッと熱湯にくぐらせて水気を切る。大根、ニンジンは大きめの乱切りにする。
ジャガイモはひと口大に切り、水にさらして水気を切る。

下ゆでをする

大根、ニンジンは鍋に入れ、かぶる程度の水を加えて火にかける。煮立ったら中火で5分ほどゆで、水気を切る。

煮る

鍋にだし汁と砂糖、大根、ニンジン、ジャガイモを入れて火にかける。煮立ったらフタをして弱めの中火で3分ほど煮た後、鮭を加えてさらに3分ほど煮る。ボウルに酒粕と味噌を入れ、煮汁を適量加えて溶き伸ばし、鍋に戻し入れる。煮立ったら弱めの中火で5分ほど煮て、仕上げにしょうゆを加え、ひと煮立ちさせる。

ワンポイントアドバイス

ジャガイモは、煮崩れしにくいメークインがおすすめ。

鮭を湯通しすることで、臭みやアクを取り除きます。

野菜を下ゆでして、味を染み込みやすくしましょう。

仕上げに加える少量のしょうゆが、魚のクセを抑えます。

刻んだ万能ねぎを加えても、おいしく召し上がれます。

レシピ:ナカムラ チズコ

フードコーディネーター/栄養士/ワインアドバイザー/焼酎アドバイザー
調理器具や食材、酒類の販売などに携わり、食の企画会社に勤務後、独立。新聞、書籍、料理雑誌、Webなどのメディアで、スパイスカレーからスイーツ、お酒のつまみまで、ジャンルを問わず幅広いレシピを紹介している。おうちごはんが楽しくなるようなレシピを心がけており、特に身近な食材を使った「ごはんがすすむおかずレシピ」は好評を博している。

2021.02.03

食のコラム一覧へ