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- 12月 年越を迎えるためのしたく
年越を
迎えるためのしたく
年越は、新しく訪れる年を無事に幸せに満ち足りた年にするための力を授けにやってくる神さまをお迎えするためのしたくです。
去っていく一年をふりかえり、愛おしみ、別れを告げて新しくやってくる年に期待を込めて心新たにしようと誓う、そんな時間です。
年越、正月のしつらいやお供物は多様で松飾り、しめ縄、鏡餅などお迎えするための飾りには様々な意味があります。
たとえばしめ縄の意味は訪れてもらいたい場所を明らかにするための標、そして聖域であるということを知らせるためなどなど。
中でも注目したいのは良い力を招く福招きであるということと合わせて、邪気を祓うためのものでもあることです。
その根底にあるのは、年を越えて新年にやってくるものが福を招くものばかりではなく禍いを招くものもやってくるという考え方。
日々に、人生に訪れるのはよいことばかりではなく、そうではないこともあるという視座が古い時代にはありました。
そしてこうした考え方はお正月ばかりではなく、様々な行事に共通しているように見えます。
日本は神社仏閣やそれにちなむ祭りなどが数多くあり、合わせて家のまつりごと、年中行事の豊かな国であります。
その理由の一つが地震、火山、津波など自然災害が多い国だったから、という考え方があります。
この世には人間にはどうすることもできない力があるということ、そして同時に、自然は豊かな恵みを与えるものであることの両極性を体感し、感じてきたのが日本という国です。
ものごとを両面を見る、あるいは多方面から考えるという視点が古い時代から続く行事の根底に見え隠れします。
年越、正月などの一年の大きな節目はものごとを深く広く眺めていくための豊かなひと時です。多くの人が本当の福を授かる機会となりますように。
松迎え
お正月飾りにするための松の枝を見繕う。
お飾りにするまでの間は奉書で束ねて供えおく。
大切にして力を宿らせるためにその年に収穫した青藁でしめ縄を拵え結ぶ。
根付きのものは、よいことが根付くなどの意味合いを持たせたい時などに用いる。
「松迎え」は松に限らず、その土地で用意できる常緑のもの、たとえば椿、榧、栗、朴、榊などの場合も。
精麻のしめ縄
本麻とも呼ばれる照りのある精麻で、しめ縄を拵えて紙垂をさげる。
稲藁の垂れの部分に添えるのは古代稲の穂。
しめ縄は聖域な場であることのあかし。
よい力を招き避けたいものを寄せつけぬ力を持つかたち。
祝い松
松の大枝に餅花を結び、中ほどを奉書で包む。
照りのよい精麻をあわじ結びにして古い臼に立て床の間に。
長い年月かけた太陽の方へと向かう松姿。
厳しい冬にも常緑を保つ力に変わらぬ姿を保つ花、餅花を合わせて新しい年を迎えるためのお供えにする。
餅花飾り
今年収穫した香りのよい青藁で、しめ縄を拵えて藁の垂れをさげる。
さげた藁には小さな餅をつけて、花に見立た餅花に。
実りをつけた穂も結び、お正月の神さまをお迎えするための標の一つに。
古い藁と新しい藁の色合わせも行く年、来る年と掛けて。
二つの年の境界線で祈りを込める。
しつらいと文/広田千悦子 写真/広田行正
2023.12.04