今月のメインビジュアル
#03
明治生命館
Information
様式建築の粋を尽くした
歴史的建造物
お濠端に建つビル群の中でもひときわ目を引く“白亜の殿堂”。様式建築の最高傑作といわれるのが、「明治生命館」です。竣工は1934年。それまでは三菱二号館(旧明治生命館)があった場所に、新たに創建されました。激動の戦中戦後、高度経済成長期やバブルの時代をくぐり抜け、現在も社屋として使われるこの建物は、まさに歴史の生き証人。何度かの改修を経てなお当時の姿を保ち続け、1997年には昭和期の建造物として初の重要文化財に指定されています。
この明治生命館が最も映えるのは、お濠を挟んだ皇居外苑からの眺め。水面に白い影を落とす壮麗な外観は、一枚の絵のような美しさです。建物の5層分を貫く巨大なコリント式の列柱は、古代ギリシャ・ローマを源流とする古典主義様式を象徴する意匠。アカンサスの葉飾りをまとった柱頭も優美です。この繊細な彫刻を施すために、石材には粘りのある北木石(岡山県北木島産の花崗岩)が使われています。
美しいのは外観だけではありません。ひとたび中に足を踏み入れると、天窓から光が注ぎ込む2層吹き抜けの大空間に圧倒されます。あらゆるディティールが古典主義様式で構成された壁、床、柱などには、イタリア産ポティチーノクラシコをはじめとする各種の大理石が用いられ、ところどころにアンモナイトの化石を見ることもできます。この優雅でクラシカルな空間は、明治安田生命の店頭営業室(丸の内お客様ご相談センター)として今も現役で活躍しています。
明治生命館は、戦後GHQ(連合国軍総司令部)に接収され、米・英・中・ソの4カ国代表による対日理事会(ACJ)の舞台となったことでも知られています。その間162回にも及んだという会談が行われたのが、2階廻廊の会議室です。2階には他に食堂や応接室、健康相談室、資料・展示室などがあり、吹き抜けに面した廻廊にはブロンズ製の手すりが設けられています。この手すりは戦時中に金属回収されましたが、1956年の改修工事の際に当時と同じ形式に復元されました。
歴史的価値が高く、外から眺めているだけでもうっとりする明治生命館ですが、実は誰でも中に入ることができます。1階ラウンジは毎日10:00~18:00に開放され、土日11:00~17:00は店頭営業室を含む1階と2階が、そして水木金16:30~19:30は2階の一部が公開されているので、お時間のあるときにぜひ見学してみてはいかがでしょうか。荘厳な館内で非日常気分を味わえるだけでなく、創建時の記録映像や写真など貴重な展示も楽しめます。
2019.09.03