秋の夜長に星空散歩星座に秘められた神話の世界!秋の夜長に星空散歩星座に秘められた神話の世界!

秋の星空は、季節に合わせたように落ち着いた星々で飾られます。
星のまたたきは清らかで美しく、神話や伝説に登場する人たちの声が聞こえてくるかのようです。
秋の夜長を彩る星座たちを、それにまつわるギリシア神話とともに楽しんでみませんか。

天の川といて座 天の川といて座

旧暦の七夕(今年は8月28日)を過ぎて9月に入ると、夜8時ごろには天の川が頭の上から南の空に向かって流れるようになります。天の川の上方に見えるのは、はくちょう座のデネブ(写真上)、こと座のベガ(織り姫=右)、わし座のアルタイル(彦星=左)で、この三つの星で「夏の大三角」を描いています。
滝のように流れる天の川を地平線近くにたどると、上半身は人間で下半身が馬の姿をした、いて座に届きます。

[いて座にまつわる神話]

いて座の馬人ケイロンは音楽、医術、狩り、スポーツ、予言の術に優れた賢人で、医神アスクレピオス、豪傑ヘラクレス(星座名はヘルクレス座)、アルゴ船の探検隊長イアソン、トロイア戦争の勇将アキレウス(アキレス腱のアキレス)など、ギリシャ神話に出てくる多くの英雄を教育しました。
後にヘラクレスがケンタウロスの一族と戦ったとき、ヘラクレスが放った毒矢がケンタウロス族の一人、エラトスの腕を射抜いて恩師であるケイロンの膝に刺さってしまいます。ケイロンは不死でしたが、傷の痛みに耐えられず、不死の力をプロメテウスに譲り、死を選びました。
その死を悼んだ大神ゼウスは、ケイロンの姿をいて座として天上に飾ったと伝えられています。

夏の大三角といて座

北の空をめぐるカシオペア座 北の空をめぐるカシオペア座

秋になると、北の空高く見えていた北斗七星(写真左)は地平線近く低くなり、W字形のカシオペア座(右)が北東の空に昇り始めます。アラビアではカシオペア座を「ヘンナで染めた手」と呼びました。ヘンナはマニキュアなどの顔料で、爪を赤く染めたアラビア女性の指に見立てたもの。写真中央はこぐま座で、こぐま座の右端の星は北極星。

[カシオペア座にまつわる神話]

エチオピア王妃カシオペアは美貌の持ち主でしたが、「海のニンフ、ネーレイスたちより美しい」と自慢したためネ―レイスたちが激怒。彼女らの訴えを聞いた海の神ポセイドンがエチオピアの海岸に海魔を放ち、王国の民を苦しめ始めました。
ケフェウス王は困り果て、神に伺いをたてると「事件を解決するには、娘アンドロメダを人身御供にせよ」とのお告げがあり、アンドロメダは海岸の岩場に鎖で縛りつけられました。程なくして波間から海魔が現れ、アンドロメダ目掛けて迫ります。
あわや一飲み、というその時、天馬にまたがった勇士ペルセウスが舞い降り、退治したばかりのメドゥサの首を海魔に見せて大きな岩にし、アンドロメダを助けました。喜びに満ちた王と王妃は娘とペルセウスのために、祝宴を開きました。

そこへ部下を引き連れ、暴れ込んできたのが、叔父で許婚のピネウスでした。アンドロメダが海魔の人身御供になる時はそ知らぬふりをし、いざ助かると未練が出たのか「アンドロメダをかえせ!」と叫びながら乱暴を繰り返します。そこで、ペルセウスはピネウスらにメドゥサの首を見せて石にしました。こうしてペルセウスとアンドロメダは結婚し、幸せに暮らしたということです。

左から北斗七星、こぐま座、カシオペア座

水がめを担ぐ美少年 水がめを担ぐ美少年

みずがめ座はペガスス座の南(下)、やぎ座の北東(左)にあって、黄道11番目の星座として、古くから知られた星座です。バビロニア(現在のイラク)の境界石にも星座の原型が見られます。
みずがめ座の学名Aquarius(アクアリウス)は水男の意味で、星座では少年が肩に担いだ水がめから水がこぼれ出た形になっていて、水がめは「三ツ矢」と呼ばれる4つの星(写真上)で表されています。

[みずがめ座にまつわる神話]

神々はギリシャ北東のテッサリアとマケドニアの境のオリンポス山の山頂に住み、ゼウスの宮殿に集まってはアンブロシアという神食とネクタルという神酒で宴を行っていました。その際にゼウスと女神ヘラとの間に生まれた娘ヘベが神々の世話をし、お酌をしてまわったのですが、婚姻が決まりそれができなくなってしまいました。
そこでゼウスは大鷲の姿になって、最も美しい少年と言われるトロイアの王子ガニュメデスをオリンポス山に連れ去り、酒宴の席をまかせることにしたのです。
ゼウスはその褒美として、ガニュメデスの父親に見事な神馬(または、火と鍛冶の神ヘーパイストスが作った黄金のブドウの木)を与えましたが、息子と離れ離れになった寂しさを埋めることはできません。そこでその寂しい心を慰めるため、ゼウスはみずがめ座としてガニュメデスの姿を夜空に映し、遠く離れていても見えるようにしたといわれています。

みずがめ座

星空こぼれ話 星空こぼれ話

アンドロメダ銀河が銀河系と衝突!?

アンドロメダ銀河M31は冬の空に見えるオリオン大星雲M42と並んで、人気の高い渦巻銀河です。地球からの距離は230万光年なので、いま見ているのは230万年前の姿になります。広大な宇宙の広がりを感じますが、渦巻銀河では最も近距離にあります。

M31の見かけの大きさは満月を横に5つ並べたほどもあり、光度は4等級なので、空の暗い所であれば肉眼で淡く見ることができます。位置はアンドロメダの腰のあたりで、双眼鏡を使えば楕円形をした光芒が視野の中に広がり、その美しさはため息がでるほどです。

20世紀の初め頃までM31は銀河系の中にあるのか外にあるのか議論の的でしたが、1923年にアメリカの天文学者ハッブルが銀河系の外にある証拠を見つけました。M31は銀河系、さんかく座のM33、大マゼラン雲、小マゼラン雲などと局部銀河群というグループを形成し、その中で一番大きいのがM31です。

現在M31は銀河系に向かって接近中です。このまま進めばM31と銀河系は衝突し、巨大な楕円銀河になると考えられています。それはおよそ40億年後のことですが。

アンドロメダ銀河

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