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- 「しめ飾り」の意味と作り方
今年も残すところあとわずか。年明けの準備に追われている方も多いのでは?
お正月といえば、しめ飾り。歳神様をお迎えするために、「清浄な場所」の目印として玄関先に飾るものです。
でも、最近ではそんな光景を見ることも少なくなってきました。
「天岩戸」伝説に端を発するしめ縄・しめ飾りは、日本の稲作文化を象徴する伝統風習。
昔の人がどんな想いでしめ飾りを作っていたのかも、気になるところです。
そこで編集部一同は、しめ飾り作りプロジェクト「ことほき」さんのワークショップに参加。
自分たちの手で藁(わら)を綯(な)うことで、しめ飾りの魅力に触れてみました。
しめ飾り作りプロジェクト「ことほき」とは
「ことほき」は、クリエイターである鈴木安一郎さんと安藤健浩さんが、日本の民芸と稲作文化に魅了されて、2011年に立ち上げたしめ飾り作りプロジェクト。毎年11・12月に開催されるワークショップを通じて、しめ飾りの文化と作る楽しさを多くの人々に広めています。
もともと鈴木さんの実家では、12月になると父・博六さんがしめ飾りを手作りされていたそう。おふたりがその博六さんに師事し、御殿場のアトリエでしめ飾り作りを始めたのが1999年。
以来、自ら育てた稲そのものの姿を活かし、独特の美しいかたちに仕立てる「ことほき」のしめ飾りは、全国でも大人気。ワークショップでは、その貴重な素材を使ったしめ飾り作りを体験できます。
鈴木安一郎(すずき やすいちろう)
東京藝術大学 美術学部デザイン科卒 グラフィックデザイナー・アーティスト
女子美術大学・横浜美術大学・文教大学非常勤講師
平面作品を中心に個展およびグループ展での発表多数。現在ではギャラリーのアドバイザーを務め、国際展等の企画運営も行う。2010年には初の写真集「きのこのほん」を出版し、写真家としても活動。
安藤健浩(あんどう たけひろ)
東京藝術大学 大学院美術研究科修了 プロダクトデザイナー・アーティスト
女子美術大学非常勤講師(株)安藤健浩デザイン室主催
立体アートをはじめプロダクトデザイン、商用ディスプレイや空間デザインを手がける。
ことほきさんのしめ飾り作りは、春の田植えから始まります。自ら稲を育て、刈り取り、丁寧に乾燥させた稲藁を素材とすることで、心を込めて歳神様をお迎えするというわけです。
今回ワークショップで使用するのも、そうして大切に育まれた赤米という古代米の稲藁。食用米のものより長めの藁を使って、しめ飾りの代表的な型「玉しめ飾り」作りに挑戦します。
(1)しめ飾りには、稲がまだ青いうちに刈り取って乾燥させた藁を使います。
今回使う稲藁は、8月に刈り取ったもの。
乾いたままでは綯いにくいので、作業前に水に浸けて湿らせておきます。
(2)まずはしめ飾りの元になる「しめ縄」作りから。
約100本の稲藁を束にして持ち、トントンと軽く床で叩いて根元を揃えます。
底面がキレイに揃ったら、まずはビニール紐で束を仮止め。
次に根元から20センチの部分を長めの麻紐で巻き結び(巻くだけで強く結束できる結び方)し、紐の余った部分は根元にしまっておきます(この紐はあとで玉飾りに使います)
巻き結びした部分から藁を3つの束に分けて広げます。
ここできちんと3等分することが、美しいしめ縄に仕上げるポイントです。
(3)3本のうち、2本の束を綯え合わせます。
しめ縄の綯い方は、「左綯い」といって時計回りが基本。
通常の縄作りの右綯いとは逆にすることで、ひとつひとつの工程に心を込めるという意味合いもあるそうです。
先端20センチあたりまで綯え合わせたら麻紐で仮止めし、
できた縄のミゾに沿い合わせるように、3本目を巻いていきます。
(4)3本をより合わせたら、飛び出ている余分な藁をハサミでカット。
しめ縄を上からまな板で抑えてコロコロと転がし、縄目を均等にします。体重をしっかり掛けて均すことで、形の美しさだけでなく、つやも生まれます。
(5)しめ縄ができ上がったら、今度はいよいよ玉飾りの成形です。
しめ縄の先端を上にして、輪を作ります。大きさは、掛けるスペースや好みに応じて。コンパクトに仕上げたい人は、ぎゅっと絞り込みましょう。
輪の形が決まったら、最初に根元を縛った紐の余りで仮止めします。
(6)輪から垂らす赤米の稲穂を3束用意します。
小さいものなら稲穂一束、大きなものは5束使うこともあります。
稲藁を一束ずつ、縄目に入れ込んでいきます。
ここでは、安藤さんお手製の道具を使って縄目を広げやすくしていますが、それでもかなり力のいる作業。狭いスペースに3束となると、相当な力が必要です。
(7)3束の稲穂を差し込んだら、中心の位置や左右のバランスを確認します。
センターは、輪の結び目の真下に来るように。
3束の稲穂は、真ん中に対して左右の束をやや短めにしておくと、見栄えがよくなります。
位置が決まったら、麻紐でしっかり巻き結び。
長めの紐で縛って余らせておけば、あとで橙やユズリハ、裏白(正月飾りに使うシダ)などの飾りを追加する時に使えます。
(8)完成に向けて、形を整えていきます。
正面から見て、玉飾りの部分にひずみがあれば、輪の形を直します。
形がうまく決まったら、輪を仮止めしていた麻紐でしっかり巻き結びしましょう。
(9)最後に、根元の先端をハサミで切り揃えます。
全体を見渡して、余分な稲藁が飛び出ていたら、それもカット。
(10)首の部分に、玄関に掛ける際の吊り元となる荒縄を巻いたら完成。
3時間かけて、立派な玉しめ飾りができあがりました!
できあがったしめ飾りを前に、ことほきのお二人にあらためてお話を伺いました。
「主にデザインや美術の仕事をしている私たちですが、“しめ飾り”作りを始めて、藁を綯うという一つの手作業からなる造形の面白さに惹かれ、日本の稲作と手仕事の文化の深さに大いに魅せられました。
食することと生きることがまた次へ繋がって行くことへの祈りを込め、毎年“しめ飾り”を作るうちに、自然の恵みに感謝し日々の営みを大切に思う気持ちが、いっそう強いものになりました。
そして今では私たちにとって“しめ飾り”作りは、ものつくりの原点を見つめ直すとともに新たな気持ちで次の春を迎えるために、なくてはならない大切なものになったのです。必要以上に華美でなく、稲本来の姿を活かし、凛として、清い気持ちで春を迎えるにふさわしい、美しい“しめ飾り”を作り続けていきたいと思います。」
2018.12.04