- トップページ
- 個人のお客様
- 三菱電機 CME(CLUB MITSUBISHI ELECTRIC)
- 暮らし・趣味
- 暮らしのコラム
- 捨ててしまう前に。野菜でできる草木染
天然の染料で布などを染める「草木染」。
藍染などが有名ですが、身近な野菜を染料にすることもできます。
今回は、染料ブランド「みやこ染(みやこぞめ)」の引地貴子さんと田代斐音さんから、
アボカドを使った草木染のコツについて伺いました。
フードロス削減にも役立つ野菜を用いた草木染を、ご家庭でも実践してみませんか。
布やプラスチックなどに使う染料には、化学染料と天然染料、ふたつの種類があります。天然染料は、文字通り花や野菜、樹皮、根茎、鉱物、虫といった自然のものから作られた染料のこと。これを使った染め方が「草木染」です。タデアイの葉を使った藍染や、茜の根を使った茜染などが有名ですが、玉ねぎやアボカド、栗、くるみといった身近な食材も染料になります。
草木染の魅力のひとつが、自然由来のやさしい色合いに染まることです。同じ素材を使っても色に違いが出るところも天然染料ならでは。濃く染まると思っていたのに案外淡い色合いだった、思っていたより鮮やかに染まった、ということも珍しくありません。完成するまでどの程度色づくかがわからないところに、草木染の奥深さがあります。洗濯や乾燥によって色落ちすることから、経年変化を楽しめるのも草木染の面白みです。
今回ご紹介するのは、アボカドを使った草木染。ハンカチを染める基本の手順をご紹介します。アボカドはスーパーで手軽に手に入る上に美しいピンク色に染まるのが特徴です。本来であれば捨ててしまう皮や種などを有効活用できるため、環境に配慮していることも利点として挙げられます。
【材料】
- 綿ローンハンカチ 約14g 1枚
- 輪ゴム 2~3本
- アボカドの皮と種 約70g(アボカド2個分)
※アボカドを食べた後の皮と種は、たまるまで冷凍してストックしておきましょう。※種も使うことでより濃く染まります。 - 鍋またはボウル
- 無調整豆乳 約200ml
※調整豆乳だと、色の定着に必要な植物性タンパク質の含有量が少ないため、成分無調整のものを選びましょう。 - タオル
- お茶・だし用パック
- 菜箸
- 焼きミョウバン 約0.7g(布の重さの5%)
※スーパーの漬物コーナーなどで手に入ります。 - アイロン、あて布
- 秤
アボカドの下処理を行います。実の部分が残っていると色づきが悪くなるので、できるだけ取り除いておきましょう。アボカドの皮と種は可能な範囲で細かく刻んでおくのもポイント。こうすることで、色が出やすくなります。
続いて、ハンカチの重さを量ります。新品のハンカチには糊がついていたり、使用済みのハンカチだと汚れがついていることがあるので、洗濯して糊や汚れを落としてから使います。輪ゴムで縛った部分は染まりにくく、白い円状に残るので、ハンカチのお好みの位置を輪ゴムで縛りましょう。輪ゴムから飛び出す布の範囲が大きいほど大きな円ができます。輪ゴムは固めに縛るのがおすすめです。はっきりとした白い模様を作れます。
焼きミョウバンを水750mlに溶かしておきましょう。ミョウバンの液は「媒染液」と呼ばれ、ミョウバンの中に含まれるアルミニウムには染料と繊維を結びつける働きがあります。ミョウバンに限らず、金属を含んでいれば媒染に用いることができます。アルミを使うと鮮やかに、鉄だと暗めの落ち着いた色合いになるのが特徴です。
豆乳と水を1 :1 の割合で混ぜましょう。量はハンカチが浸かる程度に、温度は常温で問題ありません。ハンカチを入れ、時折ひっくり返しながらよく揉みこみます。布が重なっている部分は箸でつまんでていねいに開きながら、全体に液を浸透させましょう。20分浸したら固く絞り、タオルなどで水気をとって乾燥させます。
続いて染色液を作ります。鍋またはステンレス製のボウルに水を約750ml(布の重さの50倍)入れ、刻んだアボカドの皮と種をお茶・だし用パックに入れて火にかけ、沸騰させます。液量が減ってきたらその都度お湯を足しながら30分煮だし、パックを取り出します。この時点でお湯が減っていたら再び750ml程度になるまで足しましょう。
抽出液を火にかけ、沸騰したら布を鍋の中へ。菜箸などで撹拌しながら、20分間沸騰させます。ここでもお湯が減ってきたらその都度水を足しましょう。染め液から出し、絞らずにそのまま媒染液に入れます。時折かき混ぜながら、さらに20分間浸します。ここまでで染色の工程は完了です。
布を鍋から取り出して乾かします。アイロンで乾かす場合は、先に輪ゴムを外しましょう。輪ゴムを固く結んでいて外れにくい場合はハサミで切りますが、布まで切ってしまわないように。アイロンを使わずに、自然乾燥させても構いません。自然乾燥させる場合は輪ゴムをつけたまま干すのがポイント。完全に乾かしてから輪ゴムを外すことで、くっきりとした模様が保たれます。
完成品がこちらです。煮出したり干したりと、手間暇かけて作った草木染のアイテムは、ずっと大切にしたくなるはず。フードロス削減にも貢献できる野菜を使った草木染を、ご家庭でも楽しんでみてはいかがでしょうか。
2024.03.04
みやこ染
引地貴子(ひきち・たかこ)さん(左)、
田代斐音(たしろ・あやね)さん(右)
東京・日本橋生まれの染料ブランド「みやこ染」が運営する、染色体験スペース「somenova(そめのば)」。ここでは日頃から、染色の楽しさを発信しています。「染色は最初こそ少しハードルが高く感じるかもしれませんが、一度体験していただくと案外簡単にできるもの。染色の素晴らしさを、多くの方に知っていただけたら」と引地さん。「ものを“彩る”という作業を通じて、明るい気持ちになれる」といったお客さんからの喜びの声が、引地さんと田代さんの原動力です。