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これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』 これだけは知っておこう、『中学⽣からの環境⽤語』

脱プラスチック 脱プラスチック

自然界で分解されにくいプラスチックが海に流れ出し、海流や波、風によって世界の海に広がり、海の生態系に大きな影響を与えている問題が世界で注目されています。鳥や動物、海洋生物がプラスチックを食べてしまったり、身体にからみついて自由を奪うなど生物への相次ぐ被害、そして小さくなったマイクロプラスチックは、魚を通じて私たちの身体にも入ることも懸念されています。

この生態系への問題に加え、中国をはじめアジアの国々が他国から受け入れていた廃プラスチックの輸入を停止するなど、行き場のない廃プラスチックの問題を背景に、世界的にプラスチックを使わない、捨てない社会を目指す動き「脱プラスチック」の動きが加速しています。

プラスチックを廃棄物にせず循環して再利用することは「サーキュラーエコノミー」のひとつですし、SDGsのゴール12「つくる責任つかう責任」やゴール14「海の豊かさを守ろう」の目標にも関わります。

*この記事は2019年8月の情報を元に掲載しています。

イラスト:マイクロプラスチック

海洋に投棄されたプラスチックゴミがマイクロプラスチックとなり、食物連鎖を通じて多くの生物に取り込まれる

2050年には海の中のプラスチックの量が魚を超えるって本当? 2050年には海の中のプラスチックの量が魚を超えるって本当?

「世界では少なくとも毎年800万トンものプラスチックごみが海に流出している」*1と言われています。最も多いのが、食品の容器、レジ袋などいわゆる「使い捨てプラスチック」です。プラスチックの生産量はここ50年で20倍に増えています。

2019年、フィリピンで打ち上げられたクジラの死体から、重さ計40キロにもなる大量のプラスチック袋が見つかりました。また、「海洋プラスチックは800種を超える生物に影響を与えており、毎年100 万羽の海鳥、10万匹の海棲哺乳類、ウミガメ、そして無数の魚が、プラス チックの影響により命を落としている」*2といわれています。海洋生物に深刻な影響を与えるプラスチックゴミの実態がわかります。

イラスト:亀

現在世界の海に漂う海洋ごみの量は、総計約1億5,000万トンに達しているといわれます。「このペースで進めば、 2050年には魚よりプラスチックごみの量が多い海になる」*1ことが予測されています。また、日本近海でのプラスチック汚染も明らかになってきており、「日本近海でのマイクロプラスチックの濃度は世界平均の27倍にも相当する」*3という調査結果もあります。日本の食にも大きな影響を与えかねない問題なのです。

*1: 環境省 令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書
第1節 プラスチックを取り巻く国内外の状況と国際動向
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/r01
/html/hj19010301.html

*2: WWFジャパン「海洋プラスチックごみについて考えよう」
https://www.wwf.or.jp/activities/
data/20200710wildlife02.pdf

*3: WWFジャパン「海洋プラスチック問題について」
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/
3776.html

EU、カナダ、インドも。使い捨てプラスチック禁止の国が続々 EU、カナダ、インドも。使い捨てプラスチック禁止の国が続々

深刻なプラスチック汚染の問題を解決しようと、世界の国や企業が対策を始めています。すでに60カ国以上が禁止または課税するという形で、使い捨てプラスチックを減らすための対策を講じています。

たとえば、EUでは2030年までに使い捨てのプラスチック包装を全面禁止にすることを決め、フランスではすでにプラスチック包装材やプラスチックのカトラリー(ナイフ、フォークなど)、マイクロビーズ*1の入った化粧品の販売を禁止するなど厳しい規制をしています。パリのマルシェでもマイバッグや容器を持っていないとお買い物ができません。カナダも早ければ2021年までに使い捨てプラスチックを禁止すると発表。インドではほとんどの州で使い捨てプラスチックの使用を禁止し、これに反した場合は罰金刑や刑事罰が科されることがあります。

イラスト:パリのマルシェ
パリのマルシェで買い物かごを持ってお買い物

日本の状況はどうでしょうか。政府は2030年までに使い捨てプラスチックを25%減らすという案を出し、2020年7月からはスーパー、コンビニの買い物袋の有料化が決まっています。

企業ではアメリカの飲料大手メーカーやスウェーデンの衣料品大手メーカー、フランスの化粧品大手メーカーなど約250の企業や団体が2025年までにプラスチックごみをなくす共同宣言をし、国内衣料品大手メーカーがプラ製買い物袋を2019年9月から使用を中止すると発表するなど、多くの企業が使い捨てプラスチックを減らす取り組みに着手しています。今まさに官民あげて脱プラスチックの問題に立ち向かおうとしているのです。

*1: 直径が0.5ミリ以下のプラスチック粒子

プラスチックゴミから生まれる製品たち プラスチックゴミから生まれる製品たち

プラスチックゴミをこれ以上出さないために私たちはどうしたらいいでしょうか。まず大事なのはなるべくプラスチックを使わない、使い捨てにしないことです。エコバッグを持って買い物に行く、ペットボトルではなく水筒を使う、ビニール袋も再利用したり、飛散させないように注意するなど身近なことから始めたいものです。

最近では海から回収したプラスチックゴミを使って、製品を作る取り組みが進んでいます。欧州スポーツ用品大手メーカーではスポーツシューズを、北米コーヒーチェーンは水筒を、そのほか、衣類を廃プラスチックで作るメーカーもあります。

たとえば、サッカーチームとして有名な英国のクラブチームは海から回収した廃プラスチックからユニフォームを作りました。英国サッカーのプロリーグは加盟するチームが協力してスタジアムで使われるプラスチック容器やビニール袋も削減しています。プロリーグファンにも脱プラスチックを積極的に働きかけたいという想いからです。