サーキュラーエコノミーは今までのような資源を消費して廃棄するという一方向の経済と違って、消費された資源を回収し再生、繰り返し再利用することで、さまざまな資源をビジネスと結びつけ、社会課題を改善する循環型経済のことです。
サーキュラーエコノミーのビジネスモデルには、大きく分けて「原材料の無駄をなくす」「製品の回収」「製品寿命の延長」「物・サービス・場所などを、多くの人と共有・交換して利用するシェアリング」「サービスとしての製品利用」の5つがあります。「原材料の無駄をなくす」は、原材料を100%再生可能なものに変えていくことです。これは廃プラスチックを使った製品なども含まれます。
「製品の回収」は、これまで廃棄されたものを、他の用途に活用することを前提にした生産・消費モデルです。たとえば、コーヒーチェーンが出す膨大なコーヒーかすを捨てないで肥料や飼料、また燃料として利用することもサーキュラーエコノミーと言えます。従来の「リサイクル」とは違い、製品を設計する段階から「修理できるか、耐久性があるか、再資源化できるか」を考える点が特徴です。
*この記事は2019年8月の情報を元に掲載しています。
欧米では、資源の問題やリサイクルを環境問題として考えるのではなく、経済や社会の土台にして据えようと動き出しています。つまり、廃棄物はゴミではなく資源であり、そこからビジネスを作り出せるという考え方です。
EUでは早くから経済成長戦略の一つとして位置づけられ、2015年に欧州委員会が採択した「サーキュラーエコノミーの実現に向けた政策」では、廃棄物のリサイクル率の将来目標とともにサーキュラーエコノミーの実現に向けた行動計画が示されています。
欧州の中でも積極的にサーキュラーエコノミーを進めているのが、オランダのアムステルダムです。市の政策としてもいち早く取り入れ、再生素材を使う、フードロスを半減させる、化石燃料を減らすなど2050年までにサーキュラーエコノミーを確立することを目指しています。
たとえば、アムステルダムでは一流シェフがスーパーの廃棄食品を調理し、提供するレストランがあったり、廃船をベースにした住宅の建築など、ユニークなビジネスモデルが進行中です。
サーキュラーエコノミーでは、「シェアリング」、つまり使用していない製品や場所、サービスの貸し借り、共有などによって新たなビジネスを作り出すことも含まれます。自分の家や空いた部屋を貸し出す民泊、一般のドライバーが空き時間と自家用車を使ってタクシーのようなサービス業態もこの分野に入ります。
また必要なときにだけ借りる、利用した分だけのサービス料を支払うといった「サービスとしての製品」というビジネスモデルもサーキュラーエコノミーのひとつ。これには登録を行った会員間で特定の自動車を共同使用するシステム「カーシェアリング」、洋服やベビーグッズなどのレンタルサービスなども含まれます。
いらなくなったものをその製品を必要な人に販売することで「製品寿命の延長」を行い、ビジネスとして循環させるオークションサイトなどもその一部と言えるでしょう。
新しい考え方のように思えるサーキュラーエコノミーですが、日本ではその見事な見本が江戸時代にありました。
たとえばお米について見てみましょう。稲を収穫した後の葉と茎は乾燥させて藁(わら)として、一部は直接燃料や肥料に、家では藁ぶき屋根の材料となり、ぞうりや敷物、蓑(みの)、納豆作りなど家庭で使うさまざまなものに利用されました。燃料として燃やした後の灰も無駄にはしません。染料や研磨剤、陶磁器の原料としても使えるので、簡単に売ることができました。もちろん、畑や田んぼにもまいて肥料にし、それを使ってまた新しい稲を作ります。
さらに、お米を脱穀した後のもみ殻は枕の詰め物などに、精米した後のぬかは、漬物の材料や、肥料、床を磨くのにも使われました。このようにあらゆる副産物が余すことなく利用され、循環した経済、社会が作られていました。これはお米だけに限りません。住宅も再生可能な材料だけで作られ、木材は建材、薪や炭に、家具や家庭用品に使われ、最後は灰になっても売ることができました。そう、実は日本は自然と共生したサーキュラーエコノミーの先進国だったのです。