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読む宇宙旅行

2011年12月 vol.02

「人類初の宇宙飛行」から半世紀を超えて

 1961年4月12日、人類が初めて宇宙に飛び立ってから50年。ガガーリンが飛び立った発射台は今も使われ、打ち上げ前の立ち小便の儀式は今も行われているという。そうした変わらない景色がある一方で、人類の宇宙への挑戦は今年、大きな変化を見せた。世界の有人宇宙開発の話題を振り返ってみよう。

●スペースシャトル引退

7月21日、最後の飛行を終えたスペースシャトル・アトランティス号。(提供:NASA)

7月21日、最後の飛行を終えたスペースシャトル・アトランティス号。(提供:NASA)

 2011年ビッグニュースの筆頭にあげられるのがスペースシャトルの引退だ。1961年の初飛行はガガーリンが打ちあがったのと同じ4月12日。30周年の今年7月9日(日本時間)の135回目の打ち上げ(アトランティス号)が最後の飛行となり、ISSでは古川聡宇宙飛行士が出迎えた。古川飛行士はスペースシャトルの訓練を行ったにも関わらず、搭乗できなかったことを残念がっていたが、ドッキング中、ちゃっかり機長席に座らせてもらったそうだ。よかったね!スペースシャトルは30年間で16カ国355人を宇宙に運んだ。2回の痛ましい事故もあった。総飛行距離は約8億7千万km。.引退したスペースシャトルは 博物館などに展示されることが決まっている。ディスカバリー号はワシントンD.C.郊外のスミソニアン航空宇宙博物館別館、エンデバー号はロサンゼルスのカリフォルニア科学センター、アトランティス号はフロリダ州のNASAケネディ宇宙センターの観光施設だ。

●ロシア プログレス宇宙船打ち上げ失敗

 8月24日、バイコヌール宇宙基地からISSに物資を運ぶプログレス貨物船がロケット第3段のトラブルで打ち上げに失敗した。同型のエンジンは1400回以上の飛行実績があり、ISSへの貨物便も43回失敗がなく、「信頼性の高さ」は誰もが認めていた。なのに、まさかの失敗。宇宙飛行士を打ち上げるソユーズロケットと第3段が同じ設計であるために、失敗が続けばISSが無人になることも考え準備が進められた。「古川飛行士らにとって衝撃は大きかったはず」とJAXA関係者は言う。その後、プログレス貨物船が打ち上げに成功し、9月末打ち上げ予定だった3人の宇宙飛行士達は、11月14日にようやく打ち上げられた。 だが、ロシアはISS関連以外でも打ち上げ失敗が相次いでいる。「後継者不足」がロシア宇宙開発の現場で深刻な問題になっていることが一因と言われている。

●古川聡宇宙飛行士 日本人最長の宇宙滞在記録達成!+日本人飛行士のこれから

12月15日、ISSから帰還した古川聡宇宙飛行士(右端)たち。スターシティのガガーリン像前で。(提供:NASA/Carla Cioffi)

12月15日、ISSから帰還した古川聡宇宙飛行士(右端)たち。スターシティのガガーリン像前で。(提供:NASA/Carla Cioffi)

 この話題は何度もお伝えしているので簡単に。古川宇宙飛行士が167日6時間14分という日本人最長宇宙滞在記録を達成。そして日本人の宇宙滞在のべ日数は615日間とロシア、米国に続き第3位になった。1月にはリハビリを終えて帰国予定で、お話しを聞けるのが楽しみ!そのほか、日本人宇宙飛行士の様々な話題があった。若田光一宇宙飛行士が2013年末からの飛行で日本人初の船長の大役を担うことが決定。また、宇宙飛行士候補者に選ばれてNASAで訓練を受けていた、油井亀美也、大西卓哉、金井宣茂の3人が7月末に正式な宇宙飛行士に任命された。ポストISSを担っていく飛行士達だ。一方、8月末には山崎直子飛行士がJAXAを退職。10月には二人目のお子さんを出産した。宇宙飛行士も職業の選択肢の一つ。これから宇宙飛行経験を活かし、どのような道を歩むのだろうか。

●中国、独自の宇宙ステーションへ着々と

 11月3日に中国は神船8号と天宮1号(どちらも無人)のドッキング実験に成功した。神舟8号には宇宙飛行士のダミー人形が乗っていて心拍数や血圧などのデータを地上に送ってきたという。今後天宮1号はそのまま宇宙を周回し、神舟9号、10号とドッキングをする予定で女性宇宙飛行士が搭乗するとも言われる。中国は2020年までに宇宙ステーションを完成させるという目標を掲げている。アジア人宇宙飛行士に宇宙ステーションを開放するという中国宇宙関係者もいるとか。着実に有人宇宙飛行の駒を進める中国。その真の目的は何か、世界が注目している。

●火星への模擬飛行、MARS500終了

520日間の火星模擬飛行「MARS500」実施中の6人の宇宙飛行士達。モスクワ郊外の医学生物学研究所で。(提供:ESA)

520日間の火星模擬飛行「MARS500」実施中の6人の宇宙飛行士達。モスクワ郊外の医学生物学研究所で。(提供:ESA)

 モスクワ郊外の医学生物学問題研究所(IBMP)内の隔離施設で、2010年6月3日に打ち上げられた(?)模擬火星ミッション。2011年2月2日に火星に到着、宇宙服に身を包んで火星に降り立ち、船外活動も行った。2011年11月4日、520日間の飛行を終えて地球に帰還。仮想宇宙船内ではスケジュールに従い生活しつつ、100種類以上の実験を管制センターと交信しながら行った。クルーはロシア人3人、イタリア人一人、フランス人一人、中国人一人。(日本にも実験参加のお誘いがあったらしい!)。この面子、実際の火星有人飛行のメンバーに限りなく近いかもしれない。

 宇宙進出半世紀を終えた今、物足りないのは「今後のミッション」が不透明なことだ。人類全体がどこを目指すのか、ポストISSの目標がはっきりしていない。国際宇宙探査協働グループ(ISECG)では日本や中国も含めた世界の14機関で火星や小惑星、月がターゲットとして議論されている。道しるべを具体的に明示することが急がれる。宇宙開発は「ピークを高く、裾野を広く」進めるもの。裾野を広げる意味では、2012年2月打ち上げ予定のスペースX社のドラゴン貨物船は注目だし、ヴァージン・ギャラクティックの初飛行も待ち遠しい。もちろん日本の宇宙船「こうのとり」は2号機の成功に続き3号機の成功も当然のように期待されている。そして星出彰彦飛行士のISSへの打ち上げは初夏に予定。2012年は次の半世紀に一歩を踏み出すとき。人類はどこに向かうのか。「宇宙と人との関わり」に目が離せませんね。