2010年3月 vol.2
女性は宇宙に向いている!?
山崎直子宇宙飛行士が4月5日、いよいよ宇宙に飛び立つ。日本は「竹取物語」(日本最古のSF)で、かぐや姫が月と行き来するという先進的な話を生んだ国。山崎飛行士のチームには合計3人の女性飛行士がいて、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の女性飛行士を加えると、4人の女性が宇宙にいることになる。しかも皆ロングヘアーで美人!。
3月10日に行われたシャトルミッション打上げ前恒例のケーキカットセレモニー。山崎飛行士を入れて女性が3人。右から4人目は元高校教師のリンデンバーガー飛行士。NASAは教師からも宇宙飛行士を募集している(提供:NASA)
女性という点で注目なのは、宇宙飛行士ばかりでない。たとえばISSを見守る管制官。先日、日本初の女性フライトディレクター松浦真弓さんに某取材で話を伺った。つくばからISS日本実験棟「きぼう」を24時間365日見守って、宇宙飛行士の作業が効率よく進むよう指示を出し、緊急事態には命を救う管制チームのリーダー。松浦さんは2000年頃、NASAに修行に行った草分け的存在だが、今や管制チームには約30名の女性が活躍しているという。中には小さいお子さんを育てながらの方も。
「女性って管制官に向いているんですか?」と聞くと、「女性や男性の区別はなくて個人差だとは思うけど・・」と前置きした上で「たとえば宇宙船の中は実験道具や生活用品で散らかりがち。そういう点に気がついて、整理整頓の時間を飛行士のスケジュールに組み込むなど細かい配慮をするのは女性が得意かもしれない」。この答え、共感できる!
宇宙飛行士や管制官は「マルチタスク」、つまり複数の仕事を同時にこなす能力が求められる。複数の実験を進行しながら、トイレ修理をし食事の準備、日本上空を通過するときのシャッターチャンスは待った無し。自分の日常を振り返ってみても、原稿締め切りや取材があってもゴミ出し、子どもの学校行事、振り込みなど、些細なファミリービジネスが同列に時間の中にくいこんでくる。家族の病気という緊急事態(!?)に備えて日頃からサポート体制も構築しておかないといけない。ISSの運用段階に入った今、そういう雑事や気配りに日常的に慣れ親しんでいる女性って、宇宙の仕事に向いているかもしれないなぁ。(私はすぐパニックになるのでダメだけど・・)
もう一つ、若田飛行士から聞いた話で印象的だったのは、「宇宙で仕事がうまくいかないときもキャプコム(交信担当の管制官)が「大丈夫」と言ってくれると安心できる」ってこと。NASAにはシャノン・ルシッドというベテランのキャプコムがいる。ロシアの宇宙ステーション・ミールに米国人で初めて長期滞在した元宇宙飛行士だが、彼女はどんな事態にも動じない。「まさに肝っ玉母さんです」(若田さん)。こうした包容力も女性ならでは、かもしれない。
日本人初の宇宙飛行士、向井千秋さんも山崎飛行士も「女性男性の区別は感じない」というが、逆に言えば「女性が行って当然」という考え方。今、地上では「ダイバーシティ(多様性)」というキーワードが大流行で、まず女性を積極的に活用しようとしている。もちろん性別だけでなく国や民族、宗教、年齢、職業など様々な点で異なる背景を持つ宇宙飛行士が、違いを自覚した上で宇宙でも地上ともチームワークを作りあげていく。そんな点にも注目したい。