DSPACEメニュー

読む宇宙旅行

ライター 林 公代 Kimiyo Hayashiライター 林 公代 Kimiyo Hayashi

あなたが名づけた惑星に生命が発見されるかも—惑星に名前をつけよう!

太陽以外の恒星の周りに、初めて惑星(51 Pegasi b)が観測されたのは1995年のこと。それからちょうど20年。これまでに1880個以上もの惑星が発見されている。中には地球のように岩石できている惑星や、表面に液体の水が存在すると推測される「ハビタブルゾーン」(生命居住領域)内の惑星も発見されている。「あの星に生命がいる!」という大発見は、カウントダウン状態にあると言っていい。ところが現在、惑星には「51 Pegasi b」とか、「HD 104985 b」など記号があるだけで、味気ない。何より覚えられない!名前ってとても大事なのです。

そこで、世界の天文学者が作る国際天文学連合(IAU: International Astronomical Union)は、「系外惑星系の命名キャンペーン」をスタート。日本天文協議会も手厚くサポートしている。6月1日までに団体登録を済ませれば、6月15日締め切りの名前の提案に参加できる。その後それらの名前から、一般投票が始まる。そして今年8月のIAU総会で正式決定というスケジュール(4月28日時点の情報)。ぜひ、この命名キャンペーンに参加してみませんか?

東京工業大学の佐藤文衛准教授おススメの系外惑星。岡山188cm望遠鏡でおうし座のヒアデス星団イプシロン星に発見した巨大惑星epsilon Tauri b(想像図)。星団での発見は世界初となった。(提供:国立天文台)

日本天文協議会が作成した専用ウェブサイトには、命名の対象となる20の惑星系のリストが掲載されている(下記参照)。日本の研究者が発見した惑星系が7つもあるのは嬉しい。どの惑星系に名前をつけるか迷ったときは、「太陽系外惑星についての追加情報」の頁を見ていただきたい。地球型の惑星、ハビタブルゾーンにある惑星、実際に系外惑星を発見した日本の天文学者のおすすめ惑星系、などさまざまな情報が掲載されている。日本から肉眼で見える惑星系などもあって、このページを見るだけでも、多様な惑星系が発見されていることがわかり、楽しくなる。

さて、実際に名前を提案するにはどうしたらいいのだろうか。まず、IAUの専用ウェブサイトから団体登録をする必要がある。非営利の「天文に興味がある団体」か「会員制のネットワーク上の団体」が名前提案の参加資格があるが、日本天文協議会の団体登録ガイドページ(下記参照)によると、「天文や宇宙にまじめな関心を持っている団体ならば幅広く受け付ける」とのこと。たとえば「星好きママさんバレーグループ」の団体登録例があげられている。「星好き」という共通項があれば、ママさんバレーもOKなわけですね!ほかにも「月や星を対象とした和歌俳句の会」や「ロケットマニアの会」などもありと書かれている。

ただし、登録には専用のウェブサイトを持っていることや、過去の活動事例を報告する必要がある。それらのサポートも日本天文協議会がしてくれるというから、至れり尽くせり。どんな団体が登録しているかもサイトから見ることができるが、全国の科学館や学校の天文クラブだけでなく、「宇宙作家クラブ」や高校生に向けて宇宙フリーマガジンを制作する大学生団体「TELSTAR」なども登録されていた。

「TELSTAR」の西尾さんに登録の理由を伺うと、「本誌5号のニュース記事として系外惑星の命名を取り上げました。その流れで『天文に関係する団体が名前を提案できるなら、自分達も考えてみよう』と団体登録を行いました」とのこと。

だが、メンバーは全国に散らばっている。西尾さんも愛知県在住だ。どうやって名前を決めるのだろう?「首都圏のメンバーにはミーティングの議題の一つとして協議してもらい、遠方のメンバーにはオンライン上で提案してもらって、その中から選ぶつもり」だそう。どんな名前をつけたいかについては、「単純に多数決で決めるよりは、世界に向かって胸を張れるような、由来がきちんとあり皆が納得できるものを選びたいと思っています」と意気込みを語ってくれた。様々な専門をもつ大学生が議論の結果、どんな名前を提案するのか、とても楽しみだ。

系外惑星命名キャンペーン ポスター

一般投票は個人もOK

それでも団体登録はちょっと億劫・・という方へ。最終決定には個人でも参加ができます!6月ごろには各国から提案された名前の中から、個人による投票が始まる。世界中からの投票結果をもとにこの夏、IAUが最終的な名前を決定することになっている。

国立天文台の縣秀彦(あがた ひでひこ)准教授は近著「地球外生命体—宇宙と生命誕生のなぞに迫る」でこの命名キャンペーンにふれ「自分の名づけた系外惑星に、もし生命が発見されたらと思うと、胸がドキドキしてきませんか?」と呼びかけている。

本書によると紀元前4世紀、古代ギリシャの哲学者エピクロスが「私達がこの世界で目にする生き物は、どこの世界にも存在していると考えるべきである」という内容を書き残しており、地球のみが宇宙で特別な星ではないという思想をくみ取ることができる、とのこと。数千年も人類が抱き続けてきた思いに、天文学者が決着をつける日は近い。縣准教授によると「日本は系外惑星に関する天文学者、研究者も多いし、一般の方の関心も高い」とのこと。ならばなおさら、系外惑星に日本が提案した、すてきな名前をつけたいですね。