Vol.136
秋の夜長にのんびりとした流れ星を眺めよう
秋の夜長、星を眺めるには透明度も高くなってよい季節である。そんな秋の星空を眺めていると、のんびりとした流れ星に出会えるかもしれない。もともと、天の川が見えるような夜空では、どんな時期でも流れ星は必ず現れるものだが、秋になると流れ星の数も一般に増えていく。大規模ではないものの、小さな流星群が常に複数が活動しているような状況だからだ。
その流星群の代表が10月末から11月半ばまで出現する、おうし座流星群である。東からのぼってくる冬の星座、おうし座に放射点(群に属する流星が、放射状に飛び出してくるように見える天空上の一点)がある流星群だ。正確に言えば、おうし座流星群は単独の流星群ではない。正式には「おうし座南流星群」「おうし座北流星群」というふたつの流星群の総称である。10月、11月を中心に、9月から12月くらいまで幅広く活動するとされており、前者の極大は10月10日頃、後者の極大は11月12日頃とされている。最近、この南北だけでなく、もっと別な支流がありそうだ、という研究結果も発表されていて、その意味では全容が解明されたわけではない。
ただ、いくつも分枝があるからといって出現数が多いわけではない。極大時期であっても、南北どちらも一時間あたり、せいぜい数個という出現数に過ぎない。数はそれほど多くない、小さな流星群といってよいのだが、実はよく目立つ流星群である。というのも、火球と呼ばれるような明るい流星が多く、しかもゆっくり、のんびりと流れるので、目につきやすいからである。
流星というのは、小さな砂粒が地球に飛び込み、上空100kmほどの場所で大気との摩擦で発光する現象である。もとになる砂粒の大きさは1mmから1cmときわめて小さい。小さな砂粒でも、かなりのスピードで地球に突入するために、明るく輝き、燃え尽きるのである。おうし座流星群の場合は、その砂粒が他の流星群に比べると大きいために、ひとつひとつが明るく輝く。
また、流星のスピードは、どの方向から地球に衝突してくるか、そして砂粒がどのように動いているかによって決まる。地球が公転する運動の方向とは、逆向きに突入してくる砂粒の場合は、いわゆる正面衝突型となる。地球の公転速度に、砂粒の公転速度が加わるので、スピードの速い流星となる。正面衝突型の典型例は11月中旬に出現する、しし座流星群で、秒速70kmにも達する。一方、地球の公転する運動の方向と同じような方向に動いている砂粒が流星となる場合は、いわゆる追突型となって、スピードは遅くなる。10月りゅう座流星群の秒速20kmというのが、その例である。おうし座流星群の場合、そのスピードは10月りゅう座流星群ほどではないものの、秒速30kmほどと、かなり遅めである。流星群になる砂粒は、もともと彗星(ほうき星)が、まき散らしたものだが、おうし座流星群の母親は周期3.3年ほどのエンケ彗星(2P/Encke)。この彗星は、地球とほぼ同じ方向に動いている。そのため、放出された砂粒が地球に衝突してくるときにも、いわゆる追突型となるのだ。
こうした理由で、おうし座流星群の流星は、明るい流星がゆったりと流れるのが特徴となっている。流星は一晩中流れるのだが、放射点が高くなる時間帯、11月で言えば午後9時以降が観察には好条件である。秋の夜長、のんびりと流れるおうし座流星群の流星を眺めてみて欲しい。