ビジネスコラム
愛すべき後輩たちへ
2023年11月公開【全4回】
なりたい自分──その実現には本人の努力はもちろん、家族や職場の理解と協力が欠かせないということは参加者全員に共通する想いでした。最終回は、女性がもっと生き生きと働くための考え方や行動について、それぞれの経験にもとづく助言・金言が満載です。そして座談会の締めくくりには、愛すべき後輩に向けた先輩たちからの心のこもったメッセージをお届けします。
- 中村
- 私もみなさんがおっしゃるように、男性の管理職にはぜひとも女性の声に耳を傾けてほしいと思っています。以前こんなことがありました。ある女性社員が産休・育休から復職する際、彼女の直属の上司から「復職したばかりで大変だろうから、負担の軽い仕事を与えようと思うのだがどうだろう」とたずねられたんです。私は迷うことなく「それは絶対にダメです」と答えました。続けて「本人の希望を聞いてください」と。
- 太田社長
- その上司の方は、実際に耳を傾けてくださったのですか?
- 中村
- はい。すると案の定、彼女は「以前と同じ責任ある仕事をさせてください」と答えたそうです。もちろん、負担の軽い仕事に変えてもらってありがたいと思う女性もいるでしょう。大切なのは、本人の意思を確認することです。男性管理職の方には、ぜひとも気のつかいどころを間違えないようにしていただき、状況に応じた配慮をしていただけたらうれしく思います。
- 竹内
- 私も育休後にそれまでとはまったく違う部署に配属され、とても悔しい思いをしたことがあります。そこで私は「会社でキャリアをつくれないのなら自分でキャリアをつくろう」と、ドクターの資格を取って大学の教授になると決心をしたんです。ところが実際に博士号を取得すると、すぐに役職に就くことになり、その結果自分の裁量に任される仕事の幅が広がりました。すると、仕事の楽しさも倍増して現在に至るわけですが、やはり上に行けば行くほど見えてくる世界が広がり、面白さは増していきます。ですから女性の皆さんにもどんどんキャリアアップを目指してほしいと思います。
- 中村
- 女性の管理職が少しずつ増えているとはいえ、責任を与えられるのは怖いと感じている女性も少なくないようです。竹内さんをはじめ長く管理職を経験されているみなさんは、それについてどう思われますか?
- 竹内
- 役職が上がれば上がるほど部下も増えますので、仕事を分担し、全体を進めていくことができます。時間の融通にしてもそう。裁量の幅が広がることで仕事がやりやすくなるという面もあります。昇進や栄転は会社から期待されている証拠ですから、ぜひ思い切ってトライしてほしいですね。実際にやってみて、どうしても難しい局面を迎えたときには「申し訳ありません。やっぱり私には無理でした」と上司に本音を打ち明ければいいのではないでしょうか。自分らしい働き方を、もう一度そこから模索すればいいのです。
責任の重さに気後れしてしまうこともあるでしょうが、仕事の責任は個人で負うものではありません。組織が負うものなのです。ですから、一人ですべてを解決しようとするのはなく、組織の力で乗り越えればいいのです。
- 溝脇社長
- 私も社長に就任する際は重さや怖さを感じましたが、今は引き受けてよかったと思っています。このポジションに就いたからこそたくさんの出会いに恵まれ、今日もこうしてみなさんと貴重な時間を共有することができました。さまざまな人との出会いを通じて得られた学びは、私にとってかけがえのない財産になっています。
- 中村
- 未だに女性管理職の割合が少ないFA業界だけに、目の前のチャンスはものにしてほしいですよね。
- 太田社長
- 私は女性が少ない業界だからこそチャンスがあると思っています。女性ならではの感性で新しいことを始めたり、新しいものをつくり上げたり、あるいは大胆に変革したりといったイノベーティブな取り組みにおいては、少数派だからこそのプレゼンスを発揮できるのではないでしょうか。
- 溝脇社長
- ビジネスパートナーに名前と顔をすぐに覚えてもらえるというメリットもありますしね。
- 竹内
- つまり女性の少ないFA業界は、すでにそこで活躍している女性にとっては無限の可能性を秘めたフィールドといえるかもしれませんね。
- 中村
- 同感です。それでは最後に、みなさん一人ひとりから“愛すべき後輩たち”に向けてメッセージをお願いします。
- 溝脇社長
- 若い人にメッセージしたいのは、置かれた状況にかかわらず、まずは与えられた仕事に対して一生懸命に取り組んでほしいということ。私自身も7年前に社長を引き継いでからは、その先に何かがあると信じてガムシャラに走り続けています。歩みを止めなければ、必ず光明が見えるはずです。
- 太田社長
- 製造過程は一般の人の目に触れることがないため、ものづくりの世界においてFAは“縁の下の力持ち”かもしれません。でも、FAはあらゆるモノの生みの親。そこかしこに自分の仕事が息づいているかと思うとワクワクしてしまいます。その喜びと誇りを胸に、これからも頑張ってください!
- 竹内
- 1年後、3年後、できれば10年後の“なりたい自分”を想像して、その目標に向かって頑張ってほしいと思います。「10年後もこの仕事を続けていよう!」でもいいですし「35歳までに結婚する!」でも構いません。小さな目標でいいので、自分のなりたい姿を思い描いて目標を立て、それをクリアしていってほしいと思います。達成できなくても落ち込むことはありません。そのときは目標を変えればいいじゃないですか。みなさんの人生は、これから。人生は長いんですよ。
──4名の座談会を終えて最初に感じたこと。それは「今のFA業界の女性たちはとても恵まれている」ということです。法改正や世の中の風潮、ジェンダーへの意識の変化などにより、2~30年前に比べて格段に働きやすくなっていることは疑う余地がないでしょう。また、今回ご出席いただいた皆様には「女性だから」「男性だから」という意識よりも、1人の「人間として」仕事に真剣に取組み、挑戦し続ける姿勢を強く感じました。
若い世代の方々も「女性だから」「男性だから」という意識で生きている人は少なくなってきていると思います。これからは性別にかかわらず、1人の社会人としての資質が問われる時代です。女性は少数派だからと気後れすることなく、女性だからと甘えることなく、女性ならではの強みを生かしながら活躍の場を広げてほしいと切に願います。今回のご登場いただいた4名は、あなたのそばで愛情を注いでくれる先輩の代弁者です。そんな先輩や同僚、そして家族に感謝しつつ、さらなる飛躍を目指してください。
この記事は2023年8月の座談会より書き起こしたものです。