ビジネスコラム
第9回日本学生BtoB新聞広告大賞 受賞者インタビューものづくりの未来に馳せる、私たちの想いと願い。
2024年9月公開【全2回】
- 島村
- 今回の広告制作を通じて、あらためて感じた“ものづくりの難しさ”があればお聞かせいただけますか?
- 佐々木
- 目に止まるだけのポスターを作ればいいのならいくらでもやりようがあると思ったのですが、そこから“伝えたいことを伝える”ための仕組みづくりがとても難しいと感じました。今回の表現でいえば、最初に「恋の電流は止まらない!」で目をひいて、それに「でも…」を続けることで下の文章にも興味を持ってもらえたらいいなと考えました。
- 小松
- BtoB広告ですから、佐々木さんのいうように“ただ目立てばいい”というポスターではないのかなと。とくに三菱電機さんという大きな会社から発信する広告ですので、自分の表現したいものと表現すべきもののレベルを合わせなければいけないのかなと。ドミノやパソコンのモチーフもあえてカッチリとしたデザインにするなど、表現のバランスについては慎重に考えたつもりです。
- 島村
- お二人のおっしゃるとおり、ノーヒューズ遮断器の役割がしっかりと伝わる表現になっており、とても感銘を受けました。製品の意味や価値を理解したうえでビジュアルやコピーに落とし込めており、受賞にふさわしい作品だと思います。さて、今回の広告制作を通じて、ものづくりの楽しさや醍醐味をどのようなところに感じられましたか?
- 佐々木
- 私自身のブレーカに対する印象が変わったように、制作過程を通じてモノの見方や考え方が変わり、今までとは違う自分になっていることが魅力のひとつだと思います。また、今回のノーヒューズ遮断器のターゲットは、私とはまったく属性の異なる企業の方々です。そういった方々の立場で考えるきっかけをもらえたことも大きな学びになりました。
- 小松
- ゼロからイチを生み出す過程が、大変でもあり醍醐味なのかなと思います。私も今回の広告制作では思いつくキーワードをとにかくノートに書き出して、ビジュアルのイメージもあれこれ試行錯誤しながら進めたのですが、苦労したぶん仕上がった瞬間は感無量でした。手応えですか?「何か受賞できたらいいな」とは、密かに期待していました(笑)。
- 島村
- 小松さんは先生にも相談されたとのことですが、ほかに協力してくださった方はいたのでしょうか?
- 小松
- ベースの色を、最初は危険をイメージさせる黄色にしようかと思っていたんです。でも、やっぱり伝えたいのは「安全」だから緑がいいのかなとか、シンプルに白がいいかな──とか、いろいろ迷うことが多かったんですね。自分だけではなかなか答えが出ないことも多く、学校の先生や友人など身近な人によく相談していました。自分だけの考えに固執することなく、いろいろな人の意見を聞くことの大切さも学べたような気がします。
- 佐々木
- 私も小松さんのようにいろいろな人の意見やアドバイスを聞きたかったのですが、ちょうど制作期間が春休みと重なってしまい一人で黙々と作業することが多かったですね(笑)。行き詰まったときは、作業から離れて頭を空っぽにすることを心がけていました。時間を置いてから向き合うとそれまでとぜんぜん違うアイデアが浮かんできたりして、あらためてクールダウンの大切さを教えられました。
- 島村
- 広告制作というものづくりを通じて、多くのものを得られたかと思います。この貴重な経験を、社会人になってからどのように生かしていきたいですか?
- 小松
- まさに今お話ししたとおり、今回の広告制作を通じて、ものづくりにおいては周囲とのコミュニケーションが大切ということを学びました。それを常に頭の片隅に置きながら、グラフィックデザインの世界で活躍できたらうれしく思います。
- 佐々木
- 私はコピーライターとして広告制作に携わりたいと考えているので、今回の取り組みを通じて制作のプロセスなど具体的に学ぶことがたくさんありました。この経験が夢を叶えるためのパワーになると信じて、就職活動も頑張りたいと思います。
- 島村
- よりよいものづくりを実現するために、これからのFAに期待することがありましたらお聞かせください。
- 佐々木
- 後継者の不在によって失われてしまいそうな技術や、すでに失われてしまった技能がたくさんあると聞きます。そうした伝統的なものづくりを、未来につなげていく役割をFA機器が担ってくれたらいいなと思いました。たとえばこれまでは職人さんたちの勘で伝えられてきた技術を数値化できれば、その技術は失われずに済みますからね。
- 小松
- 手作業ではどうしてもミスが起きてしまったり時間がかかってしまったりするような工程を、早く、正確に、短時間でできてしまうことがFAの魅力だと思います。佐々木さんと同じく“FAだからこそいいものをつくることができる”という部分は多いと思いますので、より一層の進化に期待しています。
- 島村
- そのようにFAを進化させるために、三菱電機に期待することとは?
- 小松
- 私は個人的にも三菱電機さんの家電製品をたくさん利用しています。これからも素晴らしい品質の製品をたくさん世に送り出していただき、私たちの生活をもっと素敵にしていただきたいですね。
- 佐々木
- 技術的な部分に関しては日本でもトップのメーカーだと思っているので、これからはAIやロボット技術をもっと発展させていただき、人と機械がよりよく共生できるような社会づくりに貢献していただけたらなと思います。
- 島村
- それでは最後に、ものづくりの最前線で活躍する読者の方々へメッセージをお願いします。
- 佐々木
- 衣食住に限らず、私たちの生活はものづくりに支えられていると思っています。毎日の楽しみや喜びも「もの」から生まれることが少なくありません。そうした幸せをいただいていることに心から感謝しています!
- 小松
- ノーヒューズ遮断器は人目につくような製品ではないかもしれませんが、それを一生懸命つくってくれる人がいて、そういう人たちが私たちの生活を安全で豊かにしてくれているということを知りました。これからも無理をせず、ものづくりを楽しみながら頑張ってください!
三菱電機株式会社 FAシステム事業本部
FA本事業推進プロジェクトグループ
デジタルマーケティンググループ
島村美緒
取材を終えて
「暮らしの身近にあるのに意外と知られていない製品──それが、ノーヒューズ遮断器を課題に選んだ理由でした。こうして学生さんたちから素晴らしい作品をたくさんご応募いただいたことで関係者も喜んでおり、自分たちの仕事に改めて誇りを感じております。また、5月に開催された「JECA FAIR 2024~第72回電設工業展」では小松さん、佐々木さんをはじめ他の学生さんたちの応募作品全てを展示し、来場者の方々からも多くの反響をいただくことができました。どんなにいいものをつくっても、どんなに一生懸命つくっても、それが広く伝わらない製品は少なくありません。日本学生BtoB新聞広告大賞を通じて、ノーヒューズ遮断器はもちろん、FA業界やものづくりの現場で頑張る “人”にスポットが当たることを祈り、こうした活動を今後も継続していきたいと思います」
三菱電機株式会社
インダストリー・モビリティBA戦略室
FAデジタルマーケティングセンター
デジタルマーケティンググループ
島村美緒
三菱電機株式会社 福山製作所製品
営業部 企画課 製品プロモーション
(展示会等)取りまとめ
今村剛
三菱電機 福山製作所
製品プロモーション担当よりメッセージ
この度は、当社福山製作所が製造・販売する「ノーヒューズ遮断器(ブレーカ)」の宣伝広告を制作していただき、誠にありがとうございます。当製品を「第9回日本学生BtoB新聞広告大賞」のエントリー課題にするというお話があったとき、学生さんたちになじみのないBtoB製品を扱うのは難しいのではないかと心配しておりましたが、皆さんの作品を拝見した感想を一言で表すと「感銘」という言葉が適切であり、思わず笑顔がこぼれた瞬間を思い出します。
特にお二人の作品は着眼点が素晴らしく、ユーモアに富み、且つ、製品の特長・役割を端的に表していたため、関係者一同、大変感激いたしました。
お二人の作品を通じて、製品の伝え方にはさまざまな切り口があること、そして、柔軟な発想の大切さに気づかせていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。
また、5月に開催した「JECA FAIR 2024~第72回電設工業展」では、皆さんの作品を会場内に掲示し、新たなプロモーション活動として活用させていただきました。重ねて御礼申し上げます。
三菱電機株式会社 福山製作所製品
営業部 企画課 製品プロモーション
(展示会等)取りまとめ
今村剛
※この記事は2024年6月のインタビューより書き起こしたものです。