海外レポート

モッツァレラチーズからグリーンエネルギーまで
2023年4月公開
農業副産物を最大限に活用して廃棄物を減らし、サステナビリティ(持続可能性)を高めることは、企業にとって重要なメリットとなります。企業活動から生じる環境負荷を低減し、更に貴重な利益を手にする機会を最大限に引き出せるのです。イタリアの農場・ロアナが、家畜糞尿やその他の有機性廃棄物を利用してエネルギーを生成するバイオマスプラントに投資したのはその好例といえるでしょう。

自動化インフラを最適化するために、農場は嫌気性消化プロセスを監視し、生産性を最大化するための高度な制御ネットワークを必要としました。ギガビット帯域幅を提供するCCLink IE Fieldは、フレキシブルでオープンな産業用イーサネットソリューションによって、三菱電機FA機器に接続するのにベストなソリューションを提供しました。
イタリアのラティーナ州の田園地帯にあるロアナ畜産ファームは、約1100頭の水牛を飼育しています。毎日、3トン以上のミルクを生み出し、あの有名なモッツァレラチーズを生産しています。生産物とともに、牛たちは1日に約60m3の家畜糞尿を排出します。この家畜糞尿は、従来はロアナの農地の肥料として活用していましたが今ではバイオエネルギーの製造に活用されています。このファームは、畜産による副産物を最大限に利用して、エコに優しい生産活動を通した収益アップを目指していました。このグリーン発電所の建設プロジェクトには、地元の再生可能エネルギー分野の先端企業であるProgestAmbienteが参画しました。
ロアナの共同所有者であるカルメン・イエンマ氏は次のように説明しています。ProgestAmbienteによって提案されたプロジェクトは特に魅力的で、私たちの目指していた目的に合致し、かつ既存のオペレーションとインフラストラクチャに適合するソリューションを実現することができました。



ロアナのバイオマス発電所の構造
このプラントは、スクレーパーとパイプラインで構成されており、厩舎からの糞尿をすべて前処理タンクに集め、材料をならして均一化しています。このタンクは水中ミキサーを備えた嫌気性消化システムにつながっています。この段階では、水牛の胃にほぼ近い温度を保っていて、酸素を含まない環境下で異なる菌株がバイオマスを消化します。この生化学的プロセスを通して、細菌が複雑な有機物を分解して、メタンの豊富なバイオガスを生成することができるのです。

このプロセスで生成されたガスはドームに向かって上昇します。そして、ガス処理装置に送られ熱によってガスの精製が促進されることでメタン濃度を増加させます。これが最終的にガス発電機に送られて電力を供給、そして電力を送電網に戻すという仕組みをとっています。
温度、ガス圧、供給速度、消化槽内の混合といった重要なプロセスパラメータの制御は、生成されるメタンの量とその純度のいずれも最大化する上で重要な役割を果たします。システムの感度とその調整はとてもデリケートです。しかし、そこが利益をもたらすかどうかの分かれ目となるため、プロジェクトの成功には応答性にすぐれた自動化とネットワーク通信が不可欠でした。
高品質な自動化ソリューション
ProgestAmbienteのプロジェクトマネージャであるミケーレ・ディ・ステファノ氏は、次のように付け加えています。「ProgestAmbienteにとって非常に重要な活動の1つは、最先端のテクノロジーと高い信頼性、最高の機能を備えたプロセス機器とオペレータツールを提供することです。今回は三菱電機とCC-Link IEの組み合わせを選択しました。」
「当社のバイオガス生産と水処理プロジェクトは、三菱電機のオートメーション製品やオープンな産業用イーサネット技術であるCC-LinkIE製品を採用しています。こうしたソリューションが提供するパフォーマンスは、現在の市場では他に類を見ないものだと考えています。」
ロアナのバイオガス事業をサポートするために、CC-LinkIEフィールドギガビットイーサネットは、三菱電機の多数のオートメーション機器を接続し、高性能な通信を実現します。より正確にいえば、MAPS SCADAシステムがMELSEC QシリーズPLCにリンクされているのです。これに三菱電機の省エネタイプインバータ「FR-F 800」シリーズ5台を接続し、工程で使用する電気機器や部品の動作を制御します。そのおかげで、オペレータはプラント全体とそのプロセスをリアルタイムで包括的に見ることができるだけでなく、重要なパラメータを調整し、予知保全も実施できます。
三菱電機ヨーロッパのアルベルト・グリフィニ、プロダクトマネージャーは次のようにコメントしています。「当社の主な目標は、高機能でありながら使いやすく、さらにメンテナンスや拡張性にもすぐれたシステムを提供することでした。例えば、家畜排せつ物の処理量が増加するにつれて、より高度なオンボード機能を提供し、より広範なI/Oモジュールをサポートする新しいシーケンサMELSEC iQ-Rを導入することで、ロアナはシステムを簡単にアップグレードできます。ネットワークソリューションはすでに非常にフレキシブルで高度なものになっているため、将来必要になるインストールにも柔軟に対応できます。」
将来の運用に向けたゲートウェイとしての、ネットワーク速度とオープン性
アルベルト・グリフィニ氏のビジョンの実現に貢献したCC-Link IE Fieldの重要なポイントは、ネットワーク技術のギガビット帯域幅とそのオープン性にあります。ミケーレ・ディ・ステファノ氏は次のように説明しています。「CC-LinkIEフィールドのおかげで、ロアナは応答時間を高速化できたのはもちろんのこと、将来のニーズに対応するため、シンプルにカスタマイズやアップグレードができるインフラを持った高速システムを活用できるようになりました。」

「CC-Link IEのようなオープンネットワークは、強力なシステムを構築するために不可欠です」CLPA Europeのゼネラルマネージャー・ジョン・ブラウエット氏
CLPAのゼネラルマネージャであるジョン・ブラウエット氏は、次のように付け加えています。「ギガビットの帯域幅を提供することで、ロアナをはじめとするプラントの処理を支援し、これまで時間がかかっていたデータ共有の効率化を実現します。複数ベンダーの1Gビットデバイス間の相互接続をサポートしているため、CC-Link IE Fieldを使用するインテグレーターはより多くの選択肢をもつことができます」
カルメン・イエマ氏は「異常が検出された場合、迅速に介入してダウンタイムを短縮できるため、信頼性と応答性に優れた監視システムと高性能な通信を使用することは、ロアナにとって特に重要です。」と付け加えた。
優れた副産物シナジー戦略を設計・実施するメリット
バイオマス発電所とそのネットワークインフラが稼働している今、ロアナは一日あたり2,400kWhの電気エネルギーを生産可能です。ロアナの電力は国の電力網に供給され、月15,000ユーロの追加の売上をもたらしています。
カルメン・イエマ氏は次のようにコメントしています。「提供されたソリューションのおかげで再生可能エネルギーへの移行と副産物の相乗効果の最大化というメリットが明確になり、非常に満足しています。特にプラントを制御するために新たな技術を習得することなく、プラントの自動的な管理が可能になった点を高く評価しています。システムは直感的で使いやすく、オペレータは誰でも効果的にシステムを使用できるように設計されています」
ジョン・ブラウエット氏はこのように結論づけています。「製造工程から発生する環境負荷を軽減するのは世界的にみても非常に重要でありCLPAがサステナブルな事業活動に寄与できることは大変喜ばしいことと考えています。さらにロアナに使っていただくことで我々のオープンネットワークが広範な産業で活用可能なこともお分かり頂けると思います。」
この記事は、ヨーロッパのCC-Link協会(CLPA Europe)から提供されたものです。活動の詳細については、eu.cc-link.orgをご覧ください。