特集論文 三菱シーケンサ “MELSEC iQ-Rシリーズ” | The Art of Manufacturing | 三菱電機FA
Factory Automation

特集論文

三菱シーケンサ “MELSEC iQ-Rシリーズ”

2015年8月公開【全3回】
名古屋製作所 志水義信 甲斐啓文 矢木孝浩

要旨

 近年の製造業では、製品の高性能化に伴う生産設備の複雑化が進み、生産性の低下のほか、設備の導入・保守コストが増大している。さらに生産拠点の海外移転が進む中、顧客(SI(System Integrator)など)が作成した生産設備の制御プログラムの盗用問題が顕著化してきており、制御プログラムを保護するためのセキュリティ対策も重要になっている。これらの課題を解決するため、機能・性能の飛躍的向上や開発・保守工数の劇的な削減、セキュリティ強化を図る三菱シーケンサ“MELSEC iQ-Rシリーズ”を開発した。主な特長を次に示す。

(1) 生産性向上
 MELSEC iQ-Rシリーズ専用に開発したシステムバスによってユニット間データ転送性能を従来比約40倍の高速化を図った。また、シーケンス演算用LSIで実現したCPUユニットの演算処理性能向上によって命令処理時間をPC MIX値で従来比約7倍の高速化を図り生産性向上を実現する。

(2) メンテナンス性向上
 システムの稼働率向上のため、設備・機器の稼働状況や操作履歴・エラー履歴等のデータを収集し、予期せぬトラブルが発生した際の早期復旧に対応する様々なメンテナンス機能によって、ダウンタイムの短縮に貢献する。

(3) セキュリティ機能強化
 シーケンサに格納する制御プログラム等の技術(ノウハウ)を保護するためのセキュリティキー認証や、制御システムへの不正アクセスを防止するIP(Internet Protocol)フィルタなどのセキュリティ機能によって、設備の模造品の製造や制御プログラムの不正流用を防止する。

特集論文 三菱シーケンサ “MELSEC iQ-Rシリーズ”

MELSEC iQ-Rシリーズ
 新たに開発したMELSEC iQ-Rシリーズは、従来シリーズである“MELSEC-Qシリーズ”に対して、演算性能やシステムバス性能を向上し生産性向上を図っている。また、簡単メンテナンス機能によるダウンタイム短縮と保守コスト削減のほか、顧客の技術(ノウハウ)を保護する強力なセキュリティ機能を備えている。

1. まえがき

 近年の製造業では、製品の高性能化に伴う生産設備の複雑化が進み、設備の導入・保守コストが増大している。また、従来のタクトタイム向上や製品サイクル短縮化に伴う変種・変量生産への柔軟な対応が求められている。
 このような状況に対し、三菱電機では“e-F@ctory”を提唱し、機種間連携による制御の高速化と使い勝手の向上(横連携:“iQ Platform”)及び情報システムと生産現場の情報連携(縦連携)によって、TCO(Total Cost of Ownership)削減を実現してきた。更なるTCO削減を実現するために、iQ Platformの中核を担う当社シーケンサを更に進化させたMELSEC iQ-Rシリーズを開発した。
 MELSEC iQ-Rシリーズでは、セキュリティ機能の強化も図っており、本稿では、これらMELSEC iQ-Rシリーズの特長及び適用した技術について述べる。

参考文献

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