Factory Automation

特集論文

三菱シーケンサ MELSEC iQ-Rシリーズ
C言語コントローラ スタンダードモデル “R12CCPU-V”

2015年10月公開【全3回】
名古屋製作所 渡部裕史

要旨

 製造ラインでは、シーケンサだけではなく、パソコンやマイコンボード等が各種制御装置や情報処理に使用されており、採用機種/部品の生産中止・OSの改廃に伴う維持管理コストの増大などが課題となっている。
 C言語コントローラは、それらの課題を解消した、リアルタイムOS(Operating System)VxWorks(注1)上でC言語プログラミングによって各種処理を実現する製品である。しかしながら、現行のC言語コントローラでは高度なリアルタイム性や制御精度を必要とするマイコンボードの置き換えができないケースがある。また、市場ではコントローラの高性能化による生産性向上(タクトタイムの短縮等)のニーズが高まっている。
 今回、従来のシーケンサ“MELSEC Qシリーズ”から“MELSEQ iQ-Rシリーズ(注2)”へとプラットフォームを刷新し、C言語コントローラ“Q12DCCPU-V”の後継機種として、制御性能・機能の強化を図ったMELSEC iQ-RシリーズC言語コントローラスタンダードモデル“R12CCPU-V”の開発を行った。この製品は、従来のC言語コントローラの課題を解決するため、次の特長を備える。

(1) 演算性能・メインメモリ容量・システムバス性能・通信性能の向上
(2) リアルタイム性能の向上
(3) 制御精度の向上
(4) 信頼性・メンテナンス性の向上

 本稿では、今回開発したR12CCPU-Vについて述べる。

  • (注1) VxWorksは、Wind River Systems, Inc. の登録商標である。
  • (注2) 2014年6月に発売開始した三菱シーケンサの新シリーズである。新開発した高速バスシステムやエンジニアリングツールによって、製造業におけるTCO(Total Cost of Ownership)削減を実現する。
特集論文 三菱シーケンサ MELSEC iQ-RシリーズC言語コントローラ スタンダードモデル “R12CCPU-V”

MELSEC iQ-RシリーズC言語コントローラ スタンダードモデル“R12CCPU-V”の特長
 新たに開発したR12CCPU-Vでは、従来機種であるQ12DCCPU-Vに対して、演算性能、メインメモリ容量、システムバス性能、通信性能、リアルタイム性能、制御精度、信頼性、メンテナンス性を向上させた。また、従来機種と同様に、専用開発環境による開発効率化、MELSECシリーズの堅牢なハードウェア、MELSECシリーズの豊富な資産の活用といった特長を備えている。

1. まえがき

 パソコンやVME(Versa Module Eurocard)ボードに代表されるマイコンボードを使用している製造現場では、採用機種/部品の生産中止・OSの改廃に伴う維持管理コストの増大が課題となっており、今までに開発したC言語の資産を活用しつつ長期安定供給・高信頼な汎用コントローラに置き換えたいという要求が高まっている。このような要求に対し、三菱電機では米国ウインドリバーシステムズ社のリアルタイムOS VxWorksを標準搭載したC言語コントローラ“Q06CCPU-V”の2006年発売を皮切りに、表1に示すように、市場ニーズに応える形で性能・機能を強化した製品を順次リリースしてきた。
 マイコンボードの置き換えには制御性能の優れたQ12DCCPU-Vが、パソコンの置き換えには情報処理性能の優れたQ24DHCCPU-V/VG/LSが採用されてきた。しかしながら、制御用途では現行のC言語コントローラでは性能不足のために、高度なリアルタイム性や制御精度を必要とするマイコンボードの置き換えができないケースがある。また、市場からはコントローラの高性能化による生産性向上(タクトタイムの短縮等)のニーズが高まっている。
 これらの課題を解決するために、従来のMELSEC QシリーズからMELSEQ iQ-Rシリーズへとプラットフォームを刷新し、制御性能・機能の強化を図ったMELSEC iQ-RシリーズC言語コントローラスタンダードモデル“R12CCPU-V”の開発を行った。現行製品及び新規開発機種の位置付けを図1に示す。
 本稿では、新たに開発したC言語コントローラの特長と、現行製品における課題及び課題解決のためにC言語コントローラに搭載した技術・機能について述べる。

表1.C言語コントローラのラインアップ
表1.C言語コントローラのラインアップ

図1.各製品の位置付け
図1.各製品の位置付け

参考文献

一覧に戻る