Factory Automation

特集論文

三菱シーケンサ MELSEC iQ-Rシリーズ
C言語コントローラ スタンダードモデル “R12CCPU-V”

2015年10月公開【全3回】
名古屋製作所 渡部裕史

第3回 新C言語コントローラの技術と機能

4. 新C言語コントローラの技術と機能

 この章では、2章で述べた課題を解決するために、新たなC言語コントローラに搭載した技術と機能について述べる。以下Q12DCCPU-Vを“従来機種”、R12CCPU-Vを“新機種”という。

4. 1 演算性能・メインメモリ容量・システムバス性能・通信性能の向上

(1) 演算性能の向上
 MPUは高速な演算処理を可能とするため、ARM Cortex-A9(2コア)を採用した。動作周波数・コア数ともに従来機種の2倍となり、演算処理時間の大幅な短縮を実現した。

(2) メインメモリ容量の向上
 メインメモリには従来機種に比べてアクセス速度2.4倍、容量2倍のDDR3-SDRAMを採用し、プログラム及び大容量データの高速処理を可能にした。

(3) システムバス性能の向上
 MELSEC iQ-Rシリーズの特長である高速システムバスを搭載し、図4に示すようにMELSEC Qシリーズの従来機種と比較して、CPUユニット間のデータ更新周期を1/4に、各ユニットへのアクセス速度を約40倍に向上した。この高速システムバスによって、C言語コントローラとモーションCPUの連携速度が上がり、より精度の高い駆動制御が実現可能となった。また、各ユニットへのアクセスを高速化したことで、システム全体の処理時間を短縮し、タクトタイムの短縮を図っている。

(4) 通信性能の向上
 従来2ch搭載しているEthernetポートについては、従来機種では最大100Mbpsであった通信速度を最大1Gbpsに高速化した。通信速度向上によって、周辺装置から収集した大容量のデータを随時上位システムに送信してより高度な生産管理を行うことで、生産性・製造品質を向上させることが可能となる。

図4.システムバス性能向上のイメージ図
図4.システムバス性能向上のイメージ図

4. 2 リアルタイム性能の向上

 MELSEC iQ-Rシリーズでは、インテリジェント機能ユニットがイベントを検知した際に、インテリジェント機能ユニットからC言語コントローラユニットへ割り込み通知を行える機能を追加し、マイコンで一般的なイベントドリブン型のプログラミングに対応した。これによって、従来のポーリング方式で生じていたポーリング周期のジッタが削減されるため、高いリアルタイム性が要求される搬送制御等へのC言語コントローラ適用が可能となる。

4. 3 制御精度の向上

 OSは2コアのMPUに対応しており、タスク及び割り込みごとにどちらのコアで処理するか選択することができる。処理タイミングが重要な特定の処理を常時一方のコアに割り付けることから、安定した処理タイミングで実行することが可能となる。この仕組みによってI/O制御のジッタを少なくすることで、高い制御精度が要求されるプロセス制御等へのC言語コントローラの適用が可能となる。

4. 4 信頼性・メンテナンス性の向上

(1) ハードウェアECCの搭載
 メインメモリであるDDR3 SDRAM及びMPUや各ICの内蔵メモリにハードウェア ECC(Error Cheking and Correction:1ビットエラーの検出・自動訂正、2ビット以上のエラー検出)を搭載することで信頼性を向上させ、製造装置の動作異常によるダウンタイムを削減する。ハードウェアECCではECC符号の生成、照合処理を専用回路で実施することによって、アクセス性能を低下させることなく信頼性の向上を実現している。

(2) ドットマトリックスLEDによるエラー表示
 従来機種では顧客(ユーザープログラム)が任意に表示可能な2桁の7セグLEDを搭載していたが、新機種では縦7×横20のドットマトリックスLEDを搭載し表現力を向上させた(図5)。また、表示内容は、顧客(ユーザープログラム)による任意表示に加え、C言語コントローラで発生しているエラーコード表示を選択できる動作選択モード機能を搭載した。エラーコードの表示によって、診断ツールを接続せずにエラー要因を特定することができるため、装置のダウンタイムを短縮することが可能となる。

図5.LED表示機能の比較
図5.LED表示機能の比較

(3) バッテリー交換不要
 従来機種ではバックアップRAMにSRAM(Static Random Access Memory)を採用していたが、新機種では電源OFF時にバッテリーレスでデータ保持が可能なMRAM(Magnetoresistive RAM)を採用したため、従来機種では数年ごとに必要であったバッテリー交換が不要となり、バッテリー交換に伴うメンテナンスコストを削除できる。

5. むすび

 C言語コントローラの課題とMELSEC iQ-RシリーズC言語コントローラスタンダードモデル“R12CCPU-V”による対応について述べた。MELSEC iQ-Rシリーズに新C言語コントローラを製品ラインアップに追加したことによって、顧客は更なるタクトタイムの短縮・歩留まりの改善・稼働率の向上が図れるようになる。
 今後も顧客からのニーズを忠実に反映し、使い勝手と付加価値の向上を目指した製品開発を実施し、“進化と継承”というコンセプトに従ったコントローラを創りあげてゆく所存である。

製品紹介

MELSEC iQ-RシリーズC言語コントローラ スタンダードモデル“R12CCPU-V”

MELSEC iQ-RシリーズC言語コントローラ スタンダードモデル“R12CCPU-V”PCサイトへ

従来のマイコンボード、パソコンなどのC言語資産を流用でき、VxWorksを搭載したコントローラにより、リアルタイム性の高い装置を実現するCPU。

MELSEC iQ-Rシリーズ

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三菱電機が提案する次世代トータルソリューションの中核。
激しい市場競争に打ち勝つために、生産性が高く、製造品質の安定したオートメーションシステムを構築したい。このようなお客様の課題を、MELSEC iQ-Rシリーズは「TCO削減」「信頼性」「継承」の3つの視点から解決します。

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