Factory Automation

特集論文

多機能回生コンバータ “FR-XCシリーズ”

2019年1月公開【全3回】
名古屋製作所 平良哲 道祖尾竜太

第1回 製品の特長(上)

1. まえがき

 インバータでモータを駆動する際、減速時や昇降機の下降時で、モータが発電機となり回生エネルギーが発生する。このような場合に回生コンバータを適用することで、回生エネルギーの再利用によって大きな省エネルギー効果が得られ、またシステムの小型化が図れる。
 回生コンバータには用途・目的に応じて、複数の種類が存在する。当社では、これまで3種類の回生コンバータをラインアップしてきたが、これらの回生コンバータの機能を全て包含した多機能回生コンバータFR-XCシリーズを今回新たに開発した。
 通常、それぞれの回生コンバータは、その特徴に応じて内部ハードウェア回路構成や必要な付属品などが異なるため、単純に機能を包含するだけでは、コンバータサイズの大型化を招く。そこで今回FR-XCシリーズの開発では、様々な取組みによって、機能を包含しながらも小型化を実現し、さらに従来のPWM回生コンバータで改善が望まれていた省配線化も実現した。
 次に、この多機能回生コンバータFR-XCシリーズの特長と開発での取組みについて述べる。

2. 回生コンバータの種類と特長

 当社は、用途・目的に応じて従来3種類の回生コンバータをラインアップしていた。これらの種類と特長について述べる。

2.1 共通母線回生コンバータFR-CV

 電源相電圧の最も大きい/小さい相のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を120°間ONする120°通流制御方式のコンバータである。高調波抑制機能や力率改善機能はないものの、100%連続回生、及び150%−60sの短時間回生と大きな制動能力が得られ、コンバータ本体と前段のリアクトル1個で構成可能であり、低コスト・小型な回生コンバータである。また、後段に複数台のインバータを接続する共通母線接続が可能であり、力行/回生が混在するシステムでは、更に大きな省エネルギー効果が得られる(図1)。

図1.共通母線回生コンバータの内部回路と基本接続図
図1.共通母線回生コンバータの内部回路と基本接続図

2.2 回生専用コンバータFR-RC

 共通母線接続や高調波抑制機能には対応できないが、回生エネルギーだけが回生専用コンバータを通過する接続方式となっており、力行エネルギーに影響されず回生エネルギーだけでコンバータ容量の選定が可能である。例えば、機械ロスが大きいシステムで、力行エネルギーと比較して回生エネルギーが大幅に小さくなる場合があり、回生専用コンバータを適用することで、コストミニマムな電源回生システムが構成できる(図2)。

図2.回生専用コンバータの内部回路と基本接続図
図2.回生専用コンバータの内部回路と基本接続図

2.3 PWM回生コンバータFR-HC2

 100%連続回生、及び150%−60sの短時間回生と大きな制動能力が得られるほかに、大きな特長として高調波電流をほぼゼロにすることができ、特定需要家高調波抑制対策ガイドラインで換算係数K5=0を適用できる。さらに入力力率をほぼ1に制御できるため電源設備の小型化が可能である(図3)。
 一方、PWM回生コンバータ本体の他に2個のリアクトルと、フィルタ用コンデンサ等を搭載した機器の計3個の付属品を接続する必要があるため、据付け面積が大きい、配線工数が多いといった問題もあり、改善が望まれてきた。

図3.PWM回生コンバータFR-HC2接続による入力電流波形改善
図3.PWM回生コンバータFR-HC2接続による入力電流波形改善

3. 多機能回生コンバータFR-XCの特長

 今回開発した多機能回生コンバータFR-XCは、100%連続回生、150%−60sの短時間回生と大きな制動能力は当然ながら、従来の3種類の回生コンバータの機能を包含している。付属品(図4)を付け替えることでFR-CV、FR-RC、FR-HC2の3種類の回生コンバータの機能に対応する。さらに様々な取組みによって、付属品を含めた回生コンバータ機器の小型化・省配線化を実現した。
 今回、PWM回生コンバータ機能での小型化・省配線化、及び回生専用コンバータ機能での小型化の取組みについて述べる。

図4.FR-XC機能に応じて接続する付属品
図4.FR-XC機能に応じて接続する付属品

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