Factory Automation

特集論文

多機能回生コンバータ “FR-XCシリーズ”

2019年1月公開【全3回】
名古屋製作所 平良哲 道祖尾竜太

第2回 製品の特長(中)

4. PWM回生コンバータ機能での小型化・省配線化

 従来のPWM回生コンバータFR-HC2では、コンバータユニットの他に3個の付属品を接続する必要があり、据付け面積が大きい、配線工数が多いといった問題があり改善が望まれてきた。
 今回、FR-XCのPWM回生コンバータ機能では、これらの問題を次の二つの手法を用いて改善した。

  • (1) 新方式フィルタ回路の適用
  • (2) リアクトルの強制空冷によるフィルタ回路のワンパッケージ化

 これら二つの取組みの結果、FR-XCのPWM回生コンバータ機能では、従来機種FR-HC2に比べて据付け面積は58%、配線工数は52%と、従来機種で市場から要求されていた大幅な小型化・省配線化を達成した。

4. 1 新方式フィルタ回路の適用

 PWM回生コンバータは、高周波でスイッチングをするため、キャリア周波数に起因する高周波リプル電流が系統電源に流出しないよう、図5に示すようなローパスフィルタ回路(以下 “ フィルタ回路 ” という。)を接続する必要がある。このフィルタ回路の特に主動力電流が流れる2個のリアクトルの外形が大きく、PWM回生コンバータを適用する際の据付け面積増大を招いている。
 一般的にリアクトルを小型化するためには、キャリア周波数を高くし、L値を小さくすることが考えられるが、一方でIGBTのスイッチングロスが大きくなり、コンバータユニットが大型化してしまう。

図5.従来のフィルタ回路の構成
図5.従来のフィルタ回路の構成

 そこで今回、新方式のフィルタ回路を適用することで、キャリア周波数を高くすることなくL値を小さくすることに成功した。図6は、今回適用した新方式フィルタ回路の構成である。
 従来、L-C-L構成となっていたフィルタ回路に対して、Cと直列にリアクトルを追加することで、多段の高次フィルタ回路を構成し、キャリア周波数を高くすることなく、より大きな減衰特性を得ることができる。図7の従来フィルタ回路と新方式フィルタ回路の減衰特性の比較から分かるように、減衰特性を11.2dB改善できる。
 なお、主動力電流が流れる経路にあるL1及びL2に対して、今回追加したL3の経路は高周波リプル電流しか流れず、電流実効値としてはおおよそ1/10程度である。そのため、リアクトルの個数は増えているものの、L3が小型であるため、フィルタ回路としては小型化が可能となる。

図6.新方式フィルタ回路の構成
図6.新方式フィルタ回路の構成

図7.減衰特性の比較
図7.減衰特性の比較

4. 2 リアクトル強制空冷化によるワンパッケージ化

 4. 1節で述べたように、PWM回生コンバータには複数に分かれたフィルタ回路が必要であり、それらの結線作業が必要なため配線工数の増加を招いていた。
 そこで今回、前述した新方式フィルタ回路の適用のほかに、リアクトルを強制空冷方式として更に小型化した上で、従来分かれていた付属品を同一筐体(きょうたい)内に収納してワンパッケージ化(図8)した。

図8.PWM回生コンバータのフィルタ回路ワンパッケージ化
図8.PWM回生コンバータのフィルタ回路ワンパッケージ化

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